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『告白撃』住野よるやっぱ愛してる

ひっさしぶりにまともに読んだ小説が良すぎたので読み終わった勢いそのままに語ろうと思います。
夜を明かして読んでしまった。


『告白撃』 著:住野よる

ざっくりあらすじ
大学時代からの親友に好意を向けられていることに気づいた主人公(最近婚約した)は、このままでは絶対告白して来ない親友にすっぱり諦めてもらうため、「告白(させるぜ)大作戦」を決行するが……?


⚠️ここから全作読んだ住野よる大好き人間による本作のネタバレを含む自己満足感想書きなぐりです。




とりあえず先に梨の事だけ語らせて欲しい。

「あの頃にはしなかった、梨の香りがする。」

主人公が告白大作戦決行中、自分にだけ妙に優しい親友に、「やっぱりこいつ私の事好きだな…」となるセリフ。感情に蓋をするタイプの親友からほ〜んのり香る恋心を表す言葉で急に「梨」を使ってくるんですよ?いちごとか青リンゴみたいなわかりやすいフレッシュな甘酸っぱさじゃなくて、落ち着いてて控えめなちょっとクセのある梨の甘酸っぱさ……たった一文で「30代になって気づいた大学来の親友からの気持ち」をこんなにも五感でわからせてくる表現ってなかなかない。

本を手に取って最初に思った事は、「ま〜たこの人一筋縄でいかなそうなお話作ってるよ」だったのだが、最終的にめちゃくちゃ好きだった。っていうか好きになった。今まで読んだ住野よる作品の中で3本の指に入るくらいには好きかもしれない。

まず明確なココ好きポイントとしては、大学生から大人になって、それぞれの道を進みながら過ごしたであろう年月とゆるさを空気感として感じるところだ。大学の頃から各々の関係性があって、今に至るまでに変わってしまったものも、変わらなかったものも、今でも他人に言えない関係性なんかもある訳で、その時の流れの中で主人公と親友の関係性は変わらなすぎた。お互いが絶対的な友達と言う関係性から外れる可能性をぜーんぶ見ないふりした結果なのだろう。
でもこれかなり主人公の言動も悪い気がする。元の性格というか、無意識のことだからしょうがないが、さすがに魔性だしノンデリが過ぎるところもある。熱い言葉で人をその気にさせといて、本人はしっかり忘れるとか魔性でしかない。結婚式のシーンではさすがにええええお前嘘だろと思った。ぜひ読んで欲しい。
 そういう主人公のとんでもねえ性格も含めて、めちゃくちゃ住野よるらしい作品だと思った。ちゃんと告白大作戦が成功すると言うあらすじの通りの作品ではなく、なんだかんだ親友と結ばれることもなく、失敗は失敗だしみんなそれぞれ傷を作って終わるんだけど葛藤と過去に折り合いをつけつつ、未来を見据えて今を生きるという結末に落ち着くのが、『青くて痛くて脆い』に通ずるところがあるなぁと思った。どうやら表紙を手がけている方が一緒らしい。


あと全体的に酒臭い。

梨より酒の香りがする。みんなお酒飲み過ぎじゃない?大人ってこんな感じなんですか?マジでキャラクターたちが会うたび会うたび、お酒飲んでるから本編80%酒の香りがした。みんなお酒の力借りてるんだなぁ。酒が入って素直になる心もあれば、こじれる心もあるんだな〜。主人公がわざと泥酔してるときの自分を演じて酔いの度合いをごまかすところは、ほんとに大人って怖いなと思いました。まだお酒が飲める年齢じゃないけど、酔って人ん家に押し掛けて記憶なくして爆睡とかはしないように気をつけるって決めた。

あとやっぱり解像度が高い。人間のこと観察しすぎだろ。何食ってたら、こんな表現できるんだみたいなものが多い。住野よる作品特有のさらさら読み進められるわけじゃなくて、ちょっと詰まったりとか引っかかったりとか、一旦止まらないと咀嚼できないような表現がとてもよかった。
勝手に住野よるさんを言外の比喩達人だと思ってるから、ほんと、痺れた。

今は高校生だけど、自分が大学生になった時にこんなに仲のいい友達が出来るのだろうかと思ってしまった。でも出来なくてもいいかな。中学の頃の男女4人馬鹿みたいに仲良いグループでまだ交友が続いてるわけだし。その人達と大人になっても一緒にカラオケ行ったり、誰かの車で温泉旅行とか行きたいな。大人になっても友達でいたいな。


こんなこと、つらつらと書いてたらもう朝だよちくしょう。おはようございます。


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