Chatter(チャッター)
①「内省の研究」によって明らかになったこと
内省とは「自分自身の思考や感情へ積極的に注意を向けること」を意味するに過ぎない。
これを行う能力のおかげで、想像し、思い出し、反省し、それから、これらの想念を利用して問題を解決し、イノベーションを起こし、創造することができる。
しかし、近年多くの研究によって、「苦痛を感じているときに内省を実行しても有害無益である」ことが明らかになっている。
それは、仕事のパフォーマンスを低下させ、適切な判断を下す能力を阻害し、体調悪化のリスクを高めたりすることもある。
それが、チャッター(頭の中のしゃべり声)である。
チャッターを構成するのは、「循環するネガティブな思考と感情」だ。
私たちは仕事での失敗や恋人との諍いについて考え、最後には否定的な感情で頭の中がいっぱいになってしまう。
それから、再びそのことを考える。
更にまたしても考える。
私たちは内省によって「内なるコーチ」に助けを求めようとするが、それに代わって「内なる批判者」に出くわすのだ。
苦しんでいるときに「内面へ向かい」、現状について考えようとする人々の試みが、時に成功し、時に失敗するのはなぜだろうか?
その答えは、意識生活におけるもっとも重要な会話の一つの本性を変えることにかかっている。
その会話とは、私たちが自分自身とかわす会話である。
②問題からズームアウトする
精神をレンズに、内なる声をズームインあるいはズームアウトのボタンになぞらえてみるといい。
チャッターは私たちが何かにズームインするときに起きる現象であり、感情を煽り立てることによって、私たちの頭を冷やしてくれるかもしれない別の考え方を軒並みに排除してしまう。
こうして極端に狭くなった視野は、苦難を増大させ、内なる声のネガティブな側面を強化する。
ここで注意して欲しいのは、ズームアウトは問題から逃げることではない。
ズームアウトした視点(俯瞰的)から問題を捉えるという意味だ。
ズームアウトすることにより、私たちが出会う最もチャッターを誘発しやすい状況、すなわち不確実性を伴い、知恵が必要となる状況について、私たちは賢明に考えられるようになることも明らかになっている。
ズームアウトする際のポイントとして、「第三者視点」で「自分の名前を呼び」、「第三者として自分と会話」することだ。
たとえば、大切な人が他人のクレジットカードをこっそり使ってしまうといった罪を犯すところを目撃した後で、警察官に何か見なかったかと尋ねられたとする。
どうすべきかについて被験者が自分の名前を用いて考えた場合(たとえば「この決断を下すとき、太郎はどんな事実を考慮する?」)、警察官に重大な犯罪を報告する傾向が高かったのだ。
自分の名前を口にして気持ちを落ち着かせることに関して何よりも興味深いのは、それが実に簡単だということだ。
③その他自分だけで実践できるツール
「時間軸で見る」
研究によれば、人々が困難に遭遇しているとき、その翌日ではなく10年後にそれについてどう感じるかを想像することは、自らの経験を広い視野で見るための極めて有効なもう一つの方法だという。
そうすることで、人は自分の経験が一時的なものに過ぎないと理解する。
「経験の一般化」
自分が経験していることは自分だけでなく誰もが経験する。
こうした経験は不愉快だが人生にはつきものだ。
ということを知れば、大きな慰めになる。
「経験は試練」
チャッターが始まるのは、ある状況を脅威と解釈したときが多い。
内なる声を補助するために、現状を再解釈し、克服できる試練として捉えなおそう。
『まとめ』
苦痛を感じているときに内省を実行しても有害無益である。
なぜなら、苦痛を感じているときは視野が狭く、苦難を増大させ、内なる声のネガティブな側面を強化する。
よって、苦痛(ネガティブ)の状況を回避(脱却)し、内省することが必要。