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【生き方】改めて『いま、地方で生きるということ』を考える。「どこで生きる」は「どう生きる」に直結する

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「生きること」について考えてみる。どこで、どのような生活をしたいですか?

何のために、私たちは「生きたい」と感じるのか

本書は、「生きること」や「生活」について、著者自身や周囲の人たちの人生を踏まえながら描いていく作品です。結論めいたなにかが提示されるような本ではなく、著者自身も迷い、悩み、放浪しながら、「地方」というキーワードを核に据えて、様々な事柄に触れていきます。

本書では東日本大震災の話も扱われるわけですが、私たちはさらにコロナ禍を経てきました。「どのように生きていくか?」という問いがより身近な問題として立ち上がってきたと言えるでしょう。人生に対して何を求めているのか、何が必要不可欠なのか、どうであったら豊かであると実感できるのか。一人ひとりがそのような思いに囚われたのではないかと思います。

本書はそんなことを考えるきっかけになるだろう作品です。

そんな問いに向き合っている人たちに、著者のこんな文章を読んでみてほしいと思います。

走る車から見える被災地の風景を眺めながら、「僕らは幸せになるために生きているんだろうか?」ということを幾度か思った。
「幸せになりたい」というアイデアを手放しさえしれば、どこでも十分に生きてゆけるんじゃないか。むしろそのアイデアによって、がんじがらめに不自由になっているんじゃないかな。

この文章から、本書のテーマは「地方で生きていくこと」ではなく、「どこででも生きていけること」だと言っていいでしょう。「住む場所」を含め、「何かに縛られている状態」はやはり不自由なのであり、そこから抜け出せればもっと生きやすくなるのかもしれません。そしてその究極として著者は、「『幸せになりたい』というアイデア」も手放し得るのではないか、と書いているのです。

(どこで暮らしてゆくか? という場所の選択に、あまり頓着はないんですか?)――ないです。このお店をひらいて思ったんですけど、住んでいる人たちが「自分の街を良くしていきたい」と思っている場所なら、自分もその一員になって、暮らしを良くしていけるものなんじゃないかなって。

(コミットするのは。)……地域ではないな。土地でもないね。
場所というより「機会」みたいなものかな。自分は「機会」に身を置いて、そこで暮らしている感じがする。自分のいるところで生きている。「行ってそこで何かをする機会」に、俺は身を置いている気がする。

本書には、「生活」の力点を様々な場所に置く人たちが登場します。本書を読むと、「生活を行う拠点」をどのように決めるのかという判断が色々あってもいいのだと感じられるでしょう。

私自身は、仕事や社会に対する適性の低さや、映画館や美術展など文化的なものへの関心などにどうしても縛られてしまうため、現時点ではやはり都市部での生活をなかなか捨てきれません。しかしその一方で、本書で描かれているようなフラットさに憧れる気持ちもあります。「アドレスホッパー」まで行くとちょっと極端ですが、どこでどう生きていくのかという選択を、その時その時の気分によって変えていくみたいな生き方には羨ましさを感じてしまうのです。ただ、冷静に考えて、自分にはまず向いていないだろうと感じます。やはり私には、そういう軽やかさは身に着けられそうにありません。

どういう仕事でもいいんですよ。たとえば、嫁さんの実家はガソリンスタンドですけど、そこから「来て働いてくれないか?」と言われたら僕は行く。で、その中で役割を見出せばいいと思っていて、僕自身には「こういうことをやりたい」というのは本当にないんですよね。
だから自分が住むべき場所も、その時その時で決まっていく。

“活きる”というか、俺の持っているものを活かせるというか。腹の据わり方とか、気合とか、ぶれない何かとか。
支援という感じで来ているわけじゃない。「使ってくれ」「使えるよ俺」という感じで、「ここのために」というのもない。俺が活きる場所やと思ってきてる。
自分の意志で動いている感じも少なくて、なるようになっていることに乗っかっているというか。自分がやっている感じはあまりないから、あんまり責任感とかないんだよね。

「どう生きるか」に付随するだろう様々な思考が、色んな形で本書に詰め込まれています。生き方について考えている人にとって、新たな視点を与えてくれるのではないかと思います。

震災後における「地方」の存在感と、「縛られない生き方」

3月11日以降の時間を通じて、「どこで暮らしてゆこう?」「どこで生きてゆけば?」ということをあらためて考えている人は、多いのではないかと思う。一方「どこで生きていても同じだ」という気持ちになっている人も多いかもしれない。どこでも構わなくて「要はどう生きるかでしょう?」とか

これ以降は、ブログ「ルシルナ」でご覧いただけます

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