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香澄 海
2023年1月12日 18:30
さわさわと流れ落ちる陽の中少年がひとりまたひとりと青ざめていったさざ波も立てずゆっくりと息をひきとる細胞のかすかな重みが流れ出す少女の初潮が陽を浴びて柔らかく膨らみ頬がひとつまたひとつと赤く染められていったはしばみ色の目がふせられうなじの白さがさらされていく遮断された光が屈折することでたどり着くようにたどたどしく少女は少年を採集した細胞を手折る正直な指
2023年1月5日 20:30
ダンスに浮かれて青い悲しみを散らそう輝く風に身をまかせて凍える心を暖めよう君が言った「限りなく闇に近い箱」を見つけた時には君の汗の匂いと閉め切ったカーテンだけが残っていた君が一人で去ってしまったので僕は窓を開けたよ君のにおいも 君の寂しさも吹き飛んでしまうくらいあっけらかんとした風が吹き込んできた窓辺に置かれた糸の切れた風鈴が君の器用な指先で吊るされる日を待
2023年1月3日 19:22
ミルクセーキを飲みませんかかすれた声でそう言うので卵を割り砂糖を入れ牛乳を注いだ赤いサクランボはなかったがお盆にのせて持っていくともう事切れていたミルクセーキは飲まないの?ーもう飲めないんだよサクランボがなかったから?ーあぁ あの赤いサクランボ 君は好きだったね 僕は見てる方が良かった夜が引き裂かれながら明けていく私はあたたかいタオルで顔を拭き
2023年1月1日 01:47
あいみてのあたしみてのあしもとのいしのだれでもなさとあんただけの顔つき迷い石のコロコロ砂味のコンペイトウいっそ ほろ苦く響けばいい冬のコオロギみたいにあの子が欲しいこの子はいらない声の反響がちっぽけになった食卓で生き物を飲み込むつぐんだ口に棒でグイグイ入れていく口は徐々に開いていく歯に 舌に 喉に生き物が通り過ぎるあたしだけ だものあた