子供のためのルーブル美術館(149)スーパースターの誕生/よみがえった白のピエロ・ワトー
パリの劇場にスター誕生
今から300年前、劇団コメディ・イタリアンが作った劇に、ピエロ、という名前のキャラクターが生まれました。
優しくて純粋でおとなしい性格のピエロは、みんなにどんなに笑われても、何を言われても、舞台でまっすぐ立ったまま。それがまたおもしろくて、大変な人気者でした。
画家のワトーは、そんなピエロが大好きでしたから、たくさんのピエロの絵を描きました。
ピエロの衣装はいつもこれです。
白いフリルの襟、新しい真っ白なスーツに下までつづく白いボタン。
頭の上には白の帽子、白い靴に結んだ大きなリボンはピンク色です。
いつも悪だくみを考えているロバに乗ったクリスパンや、ギザギザかんむりの皮肉笑いの神様モーモス。
舞台に出てくるキャラクターたちは、動けないで矢のように立っているだけの白いピエロを笑っているみたいです。
ワトーは、ピエロのさびしそうな背中を描いたり
みんなにはさまれて窮屈そうで困っているピエロも描きました。
時がたって、こんなキャラクターの白いピエロはパリの舞台からすっかり忘れられてしまいましたが、ワトーのピエロの絵からインスピレーションを受けた画家たちがいました。
フラゴナールもそのひとり。ワトーが大好きなフラゴナールは子供のピエロを描きました。可愛いね。
300年前のワトーの白いピエロは、時代を超えて、ドランやピカソ、そして現代の画家たちにも描かれたのです。
ピエロは相変わらずしゃべらないけど、絵の中ではずっと生きているのですね。
ANTOINE WATTEAU
Pierrot, dit autrefois le Gilles Vers 1719
アントワン・ワトー
ピエロ 1719
ANTOINE WATTEAU
Les Comédiens italiens Vers 1720
Washington, National Gallery of Art, ルーブル美術館ワトー・ピエロ企画展
イタリアの喜劇役者 1720
JEAN HONORÉ FRAGONARD
L'Enfant en Pierrot Vers 1780-1785
Londres, The Wallace Collection ルーブル美術館ワトー・ピエロ企画展
ジャンオノレ・フラゴナール
ピエロの少年 1780〜1785
ANDRÉ DERAIN(1880-1954)
Arlequin et Pierrot Vers 1924 参考
ピカソの白いピエロ、ポール 参考↓
お読みいただきありがとうございました。
ワトーの代表作ピエロは修復を終えて2年ぶりに先週公開されました。くすんで黄色く変色したピエロの衣装が輝くばかりの白によみがえりました。
元々大きい作品ですがトリミングの形跡があり昔の額装で折り込んであった絵の端を引き出して、幅が6cm広がってのお披露目でした。
ワトーのピエロは哀愁を帯びたちょっとさびしがりやのキャラクターでしたが、のちにピエロは絵画だけでなく、マルセル・マルソーのパントマイム、映画、天国と地獄など、演劇や映画の世界でもアーティストのインスピレーションの源となり様々な解釈がされました。
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