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【散文詩】半自動筆記に依る夜想曲(4)-2:『王水』-2

 一方、人の形をした(否、だからこそだが)人形は細く透き通る声でグレゴリオ聖歌を詠唱して居た。其れは仏教の大日如来マハヴィローシャナをイメージして創られたと云うが、そうで在れば、何故基督キリスト教の聖歌等を歌って居るのかが全く不可解だった。
 後ろで私に声を掛ける人物が居た。
 彼こそが其の人形を作らせたのだと言う。『夢でこの人形を創れと、悪魔レオナルドがそう囁いた。夢から覚めると、私は早速、お告げを実行に移したのだ』男爵は最早人間の目をして居なかった。
 彼は人形をより完全なものにする為ならば、この命迄も捧げる覚悟だと告げ、狂った笑い声を上げた。
 如何に美しくとも、其の人形こそ、罪深き偶像で在る事に他ならない。

<続>

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