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リーダーの可能性を拡げる「スピーチ力」の極意(Off the pitch talk 第37回〜第39回まとめ)

皆さん、こんにちは。神村です。
前回はオフシーズンのクラブ経営というテーマで、今まさにJクラブが来シーズンに向けて取り組んでいることやチャレンジングな組織づくりのためのポイントについて話をしました。今回は、リーダーにとっての「人前で話す、語るスキル」というテーマについて、過去の経験も踏まえながらお話していきます。
(本稿は「Off the pitch talk 」第37~39回の放送内容のまとめです。今回はインタビュー&文責:神田さん(@Twitter)でお届けします)

↓↓音声で聞けるstand.fmはこちらから↓↓

#37: https://stand.fm/episodes/60056c278ba7e1899c1d9708
#38: https://stand.fm/episodes/6007f54083a4827372526a6b
#39: https://stand.fm/episodes/600ab836b3516c54d048ef1a

スピーチの成否は”話し手”次第!?

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そもそも、私が何故このタイミングで「話す・語る力(スピーチ力)」をテーマにしようと思ったのか、その背景から話したいと思います。

皆さんは、人前で話したり、スピーチをすることに対して、抵抗感あるいは苦手意識みたいな感情はありますか?おそらく、多くの日本人が苦手意識を持っていると思います。特に年末年始は、年度総括や今年の抱負などが語られることの多い時期です。

はたして、経営者が社員に向けて発しているスピーチ・メッセージは社員にきちんと届いているでしょうか?
どうしたら、せっかくの「話す・語る」機会を最大活用できるのか?
そのためには、「話す・語る力」を鍛える意識を持ってもらいたいと思ったのが直接的なきっかけです。

私自身、長らく社長業をやってきた中で、人前で話す機会に恵まれてきましたが、昔はスピーチを中々聞いてもらえないことに結構悩んでいた時期がありました。例えば、社長をしていた当時、全社員に向けて話す社員総会で、私の話を、ぼんやり上の空でいる社員、居眠りしている社員がいました。(こちらが壇上で話す際、聞き手の様子がよく分かるんですよね…苦笑)
また投資家に対しての「事業計画・ビジョン説明」などの際、自分が喋っている内容が相手に伝わっている実感を持てないことが多々ありました。

当時は、「仕事なのに、たるんでるじゃないか!」、「社長の話なのに、なんで寝てるんだ!」という怒りに近い感情が生まれ、つい他人を叱責してしまいがちでした。ただ、ある時ふと「こちらのスピーチの内容が単純に面白くないから寝ちゃうのかな?」と、話す側にも原因があるのではないかと思ったのです
思えば、企業の理念やビジョン対して共感を生むスピーチができる経営者は実在します(Appleのスティーブ・ジョブズのスピーチは、とても上手いですよね)。また、アメリカと日本の政治家を比べると、演説の仕方がまるで違うのは興味深いですし、数々の歴史上の偉人たちにも代表されるように、素晴らしいスピーチは後世にまで残る例も少なくありません。

私の話力を鍛えた落語とESS

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皆さんの中には、スピーチ力というのは、話し手のキャラクターやパーソナリティに依存していて、口下手な人はスピーチに不向きだという潜在意識があるかもしれません。しかし、実は全くそうではなくて、誰でも鍛えることができるというのが私の見解です。

私はかねてより、趣味の一環で落語(講談)を習っています。落語との出会いは、ある時ふらっと偶然立ち寄った寄席の場でした。
ここで3つのことに気づきハッとさせられたのです。
①持ち時間厳守
   ・一方社員総会などでの偉い人の話は、ダラダラと時間オーバーする
  ケースが多くないですか?(笑)
②同じ話を同じテンションで話せる
 ・人は同じ話を何度もするのに飽きてきます。気分が乗ったり乗らなかっ
  たりすることもあります。噺家さんにはそれがない。(あったとしても
  外にはわからない)
③同じ話を何度聞いても飽きない
 ・古典落語は話の筋が決まっています。それでも笑えますし、
  聞きたいと思います。一方で、会社の上長の同じ話を何度も聞きたいと
  思うことってありますか?(苦笑)

話す力を鍛えれば、きちんと聞いてくれるようになるはずだ。落語の寄席に入って、そんな予想外の気づきがあったのです。すぐさま、アマチュアの人向けに教えている先生に弟子入りしました。
年に2回ほど「一門会」として高座に上がっています。

一門会での私の持ち時間は1回15分くらいです。
話は先生の芸を録音し、台本をいただきます。
そこから先はひたすら練習(お稽古)しかありません。
セリフはもちろんですが、手の所作から扇子の使い方に至るまで、何度も練習しなければなりません
。ここまでやって、初めてお客さんから拍手をもらえるのです。

会社のスピーチで、そこまで本気で練習を繰り返す経営者がどれだけいるでしょうか。練習もしないで人前で話すのですから、寝る社員が出てもそれは仕方がないのではないでしょうか。(自戒を込めての問いです)

講談のほかにもう一つ活きているのが、大学時代に所属していたESS(English Speaking Society)での経験です。当時、私はスピーチが得意ではありませんでした。(むしろかなり苦手でした…笑)
自分で書いた英語スピーチ原稿を何度も添削してもらったり、喋り方を直されたりしました。
・暗記 
・抑揚・リズム・間
・ボディランゲージ・アイコンタクト
の順で何度も繰り返したことを覚えています。
あの時は、まさか今の仕事に活かせるスキルを磨いていたなんて思いませんでしたが、若い頃の苦労に無駄はないと、つくづく実感します。 

「スピーチ力」を上げる4要素

では、聞き手の心を動かす(きちんと聞いてもらえる)スピーチをつくるには、具体的にどのようなことを意識すればよいのでしょうか。
私が大事にしている「スピーチ力向上のポイント」は:

・起承転結
・オリジナリティ
・明快さ
・キーフレーズ

の4点です。それぞれについて説明していきます。

大抵の場合、スピーチには制限時間があります。その中で、何を話し、何を伝えたいかのポイントを決めた上で、起承転結をはっきりさせ、全体構成を固めることがとても重要です。

話す内容が全く同じでも、話し手によって相手への伝わり方は異なります。オリジナリティを出し、差別化できるかがポイントです。受け手に「あぁ、そういうことか!」と思ってもらえる(=気付きを生む)場面を、意図的に作り出すことを意識してみてください。喩の上手い使い方を考えるのも有効です。

ただし、オリジナリティや喩話を入れ過ぎても、全体構成が支離滅裂になって分かり辛くなってしまうこともあります。伝えたいポイントは明快に、あえて余談や補足説明の部分はそぎ落とすことも必要です。話が終わった時に「何の話だったか」の要点を一言で表せるような構成がベストです。

そして最後がキーフレーズです。著名なスピーチを聞いていると、必ずと言っていいほど名言がありますよね(例:キング牧師の”I have a dream”)。相手の記憶に残りやすくするという意味でも、キーフレーズを入れるのは有効な手段です。

これら全てを意識してスピーチを作ると、相当時間がかかります。ですが、スピーチを作るの時間をかけた分だけ、相手に伝わりやすくなるのです。相手に聞いてもらえるスピーチをすることが、ある意味で話し手の責任だとも思います。

Jリーグではのホーム最終戦の後、スタジアムにて1年のお礼を込めて「社長スピーチ」が行われるのが恒例です。
どこのクラブの社長のスピーチもほぼ同じ内容でしたが、受けた印象はまるで違いがありました。
・言葉に魂が込もっている話
・心の底からの感謝だったり、悔しさだったりの感情表現
・言葉の選び方、間の取り方、声の大きさ などなど

最近いろんな場面で使われている「コロナ禍の厳しい状況の中で、日夜奮闘している医療従事者の方々に心から感謝し・・・・」という言葉一つをとっても、とりあえず枕詞のようにそれを使っている人と、心の底からそれを感じている人の違いはすぐに分かります。

リーダーの方は言葉の力の重要性を認識すべきだと思うのです。

スピーチも”守・破・離”が基本

ありがたいことに、今や個人で「話す・語る力」を学ぼうと思えば、本やYouTubeなどの教材がいくらでもある時代です。私は若い頃CDを使ったりしていました。
どんな教材でも良いので、まずは自分にとって分かりやすい教材を選び、勉強してみることをお勧めします。次に、スピーチが上手い人(例:アメリカのケネディ元大統領)のスピーチを真似てみてください(”守”)。スピーチには、①言葉を暗記する、②暗記した言葉をきちんと話す、という2段階があります。これが出来るようになったら、徐々にアイコンタクトやボディランゲージをつけてみてください(”破”)。そして最後に、自分なりの「型」を確立していきましょう(”離”)。

スピーチ力は、一朝一夕に習得できるものではないので、地道に練習を積みかさねることが何よりも大切です。皆さんも、以上の「守・破・離」の大原則を意識しながら、着実にスキルを向上させていってください。

(補足)「スピーチ力」に関するオススメ教材

①:『経営者が語るべき「言霊」とは何か』 田坂広志(著)

②:『Great Speeches of the 20th Century』

③:『英国王のスピーチ』 (2010年製作/118分)

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