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小説家の読書感想文「移動する人はうまくいく」

この本を手に取ったそもそものきっかけは、今月1月10日金曜日、夫がコロナと診断された事である。

数日前から調子が悪いと言っていた夫が病院へ行って帰ってくるなり、自分がコロナと診断された旨を伝えて来たのだ。
熱でふらふらしている夫は、とてもじゃないが、「あんたホテルにでも行って隔離してくれる?」と頼めるような様子ではなかった。
すぐに夫の両親を呼んで、夫実家で休ませるべく連れて帰ってもらった。夫実家は田舎の家で広く、部屋数も多いので、離れで隔離してもらいつつ休ませる事に。

私は生後6か月の娘を連れて、正月に帰省したばかりの地元・広島市へとんぼ返りする事になった。両親が迎えに来てくれて、娘と私と荷物を携え、実家へ帰った。
とは言え、正月に帰省した際はホテルに宿泊したので、ずいぶん久しぶりの実家である。
最近はずっと抱っこマンで、常に抱っこをせがむ娘の育児に疲れ切っていた私は、
口では夫が心配だとほざきつつも、内心は、
「夫がコロナになったのは可哀想だけど、堂々と1週間も実家に帰る事ができて、私も休養する事ができて良かったな」
と思っていたのである。

実家に居れば、両親や妹に育児を手伝ってもらえる。いくら夫が定時で帰って来てくれるとは言え、日中のワンオペ育児に疲れていた私は、大人が何人も居る環境に感謝した。
夕食時に両親とゆっくりワインを飲んだり、結婚して家を出る直前の妹と、姉妹最後のゆっくりした時を過ごしたり、娘を見つつ漫画を読んでだらだらしたり。
久しぶりにマッサージも行けた。で、マッサージのついでに百貨店に寄って、化粧品や本や雑貨を見て・・・。と思い、書店に寄った際に、この本に出会ったのである。

もう少しでこの本じゃなくてムーミンの雑誌を買うところだったので、マジでこっちを買ってよかった。

本書は、元編集者・作家の長倉顕太氏が執筆したもので、要約すると、
「世の中の自己啓発本の多くは、自分の意志を強く持ってやりたい事をやるべき!みたいなしょーもない内容ばっかりだけど、そもそも、ずっと同じ環境に居たらどうしてもだらだらしたり心を病んでしまって何も変えられる訳無いだろ?移動して、環境を変えろ!引っ越しをしろ、会社を辞めろ!」
というものである。
何でも、大昔人間は狩猟民族だったから、あっちこっち移動して、自然とサバイバル能力が身についていた。でも農耕を始めて定住をし出してからは、どうしても代々同じ土地に居るので、伝染病が流行ったりとか、良くない方向へ行ってしまった。
現代ではサバイバルをする機会は無いので、まあそれに類似した事をすればいいのだ。それが「移動」である。国内旅行や海外旅行に行ったり、とにかく移動しまくればいい。旅行の観光内容ではなく、移動する事そのものに意味がある。引っ越しでもいい。とにかく移動して環境を変えろ。という内容なのだ。

昔、外見がドストライクの元カレに一目惚れした時の、あの、一撃で恋に落ちる時みたいな、とんでもない衝撃が走った。私は結婚して住み慣れた地元を離れて、子育てし始めてからは、育児による疲労で心身共に疲れ果ててしまい、何をしようという気も起こらなくなっていた。正直、地元を離れた事や地元の人間ではない夫と結婚した事そのものも後悔し始め、ずっと広島で暮らせば良かったと思い始めていた中での、夫がコロナで急遽帰省事件だった。
そうしてたまたま実家に帰って、たまたまマッサージの後に書店に寄ってこの本に出会った。正直あんなに広い書店をさまよい歩いても、どの本も面白いと思えなくて、退屈を持て余していた瞬間にこの本の表紙が目に入ったという訳。

そうか、なんか逆に地元に居た方が病んでたかもしれないな・・・とか、結婚して地元を出たけど、なんかこれはこれで良かったんかもな、とか。

別に何かが大きく変わった訳じゃないけど、引っ越しは必ずしも悪い訳じゃないかも、と思えた書籍です。

あ、娘が泣いてるので今日はこの辺で終わりますw。

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