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植物だって生きてる【木】幸田文著
「なんて感受性の豊かな人なんだろう」
ただ、そこに立っている木に
想いを馳せている姿に驚かされました。
9月18日のメロディアスライブラリーで放送。
次回予告を聞いた時に、
『木』というタイトルの随筆で
「一体どんな内容だろうか」と
まったく想像ができませんでした。
ラジオ放送では一番最初の『えぞ松の更新』が
メインテーマでした。
季節が、ちょうど今頃だからです。
・えぞ松の更新
えぞ松は倒木の上に育つ植物です。
北国で環境が厳しいため、
発芽してもなかなか育ちません。
倒木の上に着床できたらラッキー。
一列一直線に並んでいるのは特徴です。
木が倒れた後にまたそこから
新たな命が芽生えます。
まさに生と死の境目。
「こうやって命を次世代につないでいるのか」と
読者の私まで感心しました。
・著者が植物に心を寄せるようになったきっかけ
次の章の『藤』で
著者の生い立ちが書かれてました。
父親は幸田露伴。有名な作家です。
幼い頃に、著者を含む3人の子どもたちに
1本ずつ木を与えていました。
みかん、柿、桜、椿をそれぞれ一本ずつ。
その木から実った果実は受け取れますが、
害虫対策やお手入れは自己責任。
植木屋さんにお手入れしてもらった時は、
お辞儀をして礼を言うように言われてました。
親の教えや環境の影響はありましたが、
もう1つ、理由があります。
それはお姉さんへの嫉妬心。
お姉さんは枯葉でも、
どの木の葉っぱか当ててしまいます。
しかし、著者はなかなか当てられません。
そうなるとお姉さんにばかり父の関心が行き、
自分は見向きもされなかったと寂しそう。
しかし、その植物に詳しいお姉さんは
早くに亡くなってしまったそうです。
この生い立ちが著者の木への関心の原点です。
・感想
全編通して、まるで人間を相手にするかのように、植物のことを想像し、思いを馳せる著者。
繊細な表現に終始驚かされました。
この随筆を書いた頃は著者は60代後半。
木を見るために全国を旅をして
パワフルな女性だなぁと感心。
行き先で現地のガイドさんをつけていました。
わからないことは素直に聞いており、
必要な助けを素直に受けていたのが印象的でした。
あとがきの解説で、
品のある文章と称されてましたが、まさにそんなイメージを受けました。
『えぞ松の更新』と『藤』以外で
心に残ったのは、『ひのき』です。
木材としてのひのきについてでしたが、
「アテ※」があると、木材に加工するときに
ひどく反り返ったり、裂けたりするため
使いづらいと厄介扱い。
それを地元の人から聞いた著者は心を痛めます。
※アテ…木が傾斜などで育つと背中と腹の育ち具合の違いから出る癖。
実際にアテのあるひのきで、
木材に加工してもらいました。
次第に切りにくくなっているのを
目の当たりにして理由がわかったようです。
私自身、アテという言葉自体を知らなかったので
勉強になりました。
自然に生えている木なら、
多少なり曲がっててもおかしくないですよね。
建築や家具に使われる木材に
アテのあるものは使えないので、
確保が難しそうと感じました。
一時期のウッドショックのニュースを思い出しました。
「木だって生きてる」
改めて気付かされました。