仕事と家事の両立に悩んだら…おすすめ食の本④
テレビでよくお見かけした、今は亡き小林カツ代さん。ハキハキと喋り、チャキチャキと動きながら料理を作る姿を、思い出す人も多いのではないでしょうか。
子育てをしながら、テレビに出てはレシピを考案し、執筆もする…そんな多忙な日々を過ごし、睡眠時間もほとんど取れなかったという小林さん。
そんな小林カツ代さんが考案するレシピのテーマは、ずばり‘’とにかく簡単で手早く作れるもの‘’でした。
自身が仕事と家事の両立に悩んでいたからこそ生まれたレシピが、たくさんあります。どうしたら、ラクに毎日ご飯を作ることができるか、忙しい母や働く女性の力になれるか…そんなことを常に思いながら、レシピを考えていたそうです。
私が持っている3冊の中でも、一番小林さんの料理に対する哲学が込められ、感動したのが「食の思想」(河出書房新社)。
本が付箋だらけになりました。読むだけで、「そんなに料理に力を入れなくてもいいんだ」と、肩の荷がストンストンと、おりました。料理に、~ねばならない、なんてことはない!と、潔くキッパリとカツ代節が散りばめられています。
例えば、青菜を茹でるなら、彩りよくするために、塩を入れて冷水に取るのが基本ですが、小林さんは、それをやらなくてもやっても味は変わらない。それなら、ラクなほうがいいわよと、料理研究家ならぬ発言をビシバシ飛ばすから面白い。最高です。
こちらは、小林さんが亡くなられた後に出版されたもので、レシピも掲載されたエッセイ本。面白いのは、小林さんの弟子が、テーマごとに綴られたエッセイの裏話や思い出が綴られているところです。
表舞台では見れない、小林さんの一面が描かれ、クスッと笑いつつも、じんわりする一冊です。
カラー写真付きレシピと、そのレシピが生まれた背景が描かれたのが、こちら。家族との思い出や、奮闘しながら誕生したレシピ話が、リアルに胸に迫ってきます。
当たり前ですが、小林さんも一人の母だったんだ…そんなことを感じました。特に最後の文章では、「みんなが寝静まった後に一人で飲むコーヒータイムが至福のひととき」と言って、母でもなく妻でもなく、一人の女性として、葛藤しながら生きる素直な思いが綴られていて、単純にすごいなぁと思う尊敬の念と、仕事への情熱と強さ、そして愛を感じ、涙が出そうになりました。
多忙で料理がしんどい…それなら、小林カツ代さんの処方箋を受け取ってみてはどうでしょう。難しく考えず、適当でいいんだよと、背中を押してくれます。あの、とびきりの笑顔と、チャキチャキな小林節で…