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センター試験の苦い思い出【送り火】堀江敏幸著

「検索結果に出てくるのは、センター試験ばかり。
この本、ホントにあるの?」
そう疑問に思ったくらいです。

メロディアスライブラリー2023.1.15放送。


よく調べたら『雪沼とその周辺』という本に
収録されてる短編でした。
センター試験の年を見ると
「あれ、私が受けた年?」と気づきました。

私が大学に入ったのが2007年。
2007年のセンター試験出題とありました。
当時、国語は苦戦していたのもあり、
失点を最小限にすることだけで精一杯。
残念ながら記憶にありません。

読んで気づいたのは、
登場人物に対して「さん付け」でした。
唯一の例外は息子の由(ゆい)ぐらいでしょう。
著者が語り手になっているような文体でした。


・2つの灯り

この話には2つの灯りが出てきます。
1つは由の自転車のライト、
2つ目は絹代さんが集めてた灯油ランプです。

由は小学2年生の時に
自転車を押して近くの川に向かいました。
その時は大雨が降っており、道路は冠水。
マンホールの蓋があいているのに気付かず、
飲み込まれてしまいました。

生前由は、自転車屋の冨田さんと親しかったです。
彼からパンクの交換を習いました。
自転車のライトは漕ぐと点灯するタイプと
電源を入れるタイプがありました。

由は「電源を入れるタイプがいい」と言ったが、
冨田さんは漕ぐタイプを勧めました。
「もし電源を入れるタイプの自転車なら、
誰かが見つけて「家に戻った方がいいよ」と言ってもらえたかもしれない」と彼は悔いました。

もう一つの灯りは灯油ランプです。
絹代さんは、陽平さんと結婚する前から収集。
集めているものの、実際に火を灯していません。

「手持ちのランプに全部火を灯して、
権現山から眺めよう」と絹代さんは提案しました。陽平さんは最初あまり気の乗らない様子のでしたが、最終的には火を灯して、権現山から眺めました。

・送り火とは

今まで火を灯そうとしなかった絹代さん。
手持ちの灯油ランプに火を灯しました。
1人息子由の13回忌ということで
「送り出してるのは息子」と気づきました。

由が使ってた自転車の灯とリンクしました。

・感想

「なぜセンター試験で話題になってるのか」
調べたら、当時、著者が大学で試験官をやっていたそうです。著者本人が試験官をやっているのは不思議な状態だったのでしょう。

現在、早稲田大学の教授で
芥川賞の審査員もやっています。
先日、芥川賞の選評を読んだのに、
堀江さんの存在に気づきませんでした。

『送り火』だけでなく、
他の短編も「道具」が出てきます。
習字で使う墨が何からできているか、
自転車のライトの仕組みがどうなっているか、
説明されてました。

ラジオ放送内で、測量士が持ってた小さなノートについて質問したエピソードが紹介。
「好奇心旺盛な人だなぁ」と感じました。

人間模様に注目するのもいいけど、
登場する「道具」に注目するのも面白い作品でした。

以上、ちえでした。
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