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憧れの一閃 七剣士物語 ~私たち高校1年生~ 其の五十

※其の四十九からの続きです。気軽にお付き合いください。



 石館いしだて高校から突然、練習試合の申し込み。私たち4人は少なからず動揺する。

「……今日は審判講習会の手伝いでしょ。私たちがメインに動き回るわけじゃない」

受け答えをするのも億劫だが、元チームメイトこいつらも引かない。

「だーかーらー。そのためのウチらっしょ~。団体戦組んでさー、センセーたちにも本格的に審判やってもらうっての!」

言いだした相模原さがみはらの提案に「それいい」だの称賛の声を上げる残りのメンバーたち。

雪代ゆきしろー。お前が剣道部辞めてからもー、ウチら結構頑張ってたんですけどぉ?」
「逃げちゃったパイセンとウチらの差ぁ、どれだけ縮まったかなー」

そこまで言うと、中山なかやまが私の前へと出る。

「いい案じゃん。相模原! 私と雪代こいつでやらせてよ。あんたたちと違って、私は本気でコイツのこと嫌いだしさ」

「中山」と私も声のトーンを上げる。どうしても気の合わない人はいる。私は元チームメイト全員と合わなかったが、とりわけ中山とは険悪だった。

「雪代! いい子ちゃんぶんなよォ? お前だけ今のチームメイトから好感上げようとか思ってんじゃねーよ!」

私にだって非があるのは認める。それは心のどこかで燻り、剣道からは逃げて、クラスでは孤立し、最後は学校もほとんどいかなくなった。

「だからって、お前たちのやってたことを認めて良いわけないだろ? タバコとか吸ってないだろうな? 中山」

タバコの言葉に反応したか、より場の雰囲気が重くなる。

「どうあっても、私らと雪代おまえじゃあ合わないよね~。生真面目と言うか、正義感たっぷりというか」

高知こうちがガシッと私の肩に手をかける。

「あの時の威圧感たっぷりなお前はどこ行ったんだよ? ウチらと会話するなんて、ずいぶん丸くなったじゃんかよ」

安条あんじょうも突っかかってきて、私は高知の手を払いのけながら言う。

「……触るな。私だってお前たちと会話などしたくない」

過去のことを回想しつつ、気分も昔に戻ってきたようで気持ちも高まる。

「ふっ……ふふふ。あーはっはっはっ」

突然、藤咲ふじさきが笑いだす。

「いいぞ。雪代! その気持ちだ! だんだんと昔のお前に戻ってきているぞ。塞がりこんでいるお前など見たくないと何度も言ってきただろう」

藤咲の発言に私も元チームメイトこいつらも自然と注目する。

「こんなチームワークがバラバラな連中に3年間も江戸川第五えどがわだいご中が苦戦していたとはな」

何が可笑しいのかわからないが、藤咲は気味悪く笑う。

「いいだろう! 石館高校おまえたちの練習試合の相手をしてやる! 団体戦の次鋒抜きで4対4でどうだ? もっとも、雪代以外のギャルまがいなお前らなど、私の相手にもならんがな」

藤咲の逆提案。そして、自信たっぷりの発言にはさすがに元チームメイトこいつらも反応。

「……さっきからなに? コイツ」
「いい加減うぜぇんだけど」

私と違い、どんなことにも引かない藤咲は続ける。

「雪代! お前の過去のことなど知らんが、こいつらが原因で歯車が狂って剣道に影響しているなら、またとないチャンスだ! 都立の石館高校など我が伝統ある総武学園そうぶがくえんの相手などにならんことを証明しろ!」

それだけ言うと腕を組み仁王立ちする藤咲。私は藤咲こいつの態度には慣れてきたが、挑発たっぷりの発言をされた元チームメイトこいつらは、はらわたが煮え返るぐらいの思いで言い返してくる。

「ずいぶん舐めたこと言ってくれるね。藤咲サン。そこまで言うなら、わったしの相手、してもらおうじゃない!」

相模原が率先して藤咲に申し出る。

「だったら雪代! お前の相手は私だ」

一番因縁ある中山の相手は私がする。

「えー、勝手に決めちゃって~。安条ぉ、どうするー?」

高知が決めかねていると、宗介そうすけが。

「ちょっと待て! 俺は何も関係ないぞ! それでも団体戦やるのか? そもそも男女混合で試合するのかよ?」

残されたひかりと宗介は黙ってやり取りを見ていただけ。急展開にさすがに物申したいこともあるようだが。

「なーに? ひょっとして女に負けるの怖いの? ビビっちゃってる? 可愛いとこあんじゃんー。しかも童貞っぽいし」

クスクスと笑われ、「なんだと!」と食いつこうとするのを光に止められる。

「じゃあ、私はこのアイドルみたいな子で良いよ! あんたさぁ? 剣道なんかしないで地下アイドルでもやれば? キモオタに好かれそうじゃね? 安条は童貞君で良いだろ?」

この一言で光と宗介にも火が付く。

「決まり。ヨロシク。総武学園のみなさん」

相模原が水菜みずなを呼ぶ。

「みずみずーー! 試合するわー。コンちゃん先生に言って準備してもらってよ!」

私も必然的に気合が入る。

「雪代! 今度こそ過去を清算するチャンスだ! あんなやつら、お前の相手などにならんことを私に見せて見ろ! 今回は100%、お前に力を貸してやる! 左京右京さきょううきょうの時は対決を避けたようだが、今度は逃げるなよ!」

藤咲に力強く背中を叩かれる。

「雪代さん! 私も、なんか嫌だ! あの人たち!」

光もプンスカしながら私の肩を叩く。

「なんで俺まで! と言いたいところだが、あそこまで言われて、引くわけにはいかないな!」

宗介は頬を叩き気合を入れる。

(そうだね。いい加減、縛られるのは終わりにしないと、先に行けないよね)

最後に私が締める。

「みんな、この試合は勝とう」

4人でコクリと頷いた。

総武学園高校 
先鋒  中堅  副将  大将
   
北馬ほくば  月島つきしま  雪代  藤咲

   
安条  高知  中山  相模原
先鋒  中堅  副将  大将   
石館高校
☆ 団体戦4人チーム。


                 続く

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