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恋とか愛とかやさしさなら| 身近な人の感想を聞くのは少し怖い


『光のとこにいてね』がとても好みだったので、この新作が出ると知ってすぐに書店へ向かい、そして一気に読み切った

一穂ミチさんの単行本の装丁がいつも好きで
毎回手に取ったときに気持ちが高揚する

そして、今回はなんと初回配布本限定でカバー裏に書き下ろしショートが収録されていて、その特別感に思わずおっ!と声が出た(クリア栞も嬉しかった)

いつも本を手に取る感動をありがとうございます

そしてつぎに目次で驚く

本著は『恋とか愛とかやさしさなら』が題名だが、目次はいたってシンプルにこうなっている

恋とか愛とかやさしさなら  
恋とか愛とかやさしさより    

目次より

「なら」と「より」の二文字で
ますます読み進めるのが楽しみになった

物語は5年付き合った彼氏にプロポーズされた翌朝、その恋人が通勤電車で女子高生を盗撮して警察に捕まるところから始まる

信じるとは?許すとは?愛するとは?

何かが起きたとき
その前後で全く変わってしまう世界

揺らぐ、途方に暮れる、割り切れない、夢かもしれない、戻りたい、やり直したい、夢であってほしい、許さないでも許せないでもなくわからなくてわかれないから進めない、わかりたくない

それまでの人生はなかったかのように
ある日を起点に人生が書き換わり、そこから枝分かれしたルートは全部その日につながってしまう

以前、別の著者の何かの作品で
「人には人の地獄がある」
という文章を読んだことがあったけど
まさにその通りというか、登場人物全員の地獄を見せられた気分だった

同じ経験はないし同じ感情になったこともないと思っているけど、でもなぜか少し分かるような気もして、もう忘れていたかさぶたを剥がされたような気持ちになった

私だったらどうするかは考えても到底考えがつかず、ただ、どの登場人物の言動にも、どこか共感できるような部分があって、共感してる自分を少し後ろめたく感じたりして、胸がちくちく、ずーーーんと痛む

この本は自分には重かった
たまにその重たさにえずきそうになったけど、
読むのを止められなかった

最後に、一穂ミチさんの作品は
主人公が珍しい名前であることが多い気がする

まわりの登場人物はどこかで聞いたことがある名前の一方で、主人公は特徴的な名前

だから自分の中で、現実のほかの誰かとの思い出や記憶と交わることがなく、どこか違う世界線で事実として起こっている出来事に触れた、そんな感覚になる

今回もそうだ

どこかで本当にある話?ありそうな話?
あるかもしれない話?明日は我が身?
そんなことを思いながら読了

近しい人の感想を聞くのはちょっと怖い
自分にも自分の知らないブラックボックスがあるかもと思うと落ち着かない
でも、ほかの誰かは何を感じたのか感想をこっそり覗きたい
最後はそんな気持ちになりました


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