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【驚異】『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』って書名通りの本。異端ロックバンドの”稼ぎ方”
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グレイトフル・デッドを知っているか?常識外れのやり方で稼ぎまくるバンドは何が革新的なのか?
私はグレイトフル・デッドの存在も、その凄まじい手法も知らなかった
私は本書を読むまで、「グレイトフル・デッド」というロックバンドの存在を知らなかった。ビートルズやローリング・ストーンズと”同級生”だそうだが、日本ではあまり知られていないらしい。
しかし彼らは、「音楽業界に革新をもたらした」と言われているそうだ。現在でも、年間5000万ドルを稼ぐほどの特異なビジネスモデルを確立している。本書は、そんな彼らのやり方を「マーケティング」的な視点で捉え直し、その手法をビジネスに活かそうという観点で書かれている。
さて、ざっくりと彼らがどんなやり方をしてきたのか列記してみるが、正直それらを読んでも彼らの凄さは分からないかもしれない。何故なら、現代では「当たり前」と言ってもいいようなものばかりだからだ。しかし彼らはこのような手法を、50年近く前から続けている。もちろん当時は同じことをやっているアーティストなどいなかった。現在の視点から見ると、彼らがいかに時代を先取りしていたかがよく理解できるだろう。
彼らはこんなことをしていたのだ。
・ライブの録音はOK
・チケット販売はバンド自身で管理
・インターネットが存在しなかった時代から、膨大な顧客名簿を管理
・ライブの度に異なる演出
・ライブは年100回
・CDの売上ではなく、ライブで収益を上げるモデルを確立
いかがだろうか? 現代のアーティストなら「当たり前」のものも多いはずだ。一方で、「ライブの録音OK」「自らチケット販売」など、現代でもグレイトフル・デッド独自の手法と言っていいものもあるだろう。
グレイトフル・デッドは、ライブを数多く行うことで熱狂的なファンを獲得してきた。本書の著者2人も熱狂的なファンであり、ファン繋がりで出会ったことが、本書の刊行に繋がったのだという。
糸井重里が唸った、「大衆操作的ではないマーケティング」の妙
本書が邦訳された背景には、コピーライターで「ほぼ日刊イトイ新聞」主催の糸井重里が関係している。彼は、アメリカで本書が刊行される以前からその内容について話を聞いており、注目していたのだという。
糸井重里が本書のまえがきも担当しているのだが、そこにはこんな風に書かれている。
マーケティングが、いやな言葉に聞こえるのには、理由があります。
それは、ある種のマーケティングが「大衆操作的」なものだと考えられているからです。
「これをこうして、あれをああすれば、みんながこうなるだろう?」という考え方が、大衆操作的でないとは思えません。
でも、「大衆操作的」ではないマーケティングもあるんです。
確かに私も、「マーケティング」という言葉があまり好きにはなれないし、その理由は糸井重里が指摘している通りだと感じる。もっと露悪的に書けば、「『決して良くはないもの』でも宣伝の力で売ってしまう」みたいなイメージになるだろうか。
しかしグレイトフル・デッドのやり方は、そんな印象を抱かせない。それは究極的に言えば、「グレイトフル・デッドが『良い体験』を与えたいと考えているから」だと思う。そのための手段として、彼らなりに様々なことを考え、実践してきた。それが結果として、「音楽業界を革新した」という評価に繋がったわけだ。
彼らのやり方は、50年前にはあまりに異端だっただろう。しかし、インターネットが世界を繋ぎ、コミュニケーションのあり方が変わり、モノよりも体験が重視されるようになった現代の視点から見れば、彼らのやり方は非常に合理的なものに感じられるはずだ。
本書は19の章から成っている。どこから読んでもいい。どの章も構成は同じで、まず「具体的にグレイトフル・デッドが何をしたのか」が語られる。そしてその後でそれを一般化して、様々な状況に当てはめられるようなアドバイスとして提示するという流れだ。19の章すべてに章題がつけられているのだが、いくつかリストアップしておこう。
・ありのままの自分でいよう
・新しいカテゴリーを作ってしまおう
・変わり者でいいじゃないか
・最前列の席はファンにあげよう
・中間業者を排除しよう
・コンテンツを無料で提供しよう
・自分が本当に好きなことをやろう
どうだろう、気になるものはあっただろうか?
まずコミュニティを作ろう、お金は後からついてくる
オンラインサロンなど、個人がコミュニティを容易に作れる時代には、「何を当たり前のことを言っているんだ」と思われるかもしれないが、グレイトフル・デッドが様々に行ってきた手法の本質は、結局のところ「まずコミュニティを作ろう、お金は後からついてくる」という一文で表現できるように思う。
これ以降は、ブログ「ルシルナ」でご覧いただけます
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