散文と韻文の教科書
日本時間午後4時。今日も横浜の実家からイタリアにいるアンドレアとZoomを繋ぐ。noteのとある記事を画面共有して、僕は言った。
「見てこれ(↓)。3月の、kaekoikさんの記事!」
※この記事(上のリンクの記事ではなく、今あなたが読もうとしてくださっているこの文章)は、日本人の僕とイタリア人の友人アンドレアがイタリア語で交わした会話を、日本語に訳したものです。
ほぼ会話のみで構成されているので、どちらの発言であるかを明確にするため、僕の台詞にはL、アンドレアの台詞にはAを、「」の前に付けてお送りしたいと思います。
L「本題に入る前に言っておきたいことがあるんだけどさ、記事の冒頭に『伊勢物語』って書いてあるじゃん。僕、昨日この本買ったんだよ」
A「へぇ... でも、昔の日本語で書かれてるんだろ。読めるのか?」
L「僕もそう思って、とりあえず立ち読みしに本屋へ行ったの。いつも僕がイタリアに持っていく ちっちゃい本*あるじゃん? 原典のそれ(岩波文庫)を見つけたんだけど、すげぇ薄かったんだ。だから、あぁこれくらいなら楽勝だな、と思って一応中身を確認したら、全然読めねぇの。それで、別の出版社(角川ソフィア文庫)の、現代日本語訳+解説付き抜粋バージョンを買ったんだよ」
*文庫本のことです。
A「それでも読めなかったんだろw」
L「...読めたよ」
A「おもしろかった?」
L「うん... 構成が」
A「...やっぱり読めなかったんじゃないか」
L「読めたってば!」
A「じゃぁどんな話なの?」
L「それは... kaekoikさんの記事を読めばわかるよ」
A「..."『伊勢物語』は、和歌にまつわる説話を集めた物語。主人公の恋愛や友情をテーマとする短編集" ... なるほど、君の苦手分野だね。でも、”友情” はわかるだろ?」
L「うん。でも、抜粋してるからかもしれないけど、明らかに恋愛っぽいほうが多いと思うんだよね。あと、たぶん主人公が不特定多数の女の子とつきあってて、浮気とか不倫とかもしてて、女の子をないがしろにしたりしてる。だけど、けっこう勉強になることが多いんだよ。歌を詠むときの参考例みたいなのがいっぱい載ってて... 例えば、 記事に『東下り』の解説が載ってるだろ。各句の頭に、五文字の言葉の一文字ずつをおいて歌を詠むのって、あいうえお作文みたいだな、って思ったんだけど、これ、”折句” っていう、ちゃんとした名前がついてるんだよ。これだったら僕でもできそう」
A「でも、掛詞や枕詞も使われてる、って書いてあるよ。そういうのと組み合わせているから名歌になるんじゃないのか」
L「まぁ、ね。枕詞はネットで調べればとりあえず何とかなるけど、掛詞が難しいんだよなぁ」
A「この歌、『古文修辞のカタログのような歌』と形容されているね。そういう歌がたくさん載っている物語なら、記事にも書いてあるけど、ストーリーを楽しみながら歌についても色々学べそう。 いい作品を紹介してもらえてよかったね」
L「うん。お前もさ、気に入ると思うんだよ。主人公がなんとなくお前っぽいから感情移入できるだろうし。イタリア語でも出版されてるみたいだから、再来月、一緒に本屋へ行って探してみない?」
A「それはいいけど... 前半どういう意味?」
L「さぁ? ...お、まだ続きがある。『こぼれ話』...あっ、和菓子だ! やっぱりkaekoikさんといえば和菓子だよね。和菓子屋の前を通るたびにkaekoikさんのこと思い出すもん」
A「この和菓子、覚えてるよ。懐かしいなぁ。”かきつばた” って、この花の名前なんだ。”5000円札の裏に印刷されてる” って書いてある。君の5000円札見せてよ」
L「...今、5000円札持ってない」
A「財布の中身見せて」
L「なんで?」
A「いいから」
L「...わかったよ」
A「...紙幣が1枚も入ってないじゃないか。金を持たずに外出するなって何度言ったら分かるんだ」
L「持ってるよ! 327円! 硬貨をばかにすんな」
A「明日金を降ろしに行け。君は4月になったらたくさん遠足に行くんだから、ちゃんと準備しておかないとダメだろ」
L「...4月まであと1か月もあるし、言い方がなんかムカつく」
※トップ画像の花は、"花菖蒲" かと思われます。フリー素材の中に "かきつばた" がありませんでした...