黄昏の空を走る《#シロクマ文芸部》
走らないで。まだ、いいです。
心の中でお願いしてるのに、走りだした。
幼稚園生だ。
スーパーの自動ドアを抜けてすぐ、お菓子売り場に走っていった。後ろから赤ちゃんを抱えたママに「走らないの」って怒られて。だけど無視して。
当時人気だったカード付きのお菓子。前に「今度ね」って言われたから。きょう買ってくれると勘違いして。
ニコニコ顔でカードを握りしめて、ママのところに戻ろうと、お肉売り場、お魚売り場、レジまで走る。でも、ママは見つからない。泣きながらママを待つ。お店の人に話しか