倒れたりケガしたりしたとき、なぜ「大丈夫ですか?」と聞くのか?
むかしから謎だった。
おじいちゃんがふってきたときも、
「大丈夫ですか?」
「大丈夫ですか?」
の嵐。誰かが呼んでくれたのであろう、駅員さんまで、
「大丈夫ですか? 救急車を呼びますか?」
と言っていた。
以前から、違和感があった。
本当に痛いとき、飲みすぎて歩けなくなったとき、
「大丈夫じゃない。」
「だいじょばない。」
と、勝手な造語まで作って言っていた。
しかし、自分以外に、「大丈夫です」以外の答えを言う人を、見たことがない。本当に大丈夫じゃない人は、返答できないし。
なんか、けっこう大変でも、
「大丈夫です。」
と言ってはいないだろうか?
「迷惑かけちゃいけない」「自己責任」あたりが理由か?
だから、「大丈夫です。」と、どんなときも言っている気がする。
救急車に連れて行かれる人も、「大丈夫ですから」を繰り返しながら、乗せられているのを、何度か見た。
けっこう、大丈夫じゃなくても、
「う……うう。だ、大丈夫……です……。」
という人、多い気がする。
10年以上前、台湾の日本人学校から帰国した中1男子が、話の流れで、この「大丈夫ですか」について、持論を語っていたので、それを作文にしてもらった経験がある。
中1男子「ケガとかしたとき、日本では、みんな『大丈夫ですか?』って聞きますけど、あれ、ヘンですよね。全然、意味のない言葉ですよ。」
わたし「ほほう。おもしろい、なぜそう思うの?」
中1男子「だって、全然、具体的じゃないですよ? 緊急時なんだから、もっと具体的に聞かないと。」
わたし「へえー。じゃあ、なんて聞くの?」
中1男子は間髪入れずに答えた。
中1男子「聞こえますかー? 見えますかー? どこが痛いですかー? って。そうじゃないと、どこがどうなのか、わからないじゃないですか!」
わたし「おもしろい! それ、具体例入れて作文、書いてみよう!」
自分のもやもやが、晴れた気がした。
なぜ「大丈夫ですか?」に違和感があったのか。
それは、具体的じゃないからだ。
抽象的な言葉だから、多少どこかが痛くても、
「大丈夫です。」
と答えてしまう。
「聞こえますかー、見えますかー?」
と具体的に聞かれれば、
「聞こえるけど見えない」とか、「聞こえるし見えるけど、どうやっても自分で立てない」とか、具体的な返事が返せる。確かに、いい聞き方ね。
ついでに、辞書で調べてみた。
へ? なにこれ? 独特な表現をする新明解国語辞典だからか? 違う辞書で調べよう。
新明解は、「ますらお」を、今どきな感じに変換したのだろうか? 変換し過ぎじゃない? まいっか。
話を戻す。
「大丈夫」の、これじゃない方の意味が、今回のお題。【大丈夫】でふたつ、項目があるのだ。
ついでに、新明解も。
岩波国語辞典の「しっかりしていて、危なげがないこと」が、今回の話題の「大丈夫」に一番しっくりくるかな。
つまり、
「大丈夫ですか?」
は、
「しっかりしていて、危なげがないですか?」
という意味か。
ということは……。
相手に聞くことじゃなくて、自分が見て判断することのような気がするな。
もしかしら……。
そもそも「大丈夫ですか?」って聞き方、辞書を見ただけでなんだけど、日本語として、使い方が間違っているのかもしれない。
そのうち、調べてみよう。
ちなみに、中1男子の話を聞いてから、わたしもなるべく、「大丈夫ですか?」を使わないようにしている。だって、自分が聞かれて困る言葉を、人に使うのはイヤだから。