リンパ芽球性リンパ腫・白血病(髄注入院中の院内図書館でのできごと。)
遠い遠い異国の地でのできごと。これが事実かフィクションかは、読書の皆さんの判断に任せます。
私の場合は髄注は1泊ないし数泊は入院して行われたので、院内図書館でDVDを借りに行った時のお話。
髄注後は、髄液漏れからの頭痛や嘔気・嘔吐を予防するために1時間ほど仰向けで横になる。しかし、薬液の影響か、髄注後に2時間と長めに仰向けを続け、髄注前後も仰臥位でもガンガン飲水しても、頭痛がして、嘔吐はしない程度の嘔気があり、頭にモヤがかかったような表現に難しい、不快感が出てくる。これは、髄注当日だけではなく、しばらく続く。そして、あまり歩くと頭痛や嘔気が激しくなり、時には嘔吐するほど症状が強くなった。とはいえ、ある程度の院内歩行は可能な体調のことが私は多かった。
頭にバンダナというか、ターバン風の厚手のコットンヘッドカバーを巻いて歩いてフラッと、小児癌センター1階の図書館に入った。
そこは、本やDVDが安価で借りられる、こじんまりした温かい空間だった。
フラッと入った私は、透き通るように白く、マスクや服越しにも痩せていることが見受けられる体型だった。
頭を覆っている藍色のコットン生地は眉毛の下くらいまで深い巻き方をしていたが、どうしても、眉毛の形と目の位地により、目に入らないように巻いたヘッドカバーから垣間見える「眉毛の生え際」に毛がないことは見えてしまう。すると、すでに眉毛も一本ポなく禿げ上がっていることを隠しきれていない。
加えて、まつ毛もない。そして、産毛もないためか、抗がん剤治療によって肌に影響が出るのか、遠目からもがん患者っぽい風貌が鑑みられる。
足取りはゆっくりで、町中で見かける活発な同年代の女子と比べると脆さが垣間見える動き。
忍者のように静な動きは吹けば飛ぶようだが、図書館のDVDを物色し始めるとトロッと甘くも虚しい、無邪気な目はキリリとする。
一通りDVD裏のサマリー文を読み終えても、探していたものが見つからなかった。
すると、図書室の司書さんが声をかけてくれた。彼女は推奨体重上限くらいの血色が良くおおらかな雰囲気の笑顔で入口に面した木目がはっきりした机に座っている図書館司書司書さん。大きなトナカイが中心部に目立つ、温かい柄で太い毛糸を若干粗めの網目に編み込んだセーターを来ている。彼女は優しくて穏やかな声で「何を探しているの?」と尋ねてくれた。
私が「白血病の映画を探しています」と答えると、彼女はちょっと表情を曇らせて「あんまり良いものは置いてないのよね。こっちはいかが?」と「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」というDVDを差し出してくれた。ネタバレしないようにストーリーをとっても魅力的に表現した彼女の言葉に惹かれて、私はそのDVDを借りることにした。
心温まるこのDVDに、自分でも分からない感情が浄化されるようで、その上とっても心が温まった。
こういう、一瞬の出会いに救われることってあるよね。本当、天使のような温かい出会い。そして、この図書室の司書さんは一生忘れない恩人だ。
今を大切に生きよう!
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