続・隣りの席の富澤さん
素直って凶器だ。
彼を見ているとつくづくそう思う。
先日富澤さんは先方との電話の最後に
『あの、仕事とは全然関係ないんですけど、
聞きたいことがあって…
あの、ご自身の保留音って分かりますか?
あ、分からないんだったらいいんです。
いや、いい曲だなぁと思っただけなので。
はーい、失礼しまーす。』
と、言いながら電話切っていた。
ほ…保留音!?!?
今、保留音って言った!?!?!?
え、例えそれが良い曲だったとして
曲名聞いてどうするの?ダウンロードするの??
目覚ましにでも使うの!!??????
と、感情が一気に押し寄せて来たが
本人に聞いた所でろくな答えが返ってこなさそうなので耐えた。震えながら耐えた。
ツッコみたくてもツッコめない…
辛い…辛すぎる…。
そう。私はもっぱら
彼の電話対応に聞き耳を立てる事を日課にしている。
悪趣味だ。分かっている。
分かってはいるけれど、
彼の電話対応には究極の素直さ、ピュアさがたしかに実在していて
それを感じたくて、どうしても辞められない。
共に仕事をする上でこの上なく鬱陶しいものではあるが、
後先考えずに思った事を全て聞いてしまう彼の素直さに
私はたまに羨ましさすら感じるのだ。