第14回「ガリレオのパラドックス!」
紀元前3世紀、数学者ユークリッドが、理性的な人間ならば誰もが疑いなく受け入れる「自明の共通概念」として5つの「公理」を定めた。その第5公理は「全体は部分よりも大きい」である。
ところが、17世紀の物理学者ガリレオ・ガリレイは、著書『新科学対話』において,自然数と平方数の集合を1対1に対応させ、自然数と平方数が同じ数だけあることを示した。つまり、無限集合においては「全体は部分よりも大きい」というユークリッドの第5公理が必ずしも成立しないのである。
全体集合を自然数の集合N={1,2,3,4,5,6,…}、部分集合を偶数の集合E={2,4,6,…}とおくと、NとEの要素間には <1, 2>, <2, 4>, <3, 6>, …, <n, 2n> の1対1対応が成立する。つまり、すべての自然数は、偶数と1対1に手を繋ぐことができる。この2つの集合は同じサイズであり、このとき「同等」という。
この方法を工夫すると、偶数・奇数・自然数・整数・有理数(分数)の集合がすべて互いに同等であることを証明できる。一方、実数の集合は、それらの集合よりも大きいことをがわかっている。つまり、無限にも大小があるわけだが、それはなぜだろうか?