【前進】誰とも価値観が合わない…。「普通」「当たり前」の中で生きることの難しさと踏み出し方:『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』(花田菜々子)
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「他人と価値観が合わない」という世界で生きていくということ
自覚なしに価値観を”強要”する世の中
こんな問いに、今まさに立ち向かわされているという人もいるのではないでしょうか?
私も著者と同じく、これまでずっとこのような問いに違和感を覚えてきました。「目の前に選択肢がいくつかあります。どれか選んでください」と言われている気がする時、「どうしてその選択肢の中からしか選べないのだろう」と感じます。子どもの頃は、何か違うと感じながらも、そういう状況に違和感を覚えていなそうなクラスメートを見ながら、「おかしいのは自分なんだ」と思うしかありませんでした。
学校でも会社でも家庭でも、「こうするのが当然だよね」「こんな風にしないなんて考えられない」「あれ?◯◯しない人だっけ?」みたいな言い回しで、「普通」や「当たり前」が”強要”されます。非常に難しいと感じるのは、相手には「強要している」という意識はないということ。著者も本書で、そういう違和感をたびたび綴っています。
例えば著者は、出会い系サイトで知り合った中年以上の男性から、「出会い系サイトで見知らぬ人と会うなんて危ないよ」と忠告を受けることが多くあったと言います。
こういう人は、非常に不愉快ですが、どこにでもいます。
「普通」に馴染めない時、自分が劣っていると感じてしまう
世の中の「当たり前」と合わず、少数派だと自覚させられる時、自分が間違っている、劣っているような感覚に陥ります。私も本当に、20代中盤を過ぎるぐらいまでずっと、その感覚にかなり苛まれていました。今でも決して消えてはいませんが、昔よりはだいぶマシになっています。
とある出会い系サイトで本を勧めまくるまでの著者は、「ヴィレッジヴァンガード」という奇跡的な環境で穏やかに生きていられました。
本書を読むと、彼女の切実さがすごく伝わってくるでしょう。特に、「普通の人たちに合わせることが嫌なんじゃなくて、本当にできないんです」という表現は、私の心情とも完全に一致します。「スキーが滑れない」というのは、もしかしたら練習次第で変わるかもしれません。しかし、「お酒が飲めない」というのは体質だから変わらないでしょう。それと同じような意味で「できない」んだと、私もいつも感じています。
「当たり前」からの「ズレ」を誰もが意識させられるコロナ禍
著者は、夫との別居という環境の変化をきっかけに、自分がいかに特殊な環境にいたのかに気づき、何かを変えたいと思うようになります。しかし、
というほど、「普通」から外れた環境で驚異的な適応をしてしまっているがために、どの方向に足を踏み出したらいいのか分かりません。
ある意味では今、多くの人がこういう事態に直面していると言えるかもしれません。コロナウイルスの蔓延は、世界をあっという間に変えていきました。まさに緊急事態の中に我々は生きていますが、そういう時代においては、それまでの社会では許容されていただろう「余白」や「スキマ」や「余裕」みたいなものが失われてしまいます。それはつまり、「普通」「当たり前」「常識」以外のものがさらりと打ち消されていく世の中でもある、と私は感じています。
多くの人が、今まで感じずに済んでいた「普通」「当たり前」「常識」からの「ズレ」みたいなものをまさに再認識させられているでしょうし、そういう中で前進していくことの難しさを感じているのではないかと思います。
前進のための一歩をどう踏み出すか
コロナウイルスがある程度収束してからでないと実践は難しいでしょうが、本書はまさに、その難しい一歩を後押しする本だと感じます。普通を遠ざけるでもなく、普通に迎合するでもなく、自分の中の「不要な思い込み」を崩して新しい価値観を取り込んでいく過程がとても丁寧に描かれていくからです。
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