書籍#12.『マイ仏教』みうらじゅん(著)~幅広い人に向けた実践的仏教のススメ~
今回は、みうらじゅん氏著の『マイ仏教』について書きたいと思います。
マイブームという言葉やゆるキャラブームを生み出したみうらじゅんさんが、難解でとっつきにくい印象のある仏教を、ご自身の半生も交えて、面白おかしく解説しています。
仏教関連の書籍ではありますが、仏教に関心のない方も楽しく読むことができ、また、今すぐにでも実践できる、人生に役立つ智慧が詰まった一冊になっています。
◆本に出会ったきっかけ
今年に入り、YouTubeの『山田五郎 オトナの教養講座』を見始めてからというもの、山田五郎さんのご友人であるみうらじゅんさんの動画をおすすめされるようになりました。
しかし、なぜか私の脳は、「みうらじゅんを知ってしまうと、もう後戻りできなくなるから止めておいた方が賢明だ。そう、それは正に、パンドラの箱のようなものである!」と、意味不明なことを言う始末ーー。
結局、その言葉に従って、見て見ぬふりをしていたある日のこと、naomiさんのこちらの記事を目にします。
以前から、naomiさんとは趣味が合うなと、密かに親近感を抱いていたこともあり、これはもう、私はみうらじゅんという人間を知らなければならない運命にあるのだと勝手に解釈して、記事を読み始めたらもう最後。
完全に、ハマってしまいました。
もちろんみうらじゅんさんを知ったところで、パンドラの箱を開けたときのような災いが起きることはありません。それどころか、この記事を読んで以降、みうらさんのように生きたいとすら思う自分がいるのです。
脳はそれを知っていて、止めようとしていたのだろうか(なんつって)。
◆日常にあふれる仏教の教え
さてさて、本書では、仏像が大好きで住職を夢見る仏教少年だったみうらさんの半生が綴られています。そんな彼の人生を読みながら、私は、仏教の教えというのは日常のあらゆる場面で見つけることができるということを、改めて感じました。
例えば、ある日、みうら少年は、床に落ちて粉々になった元仏像を見て、「この世の万物は常に変化し、とどまることはない」という諸行無常を学んだといいます。また、デッサンの練習からは、「形あるものは一時的な状態に過ぎなくて、それは即ち、”ない”ことと一緒だ」という色即是空を学んだそうです。
これらの仏教の教えは、今、自分がいるこの場所でも確認することができます。今年購入したこのコンピュータも、今座っている椅子やテーブルも、今日買った大根や豆腐も、すべては諸行無常であり色即是空なのです。
◆実践的「マイ仏教」のススメ
それは、私たちも同じです。人も常に移り変わっていて、「自分」という決まった形があるわけではありません。
これを仏教では「無我」といいます。我が無、つまり、「自分というものはない」という意味です。
みうらさんはこの教えから、「自分探し」よりも「自分なくし」をしようと主張します。
そもそも自分というのが「この世で一番厄介で面倒くさいもの」であり、「自分にも都合がいい自分」なんているはずがないのだから、探す必要なんてないじゃないかというのです。
そして、自分なんてものはないのだから、人と比べたところでしょうがないわけで、悩みの根源になってしまう「他人」と「過去」と「親」との比較は決してしないようにする「比較三原則」を提唱します。
さらには「自分らしさ」を探すことに情熱を燃やすよりも、自分をなくして、人様の「ご機嫌を取ろう」とも語っています。なぜなら、目の前の人を心地よくさせるご機嫌取りは、大乗仏教における利他の実践、所謂、菩薩行に通ずるものがあるからです。
このように、仏教の教えだけでなく、気づけば、その教えを日々の生活で実践する方法までも提示しているのが、この『マイ仏教』です。
◆いつでも心にマイ仏教を
そんな実践的「マイ仏教」の中でも、最も手軽で今すぐにでも始められるのが、自分の念仏を持つことです。
みうらさんは、つらいことがある度に「そこがいいんじゃない!」という自分だけの念仏を唱えることにしているそうです。
試験に落ちた。「そこがいいんじゃない!」
彼氏・彼女に振られた。「そこがいいんじゃない!」
仕事で失敗して、職失った。「そこがいいんじゃない!」
お金が無い。人生、マジ、ピンチ。「そこがいいんじゃない!」
これは、言葉に弱く、言葉に洗脳されやすい人間脳を逆手に取った戦法だそうです。確かに、こう言い続けていると、不思議と何とかなるような気がしてきます。
◆セルフ念仏
そこで私も、自分の念仏を考えてみました。
つらくてどうしようもない出来事が起き、もうこの人生投げ出してしまいたいと思ったその瞬間、自分に向かって言い放ちます。
「それがしたくて、ここにいるんじゃん」
そうすると、「ん? そうだったっけ?」と、一瞬頭がフリーズし、冷静になる自分がいます。特に「え、何言ってんの?」という言葉を付け足すと、効果的です。
ポイントは、ちょっとだけ上から目線で、言ってやることです。
どんな苦悩が訪れても、この経験をするために、今自分はここにいるのだという気がしてきます。
しかも、「やりたいと思っていたことができている自分は、なんて幸せ者なんだろう」とすら感じだすのですから、人というのは全く以て分からないものですね。
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もし、人生を楽しく生きる方法はないだろうかと考えているのであれば、ぜひ一度本書を手に取り、自分だけの「マイ仏教」を探してみるのはいかがでしょうか。
手軽にサクッと読めるので、ちょっと元気になりたいときや気分転換にも最適です。