映画:"Coda あいのうた"を観て。
今回も、私がアマゾンプライムで見て、何回か見返している映画をご紹介させていただこうと思います。
今回のこれ、私的には、かなりおすすめです。
※映画好きで見てますが、語れるほどの知識はありません。あくまで素人の個人的な感想です。
あらすじは以下になります。
人間、生きてると、自分一人じゃ、どうしようもない事とか、あるじゃないですか?家族と外の社会とで隔たりを感じたり、矛盾する問題を抱えて、悩み、なかなか踏ん切りがつかなかったり(見えない壁、しがらみに取り囲まれて、でも断ち切る事ができない、葛藤)する事もあるじゃないですか?
そんな渦中にある方、そんな経験を、過去にお持ちの方におすすめの映画です。
生きていく上で、何が大切なのか気づかせてくれる、良いきっかけになるかもしれません。
この映画は、家族(両親、兄)の中で、唯一、聾者(耳の聞こえない)ではない主人公のルビーが、家族としての役割をこなしながら、はじめて自分のやりたい事(歌)に出会い、現実と夢の間で葛藤し、外の社会と家族との間で葛藤し、家族の間でも葛藤しながら、自分なりの答えを探していく物語です。
ルビーの父親は、代々、漁業を営んでおり、母親はその事務方、兄は、父親の船で、同じく漁師として、父親のサポートをしています。
ルビーも、朝は父親の船に乗り、兄と一緒に漁のサポートをし、漁を終えた後は、(父親、兄が聾者の為、仲買人達にいいようにされてしまわないよう)とってきた魚の価格の折衝等も行っています。
(漁が終わった)昼間は学校(高校)に通っています。
そこで同級生の気になる男の子に惹かれて、合唱クラブに入り、合唱部の顧問のV先生と出会います。
ルビーの歌声を聞いたV先生は、ルビーの素質を感じとり、個別の指導を受ける様勧めます。v先生の個別指導で、発声方法や呼吸法、リズムのとりかた?等専門のトレーニングを受け、メキメキと腕を上げていくルビー。しかし、楽曲全体に帯びている雰囲気への共感、曲に合わせた感情の起伏等、ルビーが歌う際の楽曲に対しての感情表現が乏しい、抑制的である事(歌声として表現・表出できていない)に気づきその事を指摘します。
”歌が好きか?”
と聞く、V先生。
頷くルビー。
”歌う時の気分は?”
と続ける、V先生。
ルビーは少し考えた後、”手話”でその気持ちを表現します。
その様子を見たV先生は、言葉では表現できないルビーの気持ちを汲み取ります。
ルビーが自分の内側にある言葉にできない感情を、自分の持ちうる表現で相手に伝えようとする気持ち、それを受け止められるV先生の感性。
ここの場面、個人的にすごく好きです。
(ここの手話の部分に、あえて字幕がついていないのも、すごく良いと思いました。)
その後、仕事、学校の掛け持ちでレッスンに支障が出始め、V先生との間で対立したり、
ルビーが参加する事によって何となく成り立っていた、父親の漁業に、思わぬ事態が起こり、事業の継続が難しくなったり、
漁師仲間の間でも、漁協との事業の方針をめぐって対立が起こり、選択を迫られたり…
ルビーの進学を巡って家族の間でも対立が起こります。
音大に進学したいが、自分が居ないと成り立ちそうもない家業の事を考え、どうする事もできない2つの間で引き裂かれそうになるルビー。
ルビーにいつまでも頼らず、早く自分の力で自立したい兄。ルビーにもそれを望み、
“何とかするから、好きなように生きろ。”
“家族の犠牲になるな!”と諭す兄。
家業の事や自分の生い立ちの経験から、ルビーを傍においておきたい母親。ルビーが生まれた時、出産後の検査でルビーが聾でない事が分かった時に、残念だったと感じたと話します。
”なぜ?”
と聞くルビーに、
”何か、一緒に分かりあえない気がしたの…。”
”私の母は、健常者だったのよ…。母とは、何か、色々とウマが合わなくてね…。”
と、心の奥の襞を吐露します。
”分かり合えないのは、聞こえないからじゃないわ。”
と母親の気持ちを受け止めた上で、冗談交じりに返すルビー。
”そうね…。”
”たしかに、私は過保護すぎね…。”
と笑って返す母親。
長年、健常と聾の間の葛藤に悩まされていた母親の背景を、ルビーはこの時に悟ります。
大学へ行かせたい気持ちも、残ってもらいたい気持ちもある父親。しかし、ルビーの歌の実力が、聾者である自分達には分からず、本当に音大へ行けるレベルなのかどうかも確かめようがありません。
しかし、合唱クラブの発表会の日、家族と一緒に客席で見ていた父親は、ルビーの歌に人の心を動かす何かがある事を確信します。ここのシーンも父親がそれに気づくまでの過程がとても上手に表現されおり、ジーンと来ます。
(ここのシーンも、あえてルビーの歌声は入っおらず、父親の視点・感性の動きにカメラが随伴していて、父親の気持ちが少しずつ心に染み入るように感じられ、とても良いと思いました。)
その後、家に帰り、ルビーの歌声を聾である自分も、自分の力で聞きたいと願った父親は、ルビーに、”あの時の歌をもう一度、俺に歌ってくれないか“と頼みます。
そして、ある方法でルビーの歌声を感じ取ろうとします。
歌声が届くはずのない父親に懸命に伝えようとするルビー。
必死にそれを感じ取ろうとする父親。
そして、その歌声、思いは、聾である父親にたしかに届きます。
そして、涙した父親は、ルビーに”大学に行ってこい”と背中を推します。
クライマックスは、大学の入学試験のラストシーン(ルビーが大学の教授達の前でステージに上がり、歌を披露するシーン)です。ここは、他のレビューの方々と同様に、感動する箇所がありすぎて、どこに感動しているのか分からない状態になり、涙なしには見られませんでした。歌の歌詞も、それまでに描かれた家族やルビーの人生が凝縮された内容に感じれられ、とても感動的でした。
最初の部分のさわりだけ少し載せておきます。
それまで、ふわふわして成立していたものが、何かのきっかけで、急にはっきりした輪郭が与えられ、分断されていく様子は、私達の社会にも確かにあり、感覚として、とても共感できます。
その分断を産んでいるものは、何なのか。自分が作り出しているものなのか、他者が作り出しているものなのか、環境が作り出しているものなのか、あるいはその全てか。
ストーリーの中にいくつもの葛藤、対立、分断が散りばめられており、それぞれの人が自分の力で向き合い、時に支えあっています。
そして、その葛藤、分断を貫き、乗り越える事ができるものは何なのか、
そんなものはないのかもしれない。
問題はそこに存在し続けるものなのかもしれない。
そして、何が正解なのかもわからない。
でも、
相手を思い、考え、伝えようとする心、受け取ろうとする心。
人によって形は違えど、時に対応として間違ったものであっても、本気で相手を思う心は、その行為・言葉を超えてしっかりと伝わるものだと思います。
それは、決して嘘のつけないもの。
そこに、葛藤、分断に対峙した時の自らの姿勢を示してくれているのだと感じました。
そんな事を思い出させてくれた映画でした。
笑いあり、涙あり、葛藤あり。青春の真っ只中を、さわやかに駆け抜けてくれる1本です。
お時間がある方は、ぜひ一度観てみてはいかがでしょうか?
まとめきれずにすみません…。
自分の編集能力の低さ、ボキャブラリー少なさを痛感しております…。
でも、本当にいい映画です!
※本日もお疲れ様でした。
社会の片隅から、徒歩より。