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◇ 誰かの物語

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僕がnoteで出会った、素敵だと思う方の巡礼の記録をまとめています。
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記事一覧

和歌山・南紀地方で「旅」をしよう。

「旅行と旅は意味が違う。」 旅好き界隈での常套句です。 旅行という言葉には、いわゆる昭和が生んだ「消費型」の空間的移動の意を持っています。何ヶ月も前に準備を始めて、せっかく旅に行くのだから、と一分一秒無駄なく工程を組むべく観光ガイドを読みあさり、インターネットを調べ尽くす。タビマエにこれほどかと時間を費やし、タビアトにはかえって疲労感の残る週末となってしまう。「しばらく旅はいいね...」となってしまうことも。 これを面倒に感じるようになった人々は「パックツアー」を選ぶよう

私が星の旅人だった頃

発熱で丸2日寝込んだ。 しかし寝返りを打てないほどに痛む身体より、放り投げてきた山のようなタスクを思い出すことの方が苦しかった。 徐々に引いていく熱に代わって、もう出社したくない...という思いがどんどん自分を蝕む。 「会社に行きたくない、月曜日までにどうにかして地球が滅亡しますように」と心から祈った。 人生の大半を費やす仕事に全力であることは「善く生きること」だとされている。もはや「人生≒仕事」であるという思想を目にしない日などなく、自己啓発本、電車の吊り広告、SNSや動

紀伊路⑤国の境 ムラの境(山中渓〜布施屋)

仇討ちも事故も押し付け合い  5月はじめ、JR紀勢線の山中渓駅におりると、燃えるような新緑の山峡にウグイスの声が響いていた。峠道を走るランナーが5人おりたが、コロナのせいか観光客の姿はない。  駅前から峠に向かう県道を歩くと、ロードレーサーに次々に追い抜かれる。山中関所跡は石碑が倒れている。南北朝時代から関所だったが、江戸時代に廃止されたという。  並行する阪和自動車道やJR紀勢線は何度も往復した。県境の山は数分で通過していた。自分の足で歩くと、昔の国を分ける峠は大きく立ち

妄想トラベル ~熊野詣の旅 DAY1~

なかなか遠出しにくい今日このごろ、そのうっぷんを晴らすため、憧れの地を脳内旅行してみたいと思います。 皆さんもぜひ、ご自宅からお茶を飲みながらトリップしてみてください。そして、おすすめのお店やポイントがあれば、ぜひ教えてください。 今回の旅の目的である熊野詣とは「熊野本宮大社」、「熊野速玉大社」、「熊野那智大社」の熊野三山を参拝することをいい、平安時代に当時の上皇や法王の間で流行し、その後武士や庶民にまで広がっていきました。 今回は、かつて皇族も使った、京都〜大阪〜紀伊路〜

春のカミーノ① 〜Girls Just Want To Have Fun

2019年5月16日、早朝4時35分。 熊野名産の皆地笠(みなちがさ)に、お揃いのヤタガラスTシャツを着た私たち3人は、パリ・シャルル=ド=ゴール空港に降り立った。世界中からありとあらゆる変わった人たちが訪れる、花の都パリでは、我々のこの恰好もさほど目立たないはず……と思っていたが、じろじろ見ている人は結構いた。スマホで写真を撮ってる人もいた。 まあ、そんなことを気にしてるのは私だけで、Miwakoもさくらちゃんもスーツケースを引いてウキウキと歩いていた。その姿は、まった

【夫婦巡礼】無職の夫婦が800km歩いてお店を出す話【旅物語】①

こんにちは!おぐてらです。 本日雨模様。都内は閑散。時間はたっぷり。このブログでは、2019年に妻と二人でスペイン巡礼の旅に出てから、都内でお店を出すまでのお話を、日記をもとに振り返って綴ります。自粛の合間のひま潰しにお付き合い頂けたら嬉しいです。 --------------------------------------------------------------- ■プロローグ ~街へと向かう車内で 東京 羽田空港から15時間 パリ市内から夜行バスで12時