マガジンのカバー画像

読後寸評

94
読んだ本で感じたことを綴っています。 好きな作家はラディゲですが、最近よく読むのはジェンダー論。A4用紙1枚程度で、800〜1000字程の感想文です。
運営しているクリエイター

2024年3月の記事一覧

三島由紀夫が描いたスノビズムとデカダンスの長編「鏡子の家」

三島由紀夫が描いたスノビズムとデカダンスの長編「鏡子の家」

本(鏡子の家)(長文失礼します)

三島由紀夫の長編小説です。文庫本で620ページ程もあるので、なかなか読み進まず読了まで1カ月近くかかってしまいました。資産家の令嬢である鏡子の家に集まる4人の男性の変貌を描いたもので、物語は1954年から56年までの2年間がその舞台となります。

この作品の書評を読む限りでは、作品としては成功作といえず三島自身もそのことを気にしていたとのことですが、確かに私も読

もっとみる
時代を超えて読み継がれる太宰治の自伝的小説「人間失格」

時代を超えて読み継がれる太宰治の自伝的小説「人間失格」

本(人間失格)

太宰治の自伝的小説と言われ、太宰の代表作とも評される作品です。ある資料によれば新潮文庫の歴代ベストセラーを夏目漱石の「こころ」と競っているとのことですが、それほどまでに近代日本文学では多くの読者に読み継がれている名作です。

正直私は太宰の愛読者ではなく、本書を読むきっかけになったのは、三島由紀夫の同様な自伝的小説である「仮面の告白」との対比で「人間失格」が登場したことであり、い

もっとみる
恋愛とエゴイズムの葛藤を描いた文豪夏目漱石の名作「こころ」

恋愛とエゴイズムの葛藤を描いた文豪夏目漱石の名作「こころ」

本(こころ)

文豪夏目漱石の長編小説です。有名な小説であり、私も学生の頃、日本文学の教科書的意味合いで読んだと思いますが、恋愛とエゴイズムの葛藤といった漠然とした記憶しかありません。

今回再読しようと思ったのは、読書グループでの三島由紀夫の「仮面の告白」の感想文を読み、同様の自伝的作品に挙げられていたのが、太宰治の「人間失格」とこの本でした。「こころ」は正確には自伝的というよりは自己投入型の作

もっとみる
三島由紀夫が描いた衝撃の結末!小説「愛の渇き」

三島由紀夫が描いた衝撃の結末!小説「愛の渇き」

本(愛の渇き)(敬称略)

三島由紀夫の小説で、「文豪ナビ 三島由紀夫」で作家の小池真理子が、印象に残った作品として「金閣寺」や「春の雪」を始めとする「豊饒の海」の他に、「獣の戯れ」と共にこの小説を挙げていました。

「獣の戯れ」はフランスの作家ラディゲを意識した心理小説でしたが、この作品も主人公・悦子の心の葛藤を描いています。病死した夫の義父の計らいで、義父家族が住む別荘兼農園に移り住みますが、

もっとみる
不倫をテーマにした三島由紀夫の有名作品「美徳のよろめき」

不倫をテーマにした三島由紀夫の有名作品「美徳のよろめき」

本(美徳のよろめき)

1957年に「よろめき」という流行語まで生んだ三島由紀夫の小説です。有名な作品なので読まれた方も多いと思いますが、内容は上流社会で貞淑なはずの人妻の不倫をテーマにしたもので、そのスキャンダラスな内容で当時流行語にもなった次第だと思います。

不倫を扱った内容になると、もはや純文学よりも大衆文学の立ち位置になりそうですが、そこは三島らしい技巧が取り入れられて「不倫」というテー

もっとみる