一夏残照【上】
あなたの口唇をわたしの紅い血で満たして下さい
わたしの脳髄をあなたの心で満たして下さい
どうか どうか
わたしは不安です わたしは不安です
可愛い可愛い女の子たち
お人形さんみたいな女の子たち
その首だけを切り落として
僕の剣に串刺して焼いてしまおう
ああ、お願いします!どうか太陽を焼かないで下さい
わたしは只、夜の邦にずっとすんで居たいだけなのです
脳味噌の中で蠢く一匹の虫を追いかけていたら
いつの間にか自分が自分で無くなった
溶け出した脳の海に溺れる前に 早く死んでしまおう
送電線の碍子が 剃刀以外に 見えなくなった
他の事なんかどうでもいいんです
私の流した血の涙が
あなたの心にそっと流れ込んでゆくならば
真白い肌に格子状の切り傷をつくって埋め尽くす
どうせ君はいやがるだろうけど
〈続〉