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【夫婦巡礼】無職の夫婦が800km歩いてお店を出す話【旅物語】①

こんにちは!おぐてらです。

本日雨模様。都内は閑散。時間はたっぷり。このブログでは、2019年に妻と二人でスペイン巡礼の旅に出てから、都内でお店を出すまでのお話を、日記をもとに振り返って綴ります。自粛の合間のひま潰しにお付き合い頂けたら嬉しいです。

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■プロローグ ~街へと向かう車内で

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東京 羽田空港から15時間

パリ市内から夜行バスで12時間

そしてバイヨンヌから鉄道で1時間

ほとんど丸一日と言う時間を費やして、僕達はいよいよ夢にまで見た街へ辿り着こうとしている。

季節は春。

列車の窓から見える風景は、僕の故郷千葉に負けず劣らず穏やかで美しかった。

木々は新緑に輝き、地にはたくさんのタンポポが咲いている。

羊や牛はのんびり草を食み

遠くになだらかな山々が優しい曲線を描く

見上げれば空は真っ青で、もくもくの雲がポツポツ浮かんでいる。

今まさに旅を始めようとする僕達の眼前にはこれ以上無い景色が広がっていた。

慣れない旅の移動に疲れたのか、隣で寝息を立てる妻を横に、一人物思いに耽っている。

■夢と現実

思えば、ここまで長かったなぁ。

4年前に映画「星の旅人たち」を見て、初めてこの道の存在を知った。一目惚れだった。

いつかこの道を歩いてやろう

そう心に決めていた。

しかし現実は厳しい。この夢の実現には、多くの壁を乗り越えなければならなかった。

仕事を辞めるタイミング

結婚するタイミング

独立開業するタイミング

色んなしがらみを意識すればするほど、なかなか計画は進まない。周りからの声に、

「もう、行かなくても良いかな…」と

諦めかけたことさえあった。

学生時代、あるいは20代の前半には、「良いや!行っちゃえ!」と勢いで飛び出せていた冒険の旅は、気が付けば色んな見えない【何か】に縛られて、簡単に出来ないものになっていた。

それがどうしようもなく寂しく、

でもこれが大人になっていくことなのかと、

ある種の割り切ったような感情で自分を納得させようとしていた。

■背中を押した妻の一言

そんな燻っていた僕を突き動かしたのは、他でもない妻だった。

「サンティアゴ、行っちゃおうよ!」

なかなか首を縦に振らなかった妻が唐突に賛成してくれたのは、彼女が30代を迎えた最初の日だったので、とてもよく覚えている。

周りにはたくさん心配されたけど

周りが納得するような答えではないかもしれないけれど

妻が一緒に旅をしてくれる。

そのおかげで、ようやく僕は前に進むことが出来た。

だからこそ、良い旅にしたい。

楽しく、安全に、実りある旅にしたい。

■巡礼の定番の質問

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「君は、なぜ歩くのか?」

僕達は、なぜ歩くのだろう?

日本にいるときから考え続けていた。

僕はこの旅で、妻と

そして自分の人生と向き合いたいと考えた。

これまで僕はサラリーマンとして

会社や組織に貢献する為に働き生きてきた。

そして、これからはそれを辞めて

独立して生きていこうとしている。

そんな自分は、誰のために、何のために生きれば良いと言うのだろう?

自分のやりたいことを見つけたいと思った。

周りの声に惑わされることなく。

「俺は!こうやって生きていくんだ!」

そう断言できる何かをこの旅で見つけたいと思っている。そしてもちろん、妻と二人でどう生きていくか、と言うことも。

■始まりの街へ

次々と現れては流れ過ぎていくフランスの牧歌的な風景を眺めながらそんなことを考えていると、やがて列車は終着点へと辿り着いた。

およそ800kmに及ぶ巡礼の、始まりの街。

サン=ジャン=ピエ=ド=ポー(Saint-Jean-Pied-de-Port)への到着を告げるアナウンスが、車内に響いた。

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映画「星の旅人」では、主人公のトムが巡礼の途中で亡くなってしまった息子を想い巡礼の道を旅する。

その出発点となるこの街は、どこか暗い雰囲気を漂わせていたように感じた。

けれど実際のところ、僕達が降り立ったそこは

色鮮やかな花が咲き、穏やかな時の流れのなかで巡礼者達の前途を祝しているかのような明るい景色であった。

「お花が綺麗だねぇ」

そう言いながら、起きたばかりの妻がニコッと笑う。

あぁ、来て良かった。良い旅になりそうだ。

そんなことを思いながら、僕達は石畳の道を

巡礼者達が集まる中心街へと向かって歩いていった。

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