88.【読書と映画と私】㉒幻の光:能登に思いを馳せて
29年前の映画になるらしい(1995年)
8月2日からデジタルリマスターにて限定上映されている。もう終わりの方の上映かもしれない。(※HP見ると現時点で10月まで上映館ありました)
他の映画を観に行って偶然知った上映。ちょうど読書中の『宮本輝全短編集』の中で『幻の光』に差し掛かっていたところなのが奇遇なのと、収益から諸経費を除いた全額を輪島市に届けるということもあって、観に行ってきた。
下調べしてみると、何と是枝監督の長編デビュー作!出演者の顔ぶれがなかなか凄い。主演の江角マキ子は、小説で感じるゆみ子のイメージとは違っていたので、不安に感じるところはあったが、noterさんの感想を読んで大丈夫と感じられ後押しになった。
その前に見た映画も、視聴後、他の方の感想を見て自分が違和感感じた部分の理由がつかめたり、今や映画を見る参考や感想を共有するのにnoteが頼りになると感じている、
小説『幻の光』の方は、主人公の一人称語りですすんでいく。思えば、宮本輝の小説で、私は少年が主人公の一人称語りのものが好きなようだが、女の主人公の語りも、よくここまで女の視点にたてるものだと感じられて良かった。短編小説だけど、読み終えると詩のようにも思えて、これを映画にしたら、どんな風になったんだろうとも思えてきた。
映画『幻の光』は時代を感じる景色が映画らしい映像なのと、演者さん達も、普遍的な佇まいで、古臭さは感じられなかった。映像の美しさは確かで、是枝監督の『怪物』も見たのも合わせて感じたのは、子どもたちが生きる空間の映像の美しさ。
“秘密の花園”のように、囲いのような、トンネルのようなところを通ってつながる空間や、人も含めた水に映る景色が素晴らしかった。映画通ではないのもあるけど、こういう映像の美しさを堪能する映画の見方ってこれまでしていなかった。今もまぶたに残るシーンがある。
ちょっと話が逸れてしまうけど、noteの文章を書いて、見出し画像を選ぶのが好きな私。書いた文章によっては画像選びに悩むことがある。この文章でこの画像選んで嫌な思いしないとか…(だったら、そんな文章書かない方がいいのかもしれないが)そんな時に役立つ検索ワード「心象風景」
そんな「心象風景」が詰まっていたようにも思える。
ストーリーは、もともと大きな起伏のあるものではないから、小説と映画とで省略される部分こそあれ、気になるような違いはない。
ただ、決定的に違ったのは、自殺した前夫のことを考えつめて、再婚した相手に「なんでやと思う?」と聞いた時にぽつんと返ってきた一言。小説の中ではこの一言がすごいなーと思っていただけに、映画で違うセリフになっているのは、HPのストーリー紹介でわかって、そうなんだと思いながら、考えさせられるポイントだった。小説と映画の違いを際立たせるところかもしれない。
映画では、沖の方にきれいな光が見えて誘われる話をしながら「誰にもそんな瞬間がある」というセリフになっている。江角マキ子は事前の感想で見たように、思っていたイメージより柔らかく、特に映像として見る部分については申し分なかった。セリフを言う部分にどこか彼女自身が持っている明るさがチラつく感じはあったが、そこを含めて映画のセリフだったら辻褄よく集約されるように思えた。ラストの映像に一瞬どきっとする思いも抱いたが、帰宅して小説のラストを見返してつながりをつけた。
存在感と言えばそうなのかもしれないが、
江角マキ子や、柳楽優弥、『怪物』に出てきた男の子たち、是枝監督の好きな顔なのか共通項があるようなそんなこともふと浮かんだ。
そして、映画について再び言うと、映像だけでなく、景色の音も閉じ込められている。気象との付き合いを思うと、大変な撮影だったことと思われる。朝市のシーンについては、自ずと涙がうるむんできた。遅々とした復興のような話も聞きますが、前に進んでいきますように。
宮本輝(1947ー )
『幻の光』1979
参考にさせてもらった映画評です。
引用させていいただきました。他の映画も参考にしたいと思います。