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怒らない恋人

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彼氏の女友達の存在に悩まされている女性と、女友達と恋人の間で板挟みになる男性の恋愛小説。連載中。更新遅いです。
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#連載小説

【連載小説】怒らない恋人/第二章:2

【連載小説】怒らない恋人/第二章:2

前回の話

「……で。その先輩がね、ほんとにムカつくの。私にばっかり仕事押し付けてくるし。ちょっとミスしただけなのに、ずっと文句言ってきて。この前なんか……」

 俺の向かい側に座っている莉奈は、職場の先輩女性社員がいかに意地悪で無能なのか延々とプレゼンしている。俺は莉奈の話よりも、ふかふかすぎるソファーの座り心地が気になって落ち着かない。莉奈の話はほとんど聞いていないけれど、最終的に投げ掛けられ

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【連載小説】怒らない恋人/第二章:1

【連載小説】怒らない恋人/第二章:1

「いやー。社交辞令のつもりだったんだけど、まさかほんとに誘ってくるとは思わなかったよ」

 先輩がそう言ったのは、居酒屋の飲み放題コースも終盤になった頃だ。
 俺の向かい側に座っている先輩はだいぶ酔っているようで、瞼がほんのり赤くなってなかなか視線が合わない。
 先輩とは職場で軽く挨拶を交わす程度の仲だったが、先日、たまたま帰り際に世間話をし、「いつか飲みにでも行こうぜ」と誘われたので、その日の夜

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【連載小説】怒らない恋人/第一章:完

【連載小説】怒らない恋人/第一章:完

前回の話

 莉奈が潤也にフラれたらしい。その報告を聞いたのは、大輝の部屋でだった。
 その日は、記念日を忘れていたお詫びに大輝が手料理を振る舞ってくれると言ったので、私は仕事が終わってから真っすぐ大輝が住むアパートに向かった。「記念日のことは気にしなくていいから」と何度も大輝に言ったのだが、私はそれなりに楽しみにしていた。というか、かなり楽しみだった。大輝の手料理を食べるなんて初めてだ。
 でも

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【連載小説】怒らない恋人/第一章:5

【連載小説】怒らない恋人/第一章:5

前回の話

 私と大輝が初めて出会ったのは、恋活のパーティーだ。婚活ってほど重たいわけでもないけど、恋愛相手を探しているから、それなりにみんなが真剣。男性と女性が10人ずつ集まって、立食パーティー形式で行われた。
 だけど、私は最初から大輝のことを狙ってたわけではない。素敵な人がいるな、とは思っていた。誰とでも気さくに話して、聞き上手。見た目も平均以上。
 でも、大輝はたくさんの人に囲まれていたし

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【連載小説】怒らない恋人/第一章:4

【連載小説】怒らない恋人/第一章:4

前回の話

 大輝と莉奈を引き離したい私の思惑とは裏腹に、大輝はますます遠慮が無くなっていた。飲み会で4人が対面したことをきっかけに、私の前で莉奈の話をしてもオッケーだと勝手に解釈してしまったらしい。おかげで、私と大輝のメッセージのやり取りには、莉奈の名前がずらりと並んでいる。試しにメッセージ内の検索機能を使って莉奈の名前を数えてみたら、私の名前よりも莉奈の名前の方が多くて悲しくなるだけだった。何

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【連載小説】怒らない恋人/第一章:3

【連載小説】怒らない恋人/第一章:3

前回の話

 莉奈の「ランチにでも行こう」発言は社交辞令だと思っていたし、そうあってくれと願ってもいた。だけど、莉奈は飲み会が終わった数日後、実際に私をランチに誘ってきた。正直言って断りたかったけれど、莉奈が私をランチに誘ったことは大輝にもばっちり伝わっていて、まだ返事もしていないのに「莉奈とランチに行くんだって? 」と、嬉しそうに笑っている大輝を見ていると私の心はいとも簡単に折れてしまい、断れる

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【連載小説】怒らない恋人/第一章:2

【連載小説】怒らない恋人/第一章:2

前回の話

 莉奈さんに会ってみたいな。私がそう言うと、大輝は想像以上に喜んだ。その喜びっぷりにまたしても私の中にモヤモヤした感情が溜まっていきそうになったが、ぐっと堪える。大輝は飲み会をセッティングしてくれると言って、さっそく莉奈に連絡を取り始めた。
 それから、飲み会が開催されるまではあっという間だった。大輝は飲み会の幹事やまとめ役が得意で、本人もその役割を率先して引き受けるタイプ。私はいつも

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【連載小説】怒らない恋人/第一章:1

【連載小説】怒らない恋人/第一章:1

 
 浮気の方が、もっとずっとわかりやすい。私は、向かい側に座っている私の恋人、大輝の顔を睨み付けながら苛立ちを募らせた。なんとも間の抜けた表情だ。長めの前髪の隙間から何度か瞬きを繰り返す黒目がちの瞳。ちょっとだけ首を傾げる様子は、どこか子供じみている。彼は私よりも2歳年下だから、そう見えるのかもしれない。とは言っても、もう25歳だ。子供っぽくてかわいい!が通用する年齢はそろそろ過ぎようとしている

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