【あらすじ】映画『四畳半タイムマシンブルース』超面白い!森見登美彦も上田誠も超天才だな!
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ヨーロッパ企画と森見登美彦がコラボしたアニメ映画『四畳半タイムマシンブルース』は、ひっくり返るほど面白い天才的な作品だった!
ミニマムな設定なのに、信じがたいほど面白いアニメ映画
とんでもなく面白い作品でした! いやー、ホントこれはビックリしたなぁ。
とにかく、映画を観ながらずっと、「ストーリーとキャラクターを突き詰めれば、物語はここまで面白く出来るのか!」という衝撃を感じていました。物語の舞台は、「下鴨幽水荘」というボロボロの下宿。知っている人は知っているでしょうが、「京都大学吉田寮」がモデルになっています(エンドロールに「取材協力」として吉田寮の名前が出てきたのでそう判断しました)。そして、物語の9割近くが、この下宿の中で展開されるのです。他の舞台は、近くにある「オアシス」という銭湯や、近所で開かれていた「下鴨納涼古本まつり」ぐらい。時間的にも、ほぼ「たった2日間」を描く物語であり、とにかく物語が展開される世界は非常にミニマムと言えます。
それもそのはず、元々この物語は、劇団・ヨーロッパ企画の『サマータイムマシン・ブルース』という舞台が元になっているのです。その物語を、森見登美彦の『四畳半神話大系』の世界観の中で展開している作品となります。元々演劇だったと言われれば、この舞台設定のミニマムさは納得しやすいでしょう。
さて、ミニマムなのは決して舞台設定だけではありません。ストーリーの核もまた、これでもかというほどミニマムでした。なんと主人公たちは、「うっかり壊してしまった『冷房のリモコン』をどうにか復活させる」という、クソどうでもいいミッションに奮闘することになるのです。この物語、タイトルにある通り「タイムマシン」が登場するわけですが、「タイムマシンが出てくるにしてはあまりにも野望が小さすぎやしないか」と感じてしまうでしょう。
そんなわけで、とにかく設定のあまりのミニマムさにまずは驚かされてしまうはずです。そしてさらに、内容があまりにも面白くて驚かされることになるでしょう。
ほぼ下宿内で展開される「『冷房のリモコン』を巡る物語」には、これでもかというほどの展開が詰め込まれていきます。観ながらずっと、「それは上手い!」「なるほど、そういうことだったのか!」「うわっ、それも関係してるんだ!」と、様々な種類の驚きが次から次へとやってきました。特に、物語の根幹を成す「冷房のリモコン」の顛末には唖然とさせられたし、爆笑必至と言ったところでしょう。
さらにその上で、とにかくキャラクターがとても素敵です。キャラクターに関して言えば、『四畳半神話大系』の作者である森見登美彦の功績と言っていいでしょう。
森見登美彦の小説には、「キャラクター」と呼ぶ以外にはない、かなり非現実的な登場人物がたくさん出てきます。しかし、森見登美彦が生み出す世界観の中では、そのような「非現実的なキャラクター」の方がむしろ自然に感じられると言えるでしょう。普通の世界では違和感しか与えないだろうキャラクターなのですが、森見登美彦はとにかく奇妙奇天烈な世界を描き出すので、そのような世界では、普通にはあり得ない人物たちが生き生きと躍動するというわけです。
その中でも特に、「小津」と「樋口師匠」のキャラクターは抜群の存在感を放っていると言えます。この2人は、絵柄の感じからしてそもそも「普通の人間」っぽくありません。さらにその立ち居振る舞いすべてが「普通の人間」から外れているのですが、何故か、「彼らの存在は最適解である」と感じさせられてしまうのです。実に不思議な感覚でした。
そんなわけで、規格外にミニマムなアニメ映画『四畳半タイムマシンブルース』が、そのキャラクターも含めてこれほど面白いという事実にとにかく驚かされました。メチャクチャ面白かったです。
映画の内容紹介
大学3回生である主人公の「私」は、銭湯から戻るや奇妙な状況に直面した。「下鴨幽水荘」の面々から、何故か「裸踊り」をするよう要求されたのだ。意味が分からない。しかし彼らは、「お前は当然裸踊りをすべきである」という雰囲気で待ち構えている。何が起こっているのだろうか?
そんな周囲からの謎の期待に抵抗すべく押し問答を繰り広げていると、思いがけない悲劇に見舞われた。ペットボトルが倒れ、溢れたコーラが冷房のリモコンにかかってしまったのだ。これにより、リモコンは故障した。
下鴨幽水荘に冷房は1台しか存在しない。それが、「私」が住む209号室に設置されているというわけだ。かつての住人が大家に無断で設置したと思われる代物であり、もう相当ガタが来ている。しかし、かつて沼地だったというこのアパートにおける、タクラマカン砂漠並みの地獄の暑さを乗り切るには、必要不可欠と言えるアイテムであった。
そんな必需品たる冷房が、リモコンの故障により使えなくなってしまったのだ。何故か本体にはスイッチ類が一切存在せず、リモコンがなければ無用の長物でしかない。
これでこの夏は終わったも同然だ。今年こそは有意義な夏にせんと、起死回生の「何か」(特に決まってはいない)をするつもりでいたのだが、リモコンの故障によりその意気も奪われてしまった。まったく、何のやる気も出やしない。
さて、リモコンの話はこれぐらいにして、明石さんのことを紹介しよう。下鴨幽水荘によく足を運ぶ、1つ年下の女の子だ。映画サークル「みそぎ」に所属し、自ら書いた珍妙な脚本でシュールな映像を撮ることで知られる存在だが、他の人が1本撮る間に3本の映画を完成させてしまうそのスピードには定評がある。
そんな明石さんが下鴨幽水荘にやってくるのは、彼女が、この下宿の「主」とでも呼ぶべき「樋口師匠」の“弟子”を自認しているからだ。樋口氏が何の「師匠」であるのかはもはや誰も知らない。ともかく明石さんは、「私」の隣人であり悪友でもある小津と同じく樋口氏の弟子であり、だからこそ下鴨幽水荘によくやってくるのである。
「リモコンご臨終事件」の翌日も、明石さんはいつものように下鴨幽水荘にやってきた。小津と3人で話をする中で、小津が「樋口師匠と一緒に五山の送り火を見に行こう」と明石さんを誘う。しかし明石さんは、「既に別の人と行く予定がある」とその誘いを断った。それを聞いた「私」は、小津に対して「ざまぁみろ」と思うのと同時に、「明石さんと五山の送り火を見に行く約束をしたのはどこの馬の骨野郎だ」と心中穏やかではない。しかしもちろん、そんな気持ちは一切おくびにも出さなかった。明石さんは簡単には近づけない、容易ならざる存在なのである。
さて、話を「リモコンご臨終事件」の前へと戻そう。リモコンが故障するきっかけはば、下鴨幽水荘にいた面々から裸踊りをさせられそうになったことであった。しかしそもそもだが、彼らは何故下鴨幽水荘に集まっていたのだろうか? その理由は、映画の撮影である。もちろん、監督・脚本は明石さんだ。「現代から幕末へとタイムスリップした者が、志士たちのやる気を奪うことで歴史を改変してしまう」という、やはり大層珍妙なストーリーであり、古風な(というか、ボロい)建物である下鴨幽水荘を舞台に撮影が行われていたのである。
五山の送り火の話をした後、明石さんは持参していたパソコンを開き、昨日撮った映像を見返しながら編集の構想を練っていた。その時、明石さんは映像のおかしさに気づく。確かにそれは、とても奇妙な映像だった。志士に扮した小津が斬られる場面なのに、その奥に映る建物の2階の窓から、まさにその小津が出てきたのである。
明石さんが、「小津さんは双子なのですか?」と問う。そんなわけがない。しかし、だったらこの映像は、一体何だというのだろうか……?
映画の感想
先程触れた通り、この物語には「タイムマシン」が登場します。そしてこれぐらい書いてもネタバレとは言われないでしょうが、同じ映像中に小津が2人いるように見えるのは、タイムマシンを使っているからです。この点は、割と早い段階で明らかになります。つまり、この映画には「本当に時間を移動することが出来るタイムマシン」が登場するというわけです。
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