
Photo by
tukasa0_0
品格【note詩】
すてきだなぁ
と思うのは
その人というよりも
その人の品格かもしれない
ティーカップを持つちょっとしたしぐさ
嫌味や気取りのないサラリとした"ごきげんよう"
コーヒーのおかわりが欲しいのを察して店員を呼び止めてくれる滑らかな手つき
その人の品格は
「お久しぶりですね」の接頭語単位でにじみ出る
「久しぶりですね」
と言ってしまった瞬間の後悔
自分の品格のなさもまた
接頭語の欠落によって秒単位で暴かれるのだ
周囲にいくら気配りをして
微笑みをたやさず
相手の話を傾聴し
人あたり良く接していても
生まれつき品のない人間であることが
微粒子ほどの要素から露呈する
銀座育ちのハイカラなその人に
四捨五入して二千円
シャインマスカットがちりばめられたクレープをごちそうになった日曜日
いつもどおりの上品な笑顔としぐさに
「どうせ私は庶民の下ですよ」
と初めて悪態をついた
口元の生クリームを庶民らしくポケットティッシュでぬぐい
あくまでも心のなかで
しかしこれ以上は
自分の価値を下げるわけにはいかない
「格別な味わいですね」
と笑うその人に
ぎこちなさが伝わらないようやわらかく微笑み返し
精一杯の品格を込めて応じたのだった
カクベツな……大変すばらしく……おいしく……いただくものなのですね……
いいなと思ったら応援しよう!
