体の構成成分
「ちょっと夕飯食べ過ぎた...腹いっぱいで頭働かないから、今日はもうのんびり雑談しようよ」
日本時間午後7時。イタリアにいるアンドレアと本日二回目のビデオ通話が繋がると、僕は言った。
※この記事は、日本人の僕とイタリア人の友人アンドレアがイタリア語で交わした会話を、日本語に訳したものです。
ほぼ会話のみで構成されているので、どちらの発言であるかを明確にするため、僕の台詞にはL、アンドレアの台詞にはAを、「」の前に付けてお送りしたいと思います。
A「勉強し始めてまだ3日目なのに...しかも満腹じゃないときは脳がまともに機能してるような言い方だな」
L「...どういう意味だよ。っていうか、晩飯の前に英語と運転免許の学科はちゃんとやったんだから別にいいじゃん!一日にトータルで5時間も勉強するとか頭おかしいだろ」
A「俺が音楽院に通っていたときは、授業以外に一日8時間ピアノの練習をしてたけど」
L「お前は頭がおかしいからな。そもそも、新聞から記事を選んで、それについて話す...とか言ってるけど、結局いつも途中からただの雑談になるじゃん」
A「確かにね。それにしても昨日は盛り上がったよな。でも、そのぶん今日はちゃんとやらないと...」
L「だから、やりたくないって言ってんの!言うこと聞かないと昨日話した内容、今から全部翻訳してブログに載せるからな」
A「そんなことしたら君のアカウント、明日には削除されてるだろ」
L「とにかく!僕は今、つまんねぇ新聞記事を読んで、辛気臭い話なんかしたくないの!今日は金曜日なんだから、ちょっとくらい遊んだって別にいいだろ!」
A「わかった、わかった。実は俺、さっきちょっとやることがあって昼飯食えなかったから、君と話しながら食べることにするよ。買ってきてはあるんだ...」
L「なに食べるの?...ぅわ、またピザとビール」
A「君がいないとあんまり料理しないからね。で、話したいことがあるんだろ?何かおもしろいことでもあった?」
L「そうなんだよ。新聞に載ってるのなんかより、少なくとも100倍はおもしろい記事を見つけたんだ。この記事に比べたらCorriere della Seraなんて駄文の集合体だな」
A「へぇ、どんな記事?」
L「これ」
A「あぁ、このアイコン、例の彼だね。この前読んだ廃墟になった島の記事、おもしろかったな」
L「うん、おもしろかった!いつか二人で行きたいな、軍艦島。ねぇ、これ翻訳かけとくから、ちょっと一人で読んでて。僕、アイスとってくる」
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L「ただいま」
A「...なんでクーラーボックス持って戻ってくるんだよ」
L「は?そんなこと聞くなんて、お前ばかじゃねぇの?アイス常温で置いといたら溶けちゃうだろ」
A「...夕飯食べ過ぎたって言ってたのに。そもそも食後にジェラート食べるなんて有り得ない...」
L「うるさい。こういうのホメオパシーっていうんだよ」
A「むずかしいことばしっててえらいね」
L「...棒読みすんな。それよりさ、記事読んだだろ。僕これ、今朝読んで、コメント付けたのね。そしたら、ほら、このカタカナの部分...うまく翻訳されないのが残念だけど、この人、冒頭こんな感じでコメント返してきたんだよ。もう笑っちゃってさ、テーブルで紅茶吹いて、隣に座ってた弟の服汚しちゃって、母さんに『しょう君はこれから学校へ行くのに!』って、すげぇ怒られたwww」
A「そんなにおもしろいんだ」
L「うん。もぅ天才としか言いようがない。こういうこと、よくあるんだけどさ、字面だけで人を笑わせられるなんて、ほんとすごいよな」
A「そうなんだ。俺は日本語が分からないから共感できなくて残念だけど...君が楽しそうにしているのを見るのは嬉しいよ。それにしても彼、本当に自転車が好きなんだね。震災の被害は甚大だったけど、こんなに夢中になれる趣味を見つけるきっかけになったのなら、あながち悪いことばかりだとは言えないね」
L「な。何がきっかけになるかわからないもんだよな。でさ、この人、自転車乗ってるから骨格筋率が40%以上もあるんだよ」
A「それって体の構成成分の40%以上が筋肉っていうことだよね。すごいよな」
L「うん、すごい。だけど、お前も筋肉はそれくらいありそう。ただ腹回りに体全体の脂肪が一極集中してるけどな!」
A「君...それに関しては他人のこと言えないだろ。この前測ったとき、君の体脂肪率は...」
L「うるせぇな!それは胴体がアザラシみたいだったときに測ったからで...今は違うもん!」
A「でも、もうすぐイタリアに戻ってくるんだから、またアザラシみたいになるだろ。そしたらまた二十...」
L「黙れ。お前だって他人のこと言えねぇだろ」
A「まぁ...そうだね。もうすぐ海とかプールに行くし、今のうちになんとかしておかないとな...」
L「そうそう。女の子がその腹見たらがっかりするもんな。それどころか、そんなんじゃ今年は新しい遊び友達...できないかもねぇ」
A「...うるさい」
L「だからさ、僕たちももっと頻繁に、自転車でいろんなところに行けばいいんだよ。そうだ、フランスまで自転車で行かない?」
A「ばかなこと言うな、家とテッラ・デル・ソーレ(エミリア・ロマーニャ州)を往復しただけで二人とも死にそうになってるのに...」
L「家からテッラ・デル・ソーレまで何キロあるの?」
A「10㎞ちょっと」
L「フランスのマントンまでは?」
A「500㎞以上ある」
L「あー...」
A「体への負担を軽くするために、まず食べるのを控えて、少し体重を減らさないといけないと思うんだよ。で、いきなり遠出はせずに、近場から始めて徐々に距離を伸ばしていこう」
L「お前さw ピザ食ってビール飲んだあとに、ビスケットをデザートワインに浸しながら言うなよ」
A「...君こそ、そのジェラート何本目だ?」