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【イタリア日記②】2024年9月(11~20日)
11日(水) イタリアサソリ
男4人でフォルリ・チェゼーナ県とリミニ県の境目辺りへ、物件をいくつか見に行きました。
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十年以上使われていない、とある住宅の内見で、
「「ぅわぁあ゛ぁぁぁぁぁぁ!! ハチ/クモだぁあ゛ぁぁぁぁぁぁ!!」」となったり...
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また、同じようなコンディションの別物件では、
「ぅわぁあ゛ぁぁぁぁぁぁ!! サソリだぁあ゛ぁぁぁぁぁぁ!!」となったりしました。
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ネットの情報によると、イタリアでは2021年までに25種のサソリが確認されているが、どれも大人しく毒性も低い、とのこと。しかし、それを知ったのは、このあと、昼飯を食っていたときなので...
「彼には毒がある。見てしまった以上、生かしてはおけない。君たちはどう思う?」と、アンが言い出しました。
「まぁ...仕方ないよね」と、何食わぬ顔で内見を続ける不動産会社の職員および約一名を除く、二人(僕とルイージ)が同意します。
すると、アンは100キロ近い体重を乗せ、微動だにしないサソリを思いっきり踏み潰しました。そして、ゆっくり足をあげると...
なんと、サソリが動き出したのです!
「ぅわぁあ゛ぁぁぁぁぁぁ!!」
僕は悲鳴を上げ、建物の外に飛び出しました。
その後、中で3,4回地面を踏み鳴らす音が響き、アンが外に出てきて、
「情けないな... サソリなんて毎日見てるだろう」と、Tシャツの左袖をめくりながら言います。
「いや、タトゥーと本物を比べるなよ!」
「しかも、明日、君もサソリのタトゥーを入れるのに」
「だから、タトゥーと本物は何の関係もないから!」
*****
その夜。ソファでくつろいでいるとアンが言いました。
「ローリス、早く風呂に入っておいで。今夜は10時までにベッドへ行かないといけないよ」
「...なんで?」
「君は明日タトゥーを入れるんだから、しっかり休んでおかないと」
「...なんで?? しっかり休んでおかないと耐えられないくらい痛いってこと??」
「いや...」
「『いや』ってなんだよ! お前、痛くないって言ったじゃん! くすぐったいだけだって!」
「...いいから、早く寝ろ」
12日(木)
もう五回タトゥーを入れた夢の中
(川柳)
エミリア・ロマーニャ州、アンの自宅にて執筆
12日(木) ついに
タトゥーを入れました。その記念に、イタリア語詩と漢詩を作ります。
*****
Settenari di Tatuaggio
Per diventar campione,
forte come scorpione,
saggio come Grifone,
so, non basta un tatuaggio,
ma sì che è un vantaggio.
Guardando m'incoraggio.
(日本語訳)
タトゥーの七音節詩
一流、つまり、
サソリのように強く、
グリフォンのように賢くなるためには、
分かってる、タトゥーだけじゃダメだということを。
でも、もちろん効果はあって、
見ることで自分自身を勇気づけられる。
*****
護身符
抗寒吹雪暑
風雨立亭亭
愁裏吾兮撫
伊名蠍刺青
五言絶句(平起/下平・九青)
(現代日本語訳)
お守り
寒さにも、吹雪にも、暑さにも、
雨風にも抗い、姿勢を正し、まっすぐに立つ。
憂えるとき、僕はそっと触れる。
お前の名前と蠍のタトゥーを。
*****
施術直後、僕の左腕の内出血や浮き上がった細い血管を見て、「なんだ、これは! 様子がおかしい! こんな風になるなんて!」とスタジオ内で大騒ぎし、挙句の果てに、彫り師から「雑菌だらけの手で触るな!」と怒られたアンドレアは、実は僕より緊張していたのでしょう。帰宅後、「君は本当に強くて勇敢だった」と繰り返したあと、ソファでぐっすり眠り込んでしまいました。かわいそうに。
そして、その夜。
M国では、王様に頑張りを認められると褒美が与えられます。そんなわけで、僕は何でも好きなものを食べられることになり、夕食はOWWでとりました。
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13日(金)
秋寒し雨も楽しいスタジアム
エミリア・ロマーニャ州、アンの自宅にて執筆
13日(金) プリキュアの末裔
セリエB、チェゼーナ‐モデナ戦を見に行きました。ダービーということで、スタジアムは大混雑。
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試合が始まる前、スタジアムの外でホットドックを食べました。昼飯を食い過ぎてあんなに苦しんだのに、どうして夜になると腹が減るのでしょう。
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ホットドックを食べ終え、スタジアムの中に入ります。
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13℃ とは思えない 温度感 (川柳)
わたしはプリキュアの末裔なので(?)、一番好きなスポーツは格闘技(特に、見るならテコンドー、やるなら空手)です。
でも、サッカーも大好き。テレビはもちろん、スタジアムで見るのも、とても楽しいです。二つのケースを除いては...
一つは、民度の低いやつが近くにいる場合。もう一つは、金切声を上げたり、甲高い指笛を鳴らし続けるやつが近くにいる場合です。前者では善良な心が、後者では耳が痛むのです。
この日は、残念ながら、どちらのケースにも当てはまる状態での観戦となってしまい、
もうちょっと静かにアウェーディスらずに
ホーム応援すればいいのに
心の中で、このような歌を詠んだのでした。
14日(土)
漢語彫る同じフォントで秋の雲
エミリア・ロマーニャ州、アンの自宅にて執筆
14日(土) 次のタトゥー
アンドレアが人生で三つ目のタトゥーを入れる予定でしたが、彫り師から経年劣化がデザインに及ぼす影響を指摘されると気が変わり、一旦考え直すことに。
そんなわけで(?)、僕も自身に彫る次のタトゥーのデザインを考えました。
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多分これが最後のタトゥーになると思いますが、グイードによると、ジンクス的には奇数個入れたほうがよいとのこと。もしかしたら、気が変わるかもしれませんね。
アンが仕事に出かけたあと、家にあったポテチを全部食ったら、帰宅したやつに秒でバレて、すげぇ怒られました。
そんなわけで(?)、夕飯はサラダだけ...
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15日(日)
菓子パンといつもの日曜秋の山
エミリア・ロマーニャ州、アンの自宅にて執筆
15日(日) サンタ・マリア・デル・モンテ教会
敬虔な無神論者のわたしは、日曜日にはよく教会でお祈りをします。そんなわけで、サンタ・マリア・デル・モンテ教会へ行きました。
いつも通る道は、去年の洪水被害の修復作業のため、通行止め。バールで朝食を買い、迂回ルートを辿っていくと、とても素敵な場所を見つけました。
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ここで朝ごはんを食べましょう。
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シュークリーム(右上)が半端なく美味かった。生クリーム(←甘さ控えめ)だけでなく、カスタードクリーム(←すげぇ甘い)も入っている。
朝食後は、教会へ。しかし、なんということでしょう。日記のタイトルが『サンタ・マリア・デル・モンテ教会』だというのに、かの地で一枚も写真を撮らなかったのです!
でも、いつも通りドン・ミケランジェロに礼儀正しくご挨拶をし、懺悔もして、しっかり改心しました。本当です。嘘じゃないです。
そうそう。挨拶といえば、アンがドン・ミケランジェロに「調子はどうですか」と聞くと、「まあまあですね」という返事が返ってきたのです。僕が「何かあったんですか」と尋ねると、ドン・ミケランジェロが、「ここにいることに飽きてしまって...」と言うので、僕とアンは思わず揃って吹いてしまいました。聖職者でもそのようなことがあるのですね。
神父様は、今、ローマのとある有名な教会への移動願いを出しているとのことです。
帰宅後、アンは女の子のところへ行って、僕は家で過ごし、夕飯は、近所のピアディーナスタンドでクレッショーネを食べました。
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いつも通り、炭水化物をすげぇ摂取した日曜日でした。
16日(月)
秋高しタトゥーリベンジさあ行こう!
エミリア・ロマーニャ州、アンの自宅にて執筆
16日(月) 三つめのタトゥー
アンが、左前腕にとあるフレーズを一周させるかたちで、人生三つ目のタトゥーを入れました。
めちゃくちゃかっこよかったため、自分も先日考えたデザインをすぐに彫りたくなってしまい、
「僕も今日やりたい!」
「先週入れたタトゥーの様子を見てからじゃないとダメだ! 9月中は絶対に彫らせない!」
...みたいな感じで一戦交えましたが、敗北を喫してしまいました。
10月まで待たなければならなくなりムカついたので、タトゥースタジオを出てからは一言も話さず、アンが仕事へ出かけたときに、やつのベッドで日本から持ってきた煎餅を、開封前に割らず、袋から出して丸かじりで食いました。(寝るときすげぇザラザラするはず。ざまぁみろ)
その夜、男7人で食事に行ったときも始終機嫌が悪かったのですが、帰宅後、「最後にタトゥーを入れたのは20年近く前だったから、どんな感じかよく覚えていなかったけど、今日やってみて "くすぐったい" という表現は間違っていたと思ったよ。それなのに君は何も言わずに我慢して、本当に偉かったね」と言われたので、許してやりました。
また、「君のフレーズも、俺のと同じフォントにしよう」と嬉しそうにするので、先のデザインに修正を加える予定です。
10月に次のタトゥーを入れるの、すげぇ楽しみ!
17日(火)
秋雨やときどきざあざあすげぇ降る
エミリア・ロマーニャ州、アンの自宅にて執筆
17日(火) 雨
バールで朝飯を食っていると、昨夜からの雨が、すげぇ土砂降りになりました。
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この雨じゃ 事故もあるって ミスるなよ
(季語:アル(っ)テミス=月の女神→月[秋])
朝食を早々に切り上げ、去年の大雨で氾濫した、アンの自宅近くの川を見に行くことに。すぐに雨は弱まり、まだ水かさの増していない川では、アオサギが悠々と朝の散歩を楽しんでいるようでした。
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(季語:秋寒し[秋])
Con infinita dolcezza procede
Volare in paradiso lui lo crede
Pioggia accompagna il canto di airone:
"verrà sommerso qui dall'alluvione".
(日本語訳)
限りない穏やかさで彼は進む
天国を飛ぶことを信じて
雨がサギの歌に伴奏する。
「ここは洪水で沈むだろう」
帰宅後、仕事へ行ったアンから家に残った僕へ、「すごい雨が降ってるよ。雷も鳴ってる。これがあと2,3日続いたら、一体どうなるんだろう! あとでまた川を見に行こうな」という興奮気味なボイスメッセージが、何度も何度も届きました。
そして、夕方。帰宅したアンと一緒に再び近所の川へ。しかし、水位はそれほど上がっていませんでした。それでも雨は大降りだったので車外へは出ず、そのままスポーツ用品店へ向かいます。そこで二人とも、けっこうちゃんとしたレインパーカーを買いました。
店を出ると、アンが「ピザのデリバリ―、明日は忙しいだろうな」と呟き、「君は車の中で待ってるんだよ。本を持っていくのを忘れないで」と僕に言います。
...なぜ僕にもレインパーカーを買ったのでしょうか。
まぁそれはともかく、この日の晩飯に食ったこれ[↓]と...
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これ[↓]...
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めちゃくちゃ美味かったです。
18日(水)
事故なしでピザの宅配がんばれよ
(季語:なし=梨[秋])
エミリア・ロマーニャ州、アンの自宅にて執筆
18日(水) 降り続く雨
アンのたっての希望で、朝・夕方・夜と三回、やつの自宅近くの川を見に行きました。
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このあと、ピッツェリアでデリバリーのアルバイトをしました。幸いなことに、配達中は雨が小降りに。でも、僕は一度も車外に出ませんでした。
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アルバイトを終え、再び川へ。
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19日(木)
川ばかり秋のやまない雨に飽き
(季語:秋のやま=秋の山[秋])
糸瓜忌がnote記念日でも続く
エミリア・ロマーニャ州、アンの自宅にて執筆
19日(木) 雨とチップ
雨は降ったり止んだりを繰り返し、朝、近所の川を見に行くと、水が溢れていました。
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それを見たアンが「去年と同じだね。住宅地に被害が及ばないといいんだけど」と、はしゃぎます。
夕方、再び川を訪れると、水位は下がっていました。
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それを見たアンは「去年みたいにならなくてよかったね」と、寂しそう。
車に戻り、各地の水害を伝えるニュースを一通り見たあと、幸いこの川の付近では大きな被害が出なかったため、再び雨脚が強まってきたものの、ピザ屋のアルバイトに出かけました。
配達を始めると、雨は土砂降りに。
前日は小降りだったので、「君は外に出るな」というアンの命令に大人しく従いましたが、この日はそういうわけにはいきません。同様の台詞を繰り返すやつに、
「雨に濡れたくらいで風邪なんか引くわけねぇだろ、ばーーーか」と返し、車外に出ようとすると、左腕の、ちょうどタトゥーを入れたあたりを、骨が砕けるのではないかと思うほどの力で掴まれました。
それでも何とか折り合いがつき、アンが先に車を降り、傘を差して僕を助手席まで迎えに来る...という、よく分からないスタイルで配達を手伝うことに。
...レインパーカーは、一体、何のために存在するのでしょうか。
アンが傘を差して、代引きの際はおつりの計算をし、僕が商品の受け渡しをします。
配達終盤、中心街のとある集合住宅に、ピザ1枚とペットボトルの水を届けたときのことでした。
インターフォンでデリバリーに来た旨を伝えると、丸くて華奢なメガネをかけ、ブロンドショートの前髪をポップなデザインのクリップで右耳の上あたりにとめた、ルームウェアの女性が出てきます。彼女はピザを受け取りながら、
「こんな天気のときに届けさせてごめんなさいね。それと、重ねて申し訳ないんだけど、小銭がこれしかなくて...」と言い、僕にチップをくれました。
彼女はオンライン決済で前払いしたにもかかわらず、僕たちのためにわざわざコインを用意しておいてくれたのです。
僕は今まで、「チップなんて、金持ちが細かいのを嫌ってつりを断るだけだろ」と、また、もらっても「ラッキー!」くらいのものだと、本気で思っていました。
それなのに...
イタリアでは小銭を持っていないと、有料トイレに入れなかったり、駐車できなかったりして、困ることがよくあります。それなのに、セントコインで1ユーロ10セント。自動支払機で使える種類の硬貨を、本当に財布からかき集めてくれたのでしょう。
正直、1ユーロ10セントなら、僕でも持っています。でも、『金額じゃない』というのは、きっと、こういうことを言うのだと思います。
分かっているつもりの言葉を、本当に理解した雨の夜でした。
20日(金)
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秋晴れの観光の日に取っておく
エミリア・ロマーニャ州、アンの自宅にて執筆
20日(金) 僕はダンティーノ
午前中、晴れ間が見えたので近所の公園へ。
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日本語でいうとウスベニアオイ、またの名をブルーマロウ。「夜明けのハーブ」などと呼ばれ、ハーブティーとして売られているが、僕に言わせれば雑草の味しかしない。
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Nel mezzo del cammin di sentier lungo
in un parco carino, trovai un fungo.
Sbuca fuori dal nulla in una notte
Dell'umido e maltempo se ne fotte
(日本語訳)
可愛らしい公園で、長い小道の半ば、
キノコを見つけた。
湿気や悪天候など問題にせず
一夜のうちに無から現れる
(湿気と悪天候が好条件だったんじゃね...?)
帰宅後、雨が降り始め、夕方、再び晴れ間が。そこで、ルイージを誘い、男3人でアペリティーヴォがてら、新聞スタンドへセリエAのチケットを買いに行きました。
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写真には写っていないけれど、僕はbitter rosso(ノンアルコールのビター飲料)、アンドレアはカンパリ、ルイージはタブルのエスプレッソを飲んだ。
僕はイタリア語が好きなだけで、別にイタリアが好きなわけではありませんが、この地にも長所はあって、それは自分の愛する言語で書かれた本や雑誌が気軽に買えるところです。
この日も、新聞スタンドで思いがけない出会いがありました。
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帰宅後、夕食。今日はトマトソース・スパゲッティでした。
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21日(土)
天高し!遠足すげえ久しぶり!
エミリア・ロマーニャ州、アンの自宅にて執筆
『【イタリア日記③】2024年9月21~30日)』に続く...