深山ユウ

趣味とストレス発散で文章を書きます。今のとこ小説とかエッセイとか。推しと飼い猫のために…

深山ユウ

趣味とストレス発散で文章を書きます。今のとこ小説とかエッセイとか。推しと飼い猫のために働いている。

マガジン

  • VSシリーズ

    日常のささやかなバトルを書いた短篇小説まとめ

  • 怒らない恋人

    彼氏の女友達の存在に悩まされている女性と、女友達と恋人の間で板挟みになる男性の恋愛小説。連載中。更新遅いです。

最近の記事

「誰からも嫌われたくない」は皆から嫌われる

大昔の話だけども。 不思議な誘い方をしてくる友達がいた。 今となっては友達だった瞬間があったのかどうかも不明だけど。仮にA子とします。 A子「◯◯に行きたい! 一緒に遊びに行こうよー」 私「いいよー。私も行きたい」 A子「B子とC子も呼びたい! 2人も誘ってよ」 ……と、いつもこんな感じ。 B子とC子が嫌いなわけじゃないんですよ。むしろ好きなんです。友達なので。一対一で遊ぶこともよくあった。でも、そういう問題じゃない。 当たり前だけど、B子とC子にも都合があるわけ

    • 【連載小説】逝き先:1

       私はどうして市役所にいるのだろう。見覚えのない書類を手にして市役所の廊下に立っているが、頭の中がぼんやりしていて記憶が曖昧だ。私が持っているこの書類は何だろう。どうして市役所に来たのだろう。  どうして。どうして?  頭の中は疑問で埋め尽くされていたが、私の足は勝手に動いて正面の窓口に向かっていた。手にしている書類を提出しなければならない、という意識だけがあった。しかし、役所の窓口はとても混雑している。すごい行列だ。その行列を見ていると、去年、茅野晴樹と一緒に行ったテーマパ

      • 【短編小説】私は何も借りてない

        「本を返してください」  後ろからその声が聞こえたのは、篠田菜々美が1日の業務を終えてパソコンをシャットダウンさせた瞬間だった。菜々美は驚いて振り返る。視線の先には後輩の津山彩夏が立っていて、無表情にこちらを見下ろしていた。 「どうしたの、津山さん。本って何の話? 」 「この前貸した、文庫本ですよ。篠田さん、貸してって言ったじゃないですか」  彩夏は本のタイトルも口にしたが、まったく記憶にない。菜々美は最近、電子書籍ばかり利用しているため紙媒体の本はほとんど持っていな

        • 「痩せてるね」VS「何もしてない」

          「鈴香、本当に痩せてるよね。ジムとか行ってるの? ダイエットとかしてる? 」  昼休み開始から約10分、隣のデスクに座っている同僚の織絵が声をかけてきた。他の社員は珍しく全員が出払っていて、オフィスには私と織絵だけ。  織絵とはほとんど仕事の話しかしたことないし、こうやって昼休みに2人きりになるのも初めてだ。同い年で同期っていうありきたりな共通項を理由に下の名前で呼び合っている。たったそれだけの関係なのに、いきなり体型の話。 「何もしてないよ」  つい素っ気なく答えてし

        「誰からも嫌われたくない」は皆から嫌われる

        マガジン

        • VSシリーズ
          5本
        • 怒らない恋人
          8本

        記事

          創作大賞応募のため「怒らない恋人」再掲。加筆修正、やっと完結させました。

          創作大賞応募のため「怒らない恋人」再掲。加筆修正、やっと完結させました。

          「怒らない恋人」後編

          前編はこちら 【後編:彼氏の場合】 「いやー。社交辞令のつもりだったんだけど、まさかほんとに誘ってくるとは思わなかったよ」  先輩がそう言ったのは、居酒屋の飲み放題コースも終盤になった頃だ。  俺の向かい側に座っている先輩はだいぶ酔っているようで、瞼がほんのり赤くなってなかなか視線が合わない。  先輩とは職場で軽く挨拶を交わす程度の仲だったが、先日、たまたま帰り際に世間話をし、「いつか飲みにでも行こうぜ」と誘われたので、その日の夜にいくつか居酒屋の候補を絞って、翌日には

          「怒らない恋人」後編

          「怒らない恋人」前編

           浮気の方が、もっとずっとわかりやすい。私は、向かい側に座っている私の恋人、大輝の顔を睨み付けながら苛立ちを募らせた。なんとも間の抜けた表情だ。長めの前髪の隙間から何度か瞬きを繰り返す黒目がちの瞳。ちょっとだけ首を傾げる様子は、どこか子供じみている。彼は私よりも2歳年下だから、そう見えるのかもしれない。とは言っても、もう25歳だ。子供っぽくてかわいい!が通用する年齢はそろそろ過ぎようとしている。  大輝は、さっきから困ったように何度も後頭部を掻き毟っていた。襟足が中途半端に

          「怒らない恋人」前編

          Xと連携してみた。だからって何かやるわけじゃない。

          Xと連携してみた。だからって何かやるわけじゃない。

          自覚がない女たち

          ■優菜(27歳・初彼氏) 「思わせぶりな態度ばっかり取ってくる男って、いったい何考えてるんだろうね? 私は真剣に彼のために頑張ってたのに、彼は他の女にも迫ってたんだよ。信じられない! 」  愛衣が切羽詰まった様子でそう捲し立ててきたのは、居酒屋の女子会プランで予約したコース料理も終盤に差し掛かかった頃だ。  追加でデザートでも頼もうか、でもコース料理とは別料金になっちゃうから会計がめんどうだな、どうしようかな……と、呑気な葛藤を始めていた私は、愛衣が何の話を始めたのかわか

          自覚がない女たち

          不器用な私ができない「普通」のこと

          ■エプロンの紐を後ろで結ぶのが下手。後ろでクロスするタイプのエプロンとはできるだけ出会いたくない。 ■段ボールを開けようとしてもガムテープがなかなか剥がれない。カッター必須。「刃物厳禁」の段ボールは最大の敵。 ■折り畳み式のエコバッグや傘を使うと初期状態がわからなくなる。 ■「不器用さんでも簡単に出来るヘアアレンジ!」が一回もできたことない。 ■コロコロの捲り口を見つけるのが壊滅的に遅い。最終的に見つからない時もあるので、変なとこから破っちゃって負の連鎖。「斜めカット

          不器用な私ができない「普通」のこと

          【連載小説】怒らない恋人/第二章:2

          前回の話 「……で。その先輩がね、ほんとにムカつくの。私にばっかり仕事押し付けてくるし。ちょっとミスしただけなのに、ずっと文句言ってきて。この前なんか……」  俺の向かい側に座っている莉奈は、職場の先輩女性社員がいかに意地悪で無能なのか延々とプレゼンしている。俺は莉奈の話よりも、ふかふかすぎるソファーの座り心地が気になって落ち着かない。莉奈の話はほとんど聞いていないけれど、最終的に投げ掛けられる「ねえ、私が悪いのかな? 」という問いに「莉奈は間違ってないよ」と答えてやれば

          【連載小説】怒らない恋人/第二章:2

          【連載小説】怒らない恋人/第二章:1

          「いやー。社交辞令のつもりだったんだけど、まさかほんとに誘ってくるとは思わなかったよ」  先輩がそう言ったのは、居酒屋の飲み放題コースも終盤になった頃だ。  俺の向かい側に座っている先輩はだいぶ酔っているようで、瞼がほんのり赤くなってなかなか視線が合わない。  先輩とは職場で軽く挨拶を交わす程度の仲だったが、先日、たまたま帰り際に世間話をし、「いつか飲みにでも行こうぜ」と誘われたので、その日の夜にいくつか居酒屋の候補を絞って、翌日には連絡した。  先輩はしばらく都合がつかな

          【連載小説】怒らない恋人/第二章:1

          【連載小説】怒らない恋人/第一章:完

          前回の話  莉奈が潤也にフラれたらしい。その報告を聞いたのは、大輝の部屋でだった。  その日は、記念日を忘れていたお詫びに大輝が手料理を振る舞ってくれると言ったので、私は仕事が終わってから真っすぐ大輝が住むアパートに向かった。「記念日のことは気にしなくていいから」と何度も大輝に言ったのだが、私はそれなりに楽しみにしていた。というか、かなり楽しみだった。大輝の手料理を食べるなんて初めてだ。  でも、私を部屋に迎え入れた大輝の第一声はこうだった。 「莉奈が大変なんだ」  怒

          【連載小説】怒らない恋人/第一章:完

          【連載小説】怒らない恋人/第一章:5

          前回の話  私と大輝が初めて出会ったのは、恋活のパーティーだ。婚活ってほど重たいわけでもないけど、恋愛相手を探しているから、それなりにみんなが真剣。男性と女性が10人ずつ集まって、立食パーティー形式で行われた。  だけど、私は最初から大輝のことを狙ってたわけではない。素敵な人がいるな、とは思っていた。誰とでも気さくに話して、聞き上手。見た目も平均以上。  でも、大輝はたくさんの人に囲まれていたし、人気がありそうだったから、アプローチする自信が無かった。きっと彼は一番人気だろ

          【連載小説】怒らない恋人/第一章:5

          【連載小説】怒らない恋人/第一章:4

          前回の話  大輝と莉奈を引き離したい私の思惑とは裏腹に、大輝はますます遠慮が無くなっていた。飲み会で4人が対面したことをきっかけに、私の前で莉奈の話をしてもオッケーだと勝手に解釈してしまったらしい。おかげで、私と大輝のメッセージのやり取りには、莉奈の名前がずらりと並んでいる。試しにメッセージ内の検索機能を使って莉奈の名前を数えてみたら、私の名前よりも莉奈の名前の方が多くて悲しくなるだけだった。何やってんだ、私は。  まあでも、莉奈は以前ほど正体不明の謎の存在ではない。そのこ

          【連載小説】怒らない恋人/第一章:4

          遠距離恋愛は待たなくていい

          遠距離恋愛をしていたことがある。めっちゃつらかった。 彼と付き合い始めて2ヶ月くらい。彼が仕事の都合で遠方に赴任してしまい、唐突に遠距離恋愛に足を突っ込んでしまった。新幹線使わないと会えない距離。 それにしても、なんで遠距離恋愛ってつらいんだろう? ほんと、あの時期は気が狂いそうになったよね! 会えないからっていうのはもちろんなんだけど、近距離でもお互いに仕事が忙しくて会えないカップルもいる。実際、私も仕事で忙しくなって彼にずっと会えなかったこともある。でも、遠距離恋愛の

          遠距離恋愛は待たなくていい