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深山ユウ
2024年7月29日 17:58
「鈴香、本当に痩せてるよね。ジムとか行ってるの? ダイエットとかしてる? 」 昼休み開始から約10分、隣のデスクに座っている同僚の織絵が声をかけてきた。他の社員は珍しく全員が出払っていて、オフィスには私と織絵だけ。 織絵とはほとんど仕事の話しかしたことないし、こうやって昼休みに2人きりになるのも初めてだ。同い年で同期っていうありきたりな共通項を理由に下の名前で呼び合っている。たったそれだけの
2024年2月14日 13:46
トレイの上に乗った石鍋がじゅうじゅうと不吉な音を立てている。ショッピングモール内のフードコートでは色々なものが注文できるのに、梨花が注文したのは、よりによって石焼ビビンバだ。辛さと熱さを兼ね備えた、私にとっては理解不能な食べ物。辛味も熱も痛みに繋がるのに、どうしてわざわざ金を払ってまで痛みを感じようとするのだろう。「一口あげるよ」 突然、梨花がビビンバを差し出しながら言った。私は自分で注
2024年2月7日 18:15
『お店どこにする? 』『晴香の好きなとこでいいよ。どこでもいい』 咲希から返ってきたメッセージがあまりに予想通りだったので、流石にうんざりした。 咲希は昔から「どこでもいい」ばっかり。遊びに誘ってもいつも受け身で、「どこでもいい」「なんでもいい」「任せるよ」のオンパレード。 学生の頃はそれでよかったかもしれない。でも、今はもうお互い立派な社会人で、お店だってスマホひとつで簡単に調べるこ
2024年2月3日 23:42
「亜美は素敵な彼氏がいていいなぁ。私も恋愛したい。でも、私は自然に出会いたいんだよね」 悪意がない佳奈恵の言葉にちょっとだけモヤる。 「自然な出会い」ってなんだ? つまり、私と彼氏の出会い方は不自然ってこと? 確かに私は彼氏と婚活パーティーで出会ったけど、今時、婚活とかマッチングアプリを不自然と考えている方が遅れてるんじゃないかな。 そもそも、自然な出会いって具体的にどんな出会いだ。
2024年2月2日 00:22
『来月あたり久しぶりに遊ばない?』 年末年始の多忙な業務を乗り越えて家で一息ついていた頃に、そのメッセージに気が付いた。高校の同級生の佳織からで、ほぼ2年ぶりの誘いだ。高校時代は休日の度に遊んで騒いでいた友人たちだが、30代になった今でも付き合いがあるのは佳織を含む数人だけ。その佳織も2年前に結婚したので、連絡も途絶えがちになっていた。 メッセージが届いていたのは3日前だったが、とても懐かし