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ビジョン浸透のために必要な6つのこと~TBSグロウディア組織開発日記#7 

「問いのデザイン」という本に出会ったのは、ビジョンの検討がスタートし、約3か月たった2021年の年明けのことでした。


パーパス浸透のワークショップ

サブタイトルは、「創造的対話のファシリテーション」。2012年くらいからファシリテーションに興味を持ち、実践はしていたものの、やればやるほどその難しさを実感していた自分にとっては、興味関心のど真ん中といってもよい本でした。


豊富な事例をもとに書かれた実践的かつロジカルな内容で、これまで自分の中で行き詰まっていた手法に、いくつもの素晴らしい「解」を与えてくれるようでした。
著者のおひとりは安斎勇樹さんといってMIMIGURI(ミミグリ)という組織コンサルの代表を務める方。驚いたのは自分よりふたまわり以上若い。世の中にはたいした若者がいるもんだなあと感心した次第です。

中でも目をひいたのが、本書中で紹介されている「資生堂のビジョン浸透のワークショップ」の事例です。せっかくビジョンを定めても、浸透し、皆の行動が変わり、組織が変わっていかなくては意味がない。ビジョンを定めた後の次なる「打ち手」として、こうした全社的ワークショップこそ、我々がやるべき取り組みなのではないか。

さっそくMIMIGURIさんにコンタクトをとり、ビジョンが定まる2か月前の2021年2月、私たちとMIMIGURIさんの打ち合わせがスタートしました。

社員エバンジェリスト誕生

当社のビジョン(パーパス・ビジョン・バリュー・グロウディズム=行動規範)を発表したのが2021年4月1日の社員集会。すでに何度か打ち合わせを重ねていたMIMIGURIさんから、ワークショップの概要が提案されたのも、その頃だったと思います。その内容はともかく、驚いたのは「ワークショップのファシリテーターは、社員が行う」というアイディアでした。
 
6月1日のプロジェクト辞令で、各事業本部からの推薦で選ばれたファシリテーターが確定しました。彼ら彼女たちはエバンジェリスト(伝道師)と呼ばれ、その後足掛け2か月間に、MIMIGURIスタッフからの数回にわたる研修を受けました。こうして本番に向けた準備が本格化します。
 
そしていよいよ2021年8月に、TBSグロウディアの「パーパス浸透ワークショップ」がスタート。一回あたり20人程の参加で全30回、全社員550人が対象です。20人のエバンジェリスト達が交代で進行しました。

その内容は、オンライン上にバーチャルでできた空間の中で、自分たちが、わくわくしたり楽しいと感じたりする瞬間をイメージするイラストを切り貼りしてシェアしたり、TBSグロウディアのパーパス「楽しさや感動、わくわく感を届け、人々の免疫力を上げる」という言葉を、自分たちの「言葉」に置き換えてみる、といった楽しく遊び心に富んだものでした。
 
会社のパーパスを自分の価値観に置き換え、ワークで手触り感を得ることで、漠然としていたものが、なんとなく「こういうことか」と腹落ちをしていく。

合併会社ということもあり、参加メンバーには初対面同士の社員も多かったのですが、一緒に手を動かすプロセスを共有したことで、相互理解にもつながりました。
また、選抜エバンジェリスト達によるファシリテーションは、正直ぎこちないものではありましたが、かえってそれが参加者にも安心感を与え、皆で作り上げる手作り感満載の、優しい「イベント」となりました。
 
詳細は、MIMIGURIさんのサイトでも紹介されていますが、全社員参加の新会社最初のワークとしては、とても有意義なものになったと思います。
 
さらにその後、半年位をかけて、「ビジョン策定」のプロセスに参加していない社員を対象に、ビジョン(パーパス、ビジョン、バリュー、グロウディズム)の「腹落ち」を目的とした対話形式の研修を行いました。

ビジョン浸透に必要なこと

この約4年間にわたるさまざまな取り組みの実体験をもとに、「ビジョンの浸透」に必要かつ効果的なことを、あらためて整理すると、以下の6つが挙げられます。

① リーダー層の率先垂範
言ってることとやってることが違うリーダーは誰からも信用されません。当社でいえば、「異論をひきだそう」とか「笑いをおこそう」とか言ってるのに、会議中ムッツリして威圧的だったりするリーダーは受け入れられません。(笑いをおこそうとして、スベるのはよし。でもおじさんギャグの押しつけは「ギャグハラ」に認定される恐れがあります。)

②    システムへの組み込み
わかりやすくいえば、「評価の基準にする」ということです。このあたりは、八木洋介さんから「伝授」されました。(と、僕は勝手に思ってます。)
また、先にご紹介した「グロウディアずかん」も、「情報とナレッジを共有しよう」という当社の行動規範、グロウディズムを推進するシステムといえるでしょう。

③  策定プロセスへの巻き込み
いわゆる参加型意思決定の規模がでかいやつです。策定プロセスに参加したかしないかで、腹落ちのスピードや深度が全く違います。当社の策定プロセスには分科会まで含めれば150人くらい参加しましたが、今思えばもっと参加してもらってもよかったなあ、と思うくらいです。

④  研修やワークショップ
MIMIGURIさんによるワークショップのほか、先ほど述べた全社的研修は、その後何度かのブラッシュアップをへて、今でも「グロウディズム研修」として新人やキャリアの社員、グループ内の出向社員を対象に行っています。

⑤ アワードやイベント
最初にこのコラムでご紹介した「OITアワード」は、当社のバリュー「リーダーシップ」「未来志向とユーモア」はもちろん、あらゆるグロウディズムの体現を推進するイベントに育ちました。「貪欲に学ぼう」の実践としては、不定期に「読書会」を開催。

また昨年より「フィードバック・イズ・ア・ギフト」の啓蒙として「フィードバック大賞」も実施しています。これもなかなか盛り上がったので、いずれこのコラムでご紹介できればと思っています。

新入社員と役員(2022年当時)による社内ポスター

⑥ ポスター社内掲示などの啓蒙
ポスターやグッズなどを作ることは、日々の業務に忙殺されている社員の皆さんにとって、一定のリマインド効果は確実にあります。可能であれば、そういうモノを作るプロセス自体に大勢を巻き込むこと。たとえば若手社員から、遊び心があってデザイン的にイケてるアイディアが出てくるなどすれば、最高です。

 
以上、試行錯誤を重ねながら、ビジョン(パーパス、ビジョン、バリュー、グロウディズム)を組織に浸透させる取り組みを継続しています。
さらに、それをそれぞれの事業ごとの戦略目標に落とし込み実行につなげるため、導入したのが、OKRという枠組みなのです。


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