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#12. 本気で動き出すタイミングはエネルギーが溜まったと感じたとき

 イギリスに留学して2年ほど経った頃のお話です。

※それまでの流れは自己紹介でお話ししています。長文ですが、ご一読いただけると幸甚です😊


その頃の生活

 私が留学した先はスコットランドの田舎町でした。
 人口は2万人にも満たない(いえ、到底及ばない)、大学とゴルフ場しかないような、詰まるところ、学生としては勉強以外にすることがないような小さな街でした。

 しかし、当時の私にとっては必要なものはすべてあったように思います。

 娯楽は全くありませんでしたが、ビーチがふたつもあり、緑の芝が広がる場所には野ウサギが走り回っていました。海岸線には宗教戦争でかろうじて生き残った大聖堂があります。今考えても、本当に豊かな場所だったと思います。

 こじんまりとした街ではありましたが、イギリス特有の石造りの街並みは古い歴史を感じさせるには十分でした。どれだけ古いかというと、街の外れで見掛けた骨董品店には300年前に描かれたという街の風景画が飾られていたのですが、そこに見える景色は私の知っているそれと全く変わりませんでした。昨日描きましたと言われても信じてしまうほど、それくらい昔のままの光景が広がる街だったのです。

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 このような街にいて、癒されないわけがありません。

 うつになって薬物治療を始めてから9年近く経っていましたが、それでも当時の私にとっては心の疲れというのは日常茶飯事で決して珍しいことではありませんでした。大学に通うということは、決まった時間に決まった場所に行くということですが、この当たり前のことすらも苦痛でしたし、兎に角すぐに疲れてしまうので、極力人を避けながら生活していました。

 アルバイトをしたり旅行したりする友達が羨ましいと思いつつも、自分は自分のペースでしか生きられないということは痛いほど分かっていたので、半分は諦めの気持ちで気にしないようにしていました。

 この街は、そんな私を、知らず知らずのうちに優しく包み込むようにして癒していったのです。


遂にその日はやって来た

 夏休みで日本に一時帰国していたときでした。

 精神状態が不安定だったため、特に予定を立てることもなく、心の調子を最優先にして毎日を過ごしていました。予定というのは元気な人が立てるもので、自分にとっては焦りに繋がるだけだったからです。

 しかし、7月の暑い日の朝。玄関のドアを開け、雲がほとんどない青空を見上げたその瞬間、感じました。

失っていたエネルギーが、充分に溜まった。

 そして、同時にこう思います。

ーー遂に、動く時が来た。

 こんなことを感じたのは初めてでした。

 でも、確かに心の底から確信したのです。今しかないと。今動かなければ今後は動くのがさらに難しくなるだろう。今、この瞬間が、最大で、最高のチャンスだとーー。


理想と現実

 私には夢がありました。叶わないだろうと思いつつ、でも叶えたい理想がありました。それは、人との出逢いが素晴らしいと心から思える人生を送ることです。

 昔からこの世の中で一番怖いのは人間だと思って生きていました。そしてそれは一生変わらないのだろうと思っていました。しかし、「人生の宝物は人との出逢いです」という、当時の私には夢物語にしか思えないようなことを実際に経験しながら生きている人がいるということも知っていました。

 もし自分もそのように生きられるならば、もしそうならば、この世で一番怖くて嫌いなものがなくなるだけでなく、それが生き甲斐にすら成りえるのだからこれ以上のものはないと思っていました。

 しかし、そうするには大きな問題があります。

 それは、人との出逢いが素晴らしいと知るためには、人と出逢わなければならないということです。

 人が怖くて避けながら生きてきたのに、人との出逢いを素晴らしいと思うためには、必然的に人と出逢うことを避けては通れないというわけです。

 こりゃ困った。

  それまでは毎回同じようにここで止まっていました。いつも立ちはだかるのは、そうなりたいけどなれない自分です。また、無理をしてまでするのは違うということは、経験上知っていました。

 悔しいけれど、いつも、いつも、いつも、いつも、いつも、いつも、ここで止まっていたのです。

 でも、エネルギーが溜まったと感じた今、それまでとは全く違うことを感じます。

人は怖いし、大嫌い。
でも、もう恐怖の声に従うのはやめにしよう。
どれだけ心が叫んでも、今だけは恐怖の声に耳を傾けるのはやめにしよう。それに耐えれるだけのエネルギーが、今はある・・・。


あとはとにかく行動するだけ

 何をすれば良いのかは分かりませんでした。でも、そんな中でも頭に浮かんだのは、数少ない友人に教えてもらった5泊6日の沖縄キャンプでした。

 彼女の感性が大好きだった私はそのキャンプに参加することにしました。知っている人はいない、ひとりきりでの挑戦です

 全国から30人弱の参加者が集まって自給自足を体験するキャンプでした。もちろん私を知っている人は誰もいません。でも、だからこそ、自分を飾る必要もなく、ただただ本能と直観に任せて過ごした6日間でした(今考えると迷惑をたくさん掛けたなという恥ずかしさでいっぱいですが・・・)。

 結果、参加した先にあったのは、感動だけでした。
 人生で初めて、人との出逢いで感動して、涙しました。

 出逢った皆と別れるあの瞬間、悲しさではなく、寂しさでもなく、感動の涙が流れたのです。

 そして、家に着いて、感じました。

キャンプの謳い文句にあった「生命力アップ」というのは嘘じゃなかった。


実は伝えたいこと

 うつ病やそれに似た症状で苦しんでいる人の助けになれることはないだろうかという想いが常にありました。でもそれと同時に、人は皆それぞれ違うものだし、専門家でもない自分が何かを言うのは非常におこがましいものだとも感じていました。今でもそういう気持ちはあります。

 ただ、心理学の教科書やカウンセラーも教えてくれなかったことが確かにあり、それをここで伝えたいと思うのです。

 ここからは私の個人的な経験のもとで語る個人的な見解ですので、信じられないと思う人は信じないでください(本気で)。


1.休むのは重要で、エネルギーが溜まるまでは動かなくてもいい

 現代人特有でしょうか。それとも、日本という文化的背景があるからでしょうか。日本人というのは休むのがとても苦手なように思います。

 だからこそ、やはりこう伝えたいのです。

自分でエネルギーが充分に溜まったと感じるまではゆっくり休みましょう。

 もちろん仕事や家庭の事情で休めないという人もいるでしょう。そういうときは意識的に時間を調整して、定期的に休む時間を作りましょう。

本当に動くのは、休んだ後です。

 それじゃあ遅いと感じても、それは恐怖や焦りから来るの心のささやきに過ぎません。あなたにとってあなた以上に大切な人はいないのです。そしてあなた以上にあなたを幸せにできる人はいないのです。ちゃんと、心の声を聴いてあげましょう。

 そして、自分の声があなたに「動きたい」と伝えたときに動きましょう。

しかし、ここで重要なのは、エネルギーが溜まって動こうとしているのか、それとも、恐怖や焦りから動こうとしているのかを見極めることです。

 しつこいようですが、本気で、自分の声を聴いてあげてください。あなたの言葉を聞き、理解できるのはあなた以外にはいません。「動きたい」という言葉の裏に何が隠れているのかを理解できるのは、あなたしかいないのです。

 他人の方が、自分のことを客観的に見て判断してくれると思いますか? 

 そう思う気持ちは分かります。でも、それはおそらく、かなり高い可能性で、幻想です。


2.感情と思考を聴くのは重要だが必ずしも従う必要はない

 あなたの感情や思考は、あなたに聴いてほしくて、いろんなことを言ってきます。

つらい。
苦しい。
痛い。
耐えられない。
もう無理。
生きていけない。
自分なんて生きている価値がない。

 そういう声が聞こえたら、その声は大切に聞いてあげましょう。あなたを守るために、あなたが言えない言葉を、代わりに言ってくれているのです。大切に、大切に、深い愛を持って、静かに、穏やかに、反論することなく、聞いてあげましょう。

 しかし、その声の通りに従う必要はありません。

 心がつらくて死にたいと言っていても、死んではいけないのと同じです。理解を示すことと、その通りに行動することは違います。難しいと感じてもそこはきちんと分けるようにしましょう。

 自分自身への愛を持つからこそ、「感情を尊重しつつも従わない」という選択肢があるのだということを知る必要があるのです。でも、それをするには、自分の語る声が持つ本来の意味を理解しなければなりません。

 だから、自分を大切にしてください。

 要は、あなたが思っている100倍、いえ、1,000倍、10,000倍も自分を大切にしたとしても、決して度が過ぎることはないということです。

 それは、あなたが生まれてきて唯一の責任は、あなたを幸せにすることだからです。


 精一杯の愛を込めて、素敵なあなたへ送ります😊


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