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《特許の簡単な見方》

前回のnoteで、次は「ベンチャー企業による特許取得までの道のりとリアルなお金の話」という題目で書きますと言ってたのですが、その記事を書いてから時間が経って、改めて考えると何だかちょっとしっくり来ないと思い、若干題目を変えました。

今回は、私たちの会社でも他企業とのオープンイノベーション案件や投資や融資の際に、言葉を尽くしてもなかなか理解してもらうのが難しい『特許の見方』について書いてみました。
そもそも、短く分かりやすく表現することが善とされる現代で、長々とよく分からない専門用語と士業独特の書かれ方をした文章を見ると拒否反応が起こってくるし、難しいことがより難しく感じられるのも仕方がないかなと思います。

これから書く一連の特許の見方であれば、誰でも素早く簡単に把握したい特許内容が捉えられるようになると思います。
元々ITのバックグラウンドなしの私でも特許取得や他社の特許を把握する際の見方や意思決定として使っている方法なので、絶対誰でも習得できます。

また、どうしても詳細に把握したい場合は、専門の調査会社を活用するという意思決定をお勧めします(←ここで、専門の調査会社を使わずひたすら対象の企業に特許内容に関するヒアリングを延々と重ねるというのは、時間がもったいないのでお勧めしませんし、特許の請求項や明細で記載されている以上の詳細を教えるということは相手に手の内を共有することを強いることで、嫌悪される行為なので独自に調査を進めることがスマートだと思います)。

なので、今回の記事の目的は『特許の内容を素早く捉えて次のアクションに繋げるための意思決定を行うための参考にしていただく』ことにフォーカスを当てます。深かぼった話は以下ではしていません。もし疑問に思ったことやもっと突っ込んだことを知りたい、質問をしたいという方はコメントいただけますと幸いです◎


はじめに

特許庁で主に管理される知的財産権は大きく分けると3種類あり、今回の記事で書いている「特許権」に加えて「意匠権」「商標権」があります。

これから書く特許権は、発明と呼ばれる比較的程度の高い新しい技術的アイデア(発明)を保護する権利で、「物」の発明「方法」の発明及び「物の生産方法」の発明の3つのタイプがあります。

《簡単捉えポイント①》
特許権は技術/テクノロジーがベースとなる知的財産権です!
※ビジネスモデル特許と俗に言われる言葉を時々耳にしますが、これは新しい技術を踏まえた上での使い方を示すものなので、ビジネスモデル単体では出願すらできません。


特許の簡単な見方

特許庁が提供する特許情報プラットフォームにて、取得されたすべての知的財産は誰でも閲覧することが可能ですが、そこで掲載されている請求項や明細を見てもあまりピンと来ないという印象を各方面の方々から感じるので、一番シンプルな見方を以下で説明します。

《簡単捉えポイント②》
請求項の構成は以下のように整理できます。
(ISSUE):発見した新技術が解決する課題
(WHAT):新しい技術の適用範囲
(HOW):発見した新技術


特許の請求項は事業計画でも中核になる、誰のどんな課題をどんな風に解決する発明かを説明するものだと捉えてください。

但し、そこに記載されている〇〇業界や〇〇という対象が記載されていたとしても活用範囲はそこだけの限りではありません。
例えば、そこに記載されている業界外の業界に同様の技術を転用するような出願内容を書いても通らないです。

(ISSUE)(WHAT)(HOW)の中で、(HOW)が特許を取得する上で一番重要な考え方の要素になります。
また、革新的な(HOW)であれば適用できる範囲が必然的に広くなり、それに比例して(WHAT)の範囲も広くなると考えられます。
逆に新規性の低い(HOW)であれば、適用範囲や使っているベースの技術を限定する形で出願内容を詰めて、やっと取得に進めることができます。

ここで、特許を見る時に注視しておいてもらいたいのが、具体的に書かれている特許よりも抽象的に書かれた内容で取得されている特許のほうが強力だということ。特許も取得されていれば全て良いというとそうではなく、難易度の高く広範囲に適用可能な内容で取得されている特許化かというのが重要です。

《簡単捉えポイント③》
(WHAT)が抽象的に書かれた請求項で取得できているほど、その特許の(HOW)=技術/テクノロジーの適用範囲は広く、強い特許と判断することができる。


強い特許の使い方

ベンチャー及び中小企業を含むすべての企業の価値を判断する際に必要な材料の一つとして、貸借対照表(BS)が挙げられますが、このBSの資産の分類に不動産等と同様に本来、知的財産は含まれます。

しかし日本ではあまり知的財産を重要な要素として鑑定されない傾向にあったのか、鑑定できる人がいなかったのか、もしくは取得した知的財産がお金を生む商材として企業で扱われてこなかったのかは定かではないですが前回のnoteでも触れていますが、重要な資産として評価されてこなかった傾向がありそうです。

(※但し日本でも製薬等、分野によっては知財の扱い方に幅がかなりありそうなので、ここではソフトウェア分野を前提に語ります)


その特許は強いか?

まず、企業価値の目線で強い特許か、弱い特許かを見るポイントを簡単に整理すると2点です。

《簡単捉えポイント④》
【強い特許か判断】
●競合からの参入障壁を高くできる内容になっているか
●特許を基に営業や交渉が行える内容になっているか

企業を評価する立場にいる方で、判断できかねると思われる場合は、国内にも少数ですが特許の調査を専門にしている民間企業もあります。また、知財に強い弁護士事務所でも調査対応を受け付ける場合もあるかと思います。
但し、弁理士業務のみ専門にしている事務所では調査関係は対応していない場合が多いです。(※調査のみお願いしたい場合は、やはり上記でいう調査会社が確実に対応してくれます)

《簡単捉えポイント⑤》
特許の調査費用は、競合や類似の特許内容やサービスを調べるといった内容であれば3週間〜1ヶ月で仕上げてもらって50〜100万円程(国内メイン)
※内容やボリュームで変動します


強い特許の使い方はズバリ!toB営業

実際に弊社の場合は、スモールビジネスオーナー向け以外にもエンタープライズプランとして、特許内容を基とするベースシステムを大手企業等のクライアントの要望を取り入れたカスタムサービスとして構築するという案件を獲得しています。
ここは新規事業としての案件も多々ありますが、ベースシステムの使途がすでに決まっている場合は、よりスピーディーにカスタムすることが可能です。
また、自社の技術力や特許に本当に自信がある場合のみ、類似サービスへ補強サービスとしての導入を打診するなど営業を持ちかける場合もあるかと思います。


知的財産周りの時事ネタ(コロナ以前)

また、前回のnoteで以下のように綴ったのですが、「国際競争」といった点の一事例としてアメリカと中国のケースについて詳しく書かれた記事をご紹介します。この事例を読んでいただくことによって、より知財に対して重要性を感じることができるのではないかと思います。

(前回のnote)
現在、経済・経営環境は極めて厳しく、グローバルな企業の国際競争が繰り広げられています。さらに、技術革新のスピード化・業際化の進展等により、企業の規模の大小を問わず、各企業は自社開発、自社技術だけでは経営計画を十分達成できない場合が多くなっている。
このような状況下において、自社開発、自社技術を補完するための技術導入(ライセンスイン)、および他社支援、経営戦略のための技術供与(ライセンスアウト)の必要性が生じており、現在は技術移転の必要性が高まっている状況と言えると思います。

知財をめぐって起こった事件としてアメリカと中国のケースを切り取った際に、アメリカ政府がファーウェイに対して組織全体で知財の窃盗に取り組んだとして、通例ではマフィアやギャングなど組織犯罪を取り締まるRICO法を適用したという衝撃的なニュースです。

(英語)

(日本語)



《特許の簡単な見方おさらい》

《簡単捉えポイント①》
特許権は技術/テクノロジーがベースとなる知的財産権です!
※ビジネスモデル特許と俗に言われる言葉を時々耳にしますが、これは新しい技術を踏まえた上での使い方を示すものなので、ビジネスモデル単体では出願すらできません。
《簡単捉えポイント②》
請求項の構成は以下のように整理できます。
(ISSUE):発見した新技術が解決する課題
(WHAT):新しい技術の適用範囲
(HOW):発見した新技術
《簡単捉えポイント③》
(WHAT)が抽象的に書かれた請求項で取得できているほど、その特許の(HOW)=技術/テクノロジーの適用範囲は広く、強い特許と判断することができる。
《簡単捉えポイント④》
【強い特許か判断】
●競合からの参入障壁を高くできる内容になっているか
●特許を基に営業や交渉が行える内容になっているか
《簡単捉えポイント⑤》
特許の調査費用は、競合や類似の特許内容やサービスを調べるといった要件であれば3週間〜1ヶ月で仕上げてもらって50〜100万円程(国内メイン)
※内容やボリュームで変動します

《規模の違う者同士でのオープンイノベーションや多様なコラボレーション時代の展望》

ITの普及により法人、個人の規模や影響力の境がなくなりつつある現代で、『付加価値の高いオープンイノベーションやコラボレーションをスムーズに実現できるか』は、一つのキーになると考えています。

その中で、より爆発的に価値の最大化を行うためにはマインドセットとして、『ゼロ・サム(一方が勝てば必ず他方が負ける関係)』の状態から、双方が勝つ『Win-Win』の状態へ移行することが必要だと感じます。
これはいわゆるコンフリクト・マネジメントという類のものですが、日本では人事関係などで活用されているアプローチだそうです。

パワーバランスの偏りによってものごとが決められる世界観は、なんだか五輪の元会長の失言くらいホモソーシャルな感性に満ちているような気がしてなりません。


今後『Win-Win』の状態へ移行するにあたって、相手と争うのではなく、対立を安易に避けるものでもなく、「協調」のアプローチを持って問題解決に向き合うビジネスシーンがより健全で強固なイノベーションやコラボレーションを生む必要条件になるのではないかと思います。



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