これこそが華夏の九州だ!
中国に行った経験がある人の中には、「九州」という中国語を街中で目にしたことがある人もいるのではないでしょうか?
「九州(jiu zhou)」とは、中国語の辞書にも掲載されている中国語の単語の一つです。
今回は、この「九州」という中国語について紹介をしたいと思います。
◉C C T V「典籍里的中国」
旧正月にあたる2月12日、中国の中央電視台が「典籍里的中国(典籍の中の中国)」という番組を放送していました。
「典籍」とは、古代の書物のことを指しますが、中国に残る典籍を紹介し、そこから中国の文化がどのように形成されてきたのかを紹介する番組です。
初回の放送のテーマは、「尚書」。
「尚書」は、儒教の重要な経典である五経の一つ「書経」の古い呼び名です。
「書経」には、堯や舜から夏・殷・周王朝までの歴史がおさめられており、孔子の編纂によると言われています。
ただ、この尚書は、秦の始皇帝が行った焚書坑儒の際に、そのほとんどが焼き払われてしまっています。
その内、秦の博士であった伏生は、難を逃れようと尚書を自宅の壁に埋め込みました。
その後、秦崩壊の戦乱をくぐり抜け、漢代の平和な時代になって掘り起こしてみると、既に数十篇は失われ、28篇を残すのみだったと言います。
そして漢の時代になり、文帝は90歳になった伏生の元に晁錯を遣わし、尚書を学ばせました。
これが、「今文尚書」として今に伝わっているもので、これにより失われかけた中華の歴史が受け継がれることになったのです。
今回の番組では、中央電視台のナレーター撒貝寧が、時空を超えて伏生の元を訪れ、尚書についての教えを乞うという演劇を、専門家や観客が一緒に鑑賞するというスタイルで進みます。
◉禹、九州を治める
さて、この伏生が語る「尚書」の中でも、特にスポットをあてて紹介していたのが、夏王朝を打ち立てた禹の話です。
禹は、黄河の治水事業に13年取り組み、見事これを成功させ、舜帝から帝位を譲り受ける形で夏王朝を開いたとされています。
その時、禹は国を九つの州に分け、各地の状況に応じて貢物の品を定めました。
「尚書」の「禹貢」には、その地理についての記載が残っています。
夏王朝というと、4000年くらい前の話であり、ほとんど伝説のような王朝なのですが、その時から、広大な中国は一つの国としてまとまっていたわけです。
そう「これこそが華夏の九州だ!中国は、古くから一つだったのだー!」と番組は続きます。
この中身について云々するような知識を、私は全く持ち合わせていないのですが、気になったのが、テレビで「九州!九州!」と連呼していたことです。
「九州」という言葉は、その後、禹の業績と共に、世界(中華・中国)を表す言葉になりました。
州の数は、その後の時代でそれぞれ変遷を繰り返しますが、「九州を治める」とは「世の中を治める」という意味で使われ続けてきたのです。
◉これこそが、日本の九州だ!
すると、福岡出身者としては気になるのは、日本の「九州」です。
尚書は、古代の日本にも伝わり、学ばれていました。
当然、「九州」という言葉も、その意味も理解していたはずです。
それに対して、日本の「九州」。
かつて九州には、筑前国、筑後国など九つの国があり、その総称として「九州」と言われている…、と聞いて育ってきました。
でも、よく考えると、「四国」は「国」なのに、「九州」は「州」と当てているところ、少し不思議です。
もしかしたら、我らが九州も、どこかの時代のどこかの誰かが「九州」と呼び出した時に、ちょっとでも尚書に残る禹の九州を意識していたのかもしれない…と空想してみるのも楽しいものです。
ただ一方で、「九州」という言葉が、夏王朝から続く4000年の歴史の中で、ずっと使われ続けてきた単語の一つである、というのも面白い事実です。
「私のところに観光に来てください!」とそれぞれの観光地は呼びかけますが、よく知らない地名を覚えてもらうのはなかなか苦労するものです。
その点、「九州」という言葉は、その最初のハードルを超えています。
「九州に来てください!」というと、日本に詳しくない中国人は「えっ!?」となるかもしれません。
禹が統治した九州の地図が浮かんでいる…、なんて人もいるのかもしれないです。
そこで、「いや、実は、日本にも九州という場所がありましてね…」とつなげていくと、相手にとっては「へぇー」となりますし、何より「日本に九州という場所がある」という豆知識は比較的簡単に相手の脳に刻み込まれるはずです。
『これこそが日本の九州だ!』
と、日本人にとってはなんの変哲もない言葉ですが、「尚書」の話を踏まえて中国でP Rしたら、意外と注目を集めるきっかけになるかもしれませんね。
《 ライチ局長の勝手にチャイナ!vol.7 》
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