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子供のためのルーブル美術館(46)スーパースターの誕生/よみがえった白のピエロ・ワトー

パリの劇場げきじょうにスター誕生たんじょう

今から300年前、劇団げきだんコメディ・イタリアンがつくったげきに、ピエロ、という名前なまえのキャラクターがまれました。

コメディイタリアンの舞台挨拶

やさしくて純粋じゅんすいでおとなしい性格せいかくのピエロは、みんなにどんなにわらわれても、なにを言われても、舞台ぶたいでまっすぐったまま。それがまたおもしろくて、大変たいへん人気者にんきものでした。


画家がかのワトーは、そんなピエロが大好だいすきでしたから、たくさんのピエロのきました。

ピエロの衣装いしょうはいつもこれです。
しろいフリルのえりあたらしいしろなスーツにしたまでつづくしろいボタン。

あたまうえにはしろ帽子ぼうししろくつむすんだおおきなリボンはピンク色です。

いつもわるだくみをかんがえているロバにったクリスパンや、ギザギザかんむりの皮肉笑ひにくわらいの神様かみさまモーモス。
舞台ぶたいてくるキャラクターたちは、うごけないでのようにっているだけのしろいピエロをわらっているみたいです。


ワトーは、ピエロのさびしそうな背中せなかいたり

みんなにはさまれて窮屈きゅうくつそうでこまっているピエロもきました。


ときがたって、こんなキャラクターの白いピエロはパリの舞台ぶたいからすっかりわすれられてしまいましたが、ワトーのピエロのからインスピレーションをけた画家がかたちがいました。


フラゴナールもそのひとり。ワトーが大好だいすきなフラゴナールは子供こどものピエロをきました。可愛かわいいね。


300年前のワトーの白いピエロは、時代じだいえて、ドランやピカソ、そして現代げんだい画家がかたちにもかれたのです。


ピエロは相変あいかわらずしゃべらないけど、なかではずっときているのですね。


ANTOINE WATTEAU
Pierrot, dit autrefois le Gilles Vers 1719
アントワン・ワトー
ピエロ 1719

ルーヴル美術館のピエロは非常に謎めいた絵画である。その制作の経緯は不明であり主題の解釈も難しい。具体的な証拠はないがこの作品はピエロを専門に演じた元俳優が経営していたカフェの看板だったのではないか、あるいはテアトル・ド・ラ・フォワールのショーの広告だったのではないかと言われている。
この絵がワトーの作品であることに異論が出ることもあり、大判であることが他の作品と一線を画しているのは事実である。しかし、ピエロの正面からの左右対称の構図と矢のようにまっすぐな姿勢はワトーの創作である可能性が高い。この構図には、ファウンの頭の彫刻やピエロのキャラクターと一緒にクリスピンのキャラクターを描くという意外な選択など、ワトーの他の作品にも見られるユニークな要素が含まれている。作風と作品の卓越した質の両方が、ワトーの作品であることを裏付けている。

musée du louvre 

ANTOINE WATTEAU
Les Comédiens italiens Vers 1720  
Washington, National Gallery of Art,  ルーブル美術館ワトー・ピエロ企画展
イタリアの喜劇役者 1720

ワトーは生涯の終わりにロンドンに滞在していた時この絵を描いた。当時、コメディ・フランセーズが1719年にフォワール劇場(見せ物小屋)で上演禁止処分を受けた後、多くのフランス人俳優がイギリスに亡命していた。ワトーが舞台に集めた滑稽な登場人物の中に、2人のスターを見出すことができる:中央のピエロと、左下の皮肉の神モーモス

musée du louvre 

JEAN HONORÉ FRAGONARD
L'Enfant en Pierrot Vers 1780-1785  
Londres, The Wallace Collection   ルーブル美術館ワトー・ピエロ企画展
ジャンオノレ・フラゴナール
ピエロの少年 1780〜1785

18世紀末には、ピエロのキャラクターは子供向けの操り人形劇と関連付けられることが多かった。この絵画はその傾向を反映しているが同時に、フラゴナールが敬愛していたワトーのコミカルな世界へのオマージュでもある。

musée du louvre 

ANDRÉ DERAIN(1880-1954)
Arlequin et Pierrot Vers 1924  参考
ピカソの白いピエロ、ポール 参考↓

 お読みいただきありがとうございました。
ワトーの代表作ピエロは修復を終えて2年ぶりに先週公開されました。くすんで黄色く変色したピエロの衣装が輝くばかりの白によみがえりました。
元々大きい作品ですがトリミングの形跡があり昔の額装で折り込んであった絵の端を引き出して、幅が6cm広がってのお披露目でした。 
ワトーのピエロは哀愁を帯びたちょっとさびしがりやのキャラクターでしたが、のちにピエロは絵画だけでなく、マルセル・マルソーのパントマイム、映画、天国と地獄など、演劇や映画の世界でもアーティストのインスピレーションの源となり様々な解釈がされました。

参考 修復

修復中 蘇る元の白
折り込んで釘打ちしてあった本絵部分
ピエロの展示会場 大型の作品ピエロ
ピエロパントマイムの元祖Charles Deburau (1829-1873)
 驚き  1854-1855   Photo Nadar


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