【詩】金魚
ゆがんだ、ゆがんだ、ゆがんだ世界。
歪んだ、歪んだ、歪んだ世界。
真紅い綺麗な金魚が泳いで居る。
蒼い深い水の中を游いで居る。
たった一つ、蒼い艶の中に、
真紅い艶が游いで居る。
ゆがんだ、ゆがんだ、ゆがんだ世界。
歪んだ、歪んだ、歪んだ世界。
彼はドレスを纏って踊る。
深い真紅いドレスを着て舞う。
雄の金魚の金襴緞子の、
真紅の裳裾が蒼い水の中で揺れ動く。
ゆがんだ、ゆがんだ、ゆがんだ世界。
歪んだ、歪んだ、歪んだ世界。
私は自分の手首に疵を付ける。
象牙の膚から真紅い血が零れ落ちる。
蒼い深い水の底で金魚は踊る。
拡がる真紅のヴェールを揺らして踊る。
ゆがんだ、ゆがんだ、ゆがんだ世界。
歪んだ、歪んだ、歪んだ世界。
赤い水の中に金魚は視え無い。
真紅い真紅い金魚は観え無い。
真紅の涅槃で私は果てる。
夢幻の歓喜に私は果てる。
歪んだ、歪んだ、歪んだ世界。
ゆがんだ、ゆがんだ、ゆがんだ世界。
歪んだ、歪んだ、歪んだ私。
ゆがんだ、ゆがんだ、ゆがんだ金魚。
ゆがんだ、ゆがんだ、ゆがんだ世界。
歪んだ、歪んだ、歪んだ世界。
<了>