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韓国に来て知ったキムチに関する9のこと

 大して好きじゃないけれど、なきゃないで物足りなくて冷蔵庫の中を探しちゃう。「なくても問題ないよ」と涼しい顔で言っていた自分は一体何処へ行ったのでしょうか。それでもね、好きだとは言わないよ、キムチさん。

 韓国に来て10年以上が経ちました。好きでもなければ嫌いでもない、つまり特段気に掛けることのなかったキムチは、時おり私を驚かせます。

 そんなキムチに関することをまとめてみました。

 細かく言うともっとあるのですが、流石に2桁は行き過ぎだろうと思うので、とりあえず今回は9つまでにしておきます。


1.本当に毎食キムチ

どの食事にも欠かせないキムチ

 「韓国の人って、朝からキムチ食べるらしいよ」

 韓国に来る前からそう聞いてはいましたが、本当でした。当然かの如く、食卓には朝からキムチが並びます。お昼にも出てきます。晩御飯はもちろんのこと、おやつの焼き芋ですらお供としてしばしば登場します。

 どんだけ食うんだよ。


2.大きい

頂いたキムチ。大きさもそうですが、量も相当なものです。

 韓国で見掛けるキムチはどれもこれもデカいです。それまでは食べやすい大きさにカットしたキムチしか見たことがなかったので、その迫力には驚きました。韓国の白菜が日本でよく見掛けるものよりもまん丸として太いため、余計に大きく見えたのかもしれません。

 基本的にキムチは半分に切って塩漬けした白菜に、様々な調味料を混ぜて作ったヤンニョム(양념)というキムチの素を馴染ませて作ります。市場やスーパーで売られているもの、また贈り物で頂くものもカットされてないことが多く、料理に合わせてその都度切るのが一般的です。

 また、お店で出てくるキムチも大きいです。カットされていることもありますが、そうでないことも多く、このような場合はトングとハサミを一緒に渡されます。そう、「好きな大きさに切って食べてね」ということです。

焼肉にもキムチは欠かせません。お肉同様、焼いてから切るのが韓国流。
こちらもそのまま食べるには大きすぎるサイズーー
でも大丈夫。ハサミで切っちゃうから。


3.種類が多い

ネギのキムチ、白菜キムチ
セリのキムチ、海苔の和え物、キュウリのキムチ

 思った以上にキムチの種類は多いです。最も一般的なのは白菜キムチですが、キュウリを使ったオイキムチ/オイソバギ(오이김치/오이소박이)、ネギを使ったパキムチ(파김치)、大根で作ったカクテキ(깍두기)、大根の若菜を使ったヨルムキムチ(열무김치)、チョンガクムという小さな大根で作ったチョンガクキムチ(총각김치)、ニラを使ったブチュキムチ(부추김치)、エゴマの葉を使ったケンニムキムチ(깻잎김치)、粉唐辛子が入っていない白キムチ(백김치)、水キムチのトンチミ(동치미)など挙げたらきりがありません。

 地域によっても種類は様々で、例えば全羅南道の麗水ヨス(여수)では芥子菜で作ったカッキムチ(갓김치)が有名です。また、最近初めてセリを使ったミナリキムチ(미나리김치)を食べましたが、これは全州チョンジュ(전주)地域でよく食べられているキムチだそうです。

 キムチを韓国版漬物と考えると、とりあえず何でも漬ければキムチになるのでしょう(多分)。毎食のように食卓に並ぶのも、このような多様さが理由の1つなのかもしれません。


4.本来キムチは白かった

キムチといえば、想像するのはこの色

 キムチというと赤色を想像しますが、最初から赤かったわけではありません。本来朝鮮半島に唐辛子はありませんでした。そのためキムチの起源は「塩漬け」で、今でも食されている白キムチや水キムチが昔は主流だったといわれています。

 唐辛子が輸入され始めたのは朝鮮時代中頃で、その後キムチにも使われるようになりました(韓国民族文化大百科事典より)。現在確認できるキムチに関する記録は2600~3000年前に書かれた中国初の詩集『詩経』である(同上)ことを考えると、キムチが赤くなったのはここ数百年の話で、歴史から見ると比較的最近だということが分かります。

 キムチの起源について詳細を知りたい方はこちらへ↓


5.生牡蠣も使う

茹でた豚肉と相性抜群の牡蠣が入ったボッサムキムチ

 海が近い地域では、キムチに牡蠣を入れることがあります。生牡蠣は早く食べなければ危険というイメージがありますよね。キムチに使うとなると、少なくとも数日は寝かせることになるわけでーー。最初はかなりの抵抗感、いや恐怖感がありました。でも意外や意外、大丈夫でした。ひゅ~。

 それどころか、生牡蠣が主役のグルキムチ(굴김치)すらあります。無論早めに食べるのが基本の料理ですが、スーパーやデパートで売られている商品だと1~2週間は持つそうです。1週間以上経った生牡蠣を食べるなんて想像できませんでしたが、キムチにすれば可能なようです。これが発酵の力なのでしょうか。

 すんげーな、キムチ。

※但し、言わずもがなですが、ご自身で作られる場合は新鮮な生食用の牡蠣を使用し、必ずその日のうちにお召し上がりください。


6.キムチに似たキムチじゃないやつがいる

「私は誰でしょう」

 これ、何に見えますか。

 キムチに見えますよね。でも、キムチではありません。これはコッチョリ(겉절이)という名の浅漬けです。浅漬けなので寝かせる必要はなく、すぐに食べることができます。

 姿も味もキムチに似ていますが、キムチよりも野菜のシャキシャキとした食感を楽しむことができ、味もあっさりとして食べやすいです。そのため、個人的にはキムチよりもコッチョリ派です。


7.キムチチゲには酸っぱいキムチ

キムチチゲ

 キムチを使った代表的な料理といえば、キムチチゲです。美味しいキムチチゲを作る一番のコツは美味しいキムチを使うことですが、いくら美味しくても熟成が足りないキムチはキムチチゲには向いていません。

 キムチは発酵が進むと酸味が強くなりますが、キムチチゲには、そのまま食べるには酸っぱすぎるくらいのキムチを使います。その方がスープに深みが出るからです。逆に言うと、日が浅いキムチで作ったチゲはどこか物足りない味になってしまいます。

 皆さまも、キムチが酸っぱくなり過ぎた場合は、ぜひキムチチゲにお使いください。


8.長期間熟成すると名前が変わる

見た目も香りも数年は経っていそうなキムチ

 キムチの熟成期間は、想像以上に長いです。スーパーでは2~3年経ったキムチはもちろんのこと、5~6年熟成されたものまで売られています。

 このように長期間熟成されたキムチは名前を変えて、ムグンジ(묵은지)と呼ばれています。キムチチゲもそうですが、ムグンジを使った方が美味しい料理も多く、最初からムグンジになるために作られたキムチもあります。

※これまた当然な話ですが、熟成期間と消費期限は別ものです。発酵食品で長持ちするとはいえ、購入したキムチは表示されている期限内に消費しましょう。


9.熟成しすぎたキムチは洗って食べる

(元)キムチ、(現)洗われたムグンジ

 これが一番の驚きでした。

 長い間発酵されてムグンジになったキムチは、そのまま食べるには刺激が強くて酸っぱすぎます。そのような場合、水でヤンニョムを洗い流して食べます

 調理前の食材ならともかく、料理した後の食べ物を洗って食べるなんて、かなり衝撃的でした。正直、いまだに抵抗感があります。しかし捨てるのはもったいないので、私も最近は熟成しすぎたキムチは洗って食べています。

 味はというと、白菜の漬物に似ています。もともとはキムチだったと思えない程に辛さも刺激もなくなり、しかし漬物独特の深みとうまみは強調されて美味しくいただけます。熟成した酸っぱいキムチが苦手な私もパクパクと食べてしまうほど。焼いた豚肉のほか、厚めに切ったお刺身(鯛やヒラメなどの白身魚)と一緒に食べるのがおすすめです。


◆◆◆


 こうして並べてみると、キムチはなかなかの変身上手です。

 自然が作り出す発酵の力と、それを見事に活用した先人の知恵のおかげでしょうか。

 既述したように、大して好きではないと言いつつも、食べれば食べるほど飽きるどころか欠かせない存在になってくる、不思議な食べ物です。

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