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憧れの一閃 七剣士物語 ~私たち高校1年生~ 其の三十四
※其の三十三からの続きです。気軽にお付き合いください。
夏休みも目前に迫った日曜日。今日は練習がオフの日だが、なぜか私は剣道具を持って八神や日野の地元へとやってきた。
「雪代さーん! おはよっ! 今日も暑いね~」
光も7月の暑い太陽が照り付ける中、やはり剣道具を持ってやってきた。
「おはよう、光。やっぱり光も言われたの? 防具持って来いって」
昨日の晩に八神から急遽、「防具を持って来い」と言われ、この暑い中、防具を持ってきた。
「うん。なんか防具買うのに私たちの防具も必要らしいよ」
なんだそりゃ。今日の私と光は付き添いでついてきただけなのに。
「でもよかった! 昨日は練習試合だったから他校で解散して学校に戻らなかったし、家で防具の手入れもしてたから急遽、八神さんからメール来ても対応できたよ」
防具を持ってくるのに抵抗がないのだろうか。素直な光は笑顔で答える。すると。
「あっ! 来た来た! おーーい!!」
光が大きく手を振る。
「おはよっ! ありす! 美静!」
出ばなからカクンと頭が垂れ下がり、メンありの1本。呼ばれた2人は今日のメインゲスト。相馬ありすと四日市美静。今日は2人の防具を購入するためにわざわざ休みの日を利用して集まった。
「迷わず来れた? あっ! ひょっとして2人で来たの? そうだよね! ありすと美静は地元同じだもんね」
矢継ぎ早に自然と質問攻め。コミュ力お化けの光は、いつもの調子で笑顔全開で向き合う。
「どうしたの2人とも? この暑さで、もうバテちゃった?」
いや、まぁ……。相馬と四日市の気持ちもわからなくはないし、読者さんも突っ込みたいことこの上ないだろうが、これが光なのだ。
「でもようやくだね! 2人共、琴音先生から入部も許可されたし、早く剣道やりたいでしょ!」
うんうん。やっぱり光を連れてきて正解だった。私だけなら、この時点で既に詰んでいる。
「……はぁ」
四日市が大きなため息をつく。
「おい。雪代。光は空気が読めないのか? それとも天然か? ただの阿呆か?」
光に指さして四日市が言う。
「ありすって言うな! この間も言っただろ! 次言ったら、殺……」
私が相馬にキラーパスを送る。
「……あぁ、まぁ。……なんでもねぇ」
とりあえず2人を黙らせる。
「なによ! さんざん2人で暴れ回って巻き込んで!! 私だって2人のことまだ全部許したわけじゃないんだからね!!!」
今度は迫力満点で相馬と四日市に怒鳴りつける。光ちゃん、最近ちょっと琴音先生に似てきたかな?
「あー、もぅ、わかったよ」
「……チッ。好きにしろ」
結局2人は諦めたように視線を外した。
「……ここ、道の真ん中だし、そろそろ行かない?」
私を先頭に4人で言われた場所へと向かう。八神と日野は先に行ってるので現地集合にした。
「おーぅ! 来た来た! おせーぞ! 10分遅刻だ! 早素振り100本だぜ!」
八神が店の前で手招く。
「あれ? もっと、お通夜な状態な、4人かと、結構、自然だね」
日野が唇に指立てて顔を傾げる。
「違げぇんだよ! 光がいちいちウルせんだよ!」
「関係ねぇこと、いくつも聞いてきやがって」
相馬と四日市には光の存在が眩しすぎるのか道中も私を含めてガヤガヤと歩き、結局時間通りに到着せず遅刻した。
「あははっ! まぁ、わかるぜ! あたしや古都梨も、最近になってようやく光には慣れてきたからな」
本当に可笑しいのか腹を抱えて笑う八神と日野。
「笑ってんじゃねー! 休みの日にまで学校のジャージ着てくる奴に言われたくねぇ!」
四日市が八神の服装に突っ込み、八神が四日市に突っかかり、そのまま相馬へと伝染していき、まぁ、ガヤガヤメンバーが増えただけと思えばどうってことはない。
「うるっさいのぉ~、なんじゃぁ、店の前で大声だして」
店の扉が開き中から人が出てきた。
「あ~、スケベじじぃ。ヤッホー」
日野が軽く手を振る。ずいぶんな年配者が店から出てきたが。
(スケベじじぃって)
知り合いでも失礼すぎるだろうと思っていると。
「おっひょ~、蓮夏に古都梨じゃぁねぇかぁ~」
ズンズンと近づいて八神と日野に顔を近づける。
「あ、あぁ。じぃさん。久しぶり」
明らかに近づけられた顔を嫌そうに離す八神。
「どうじゃぁ~。JKになって出るとこも出てきたかぁ~。ほれっ! 巻き尺持っとるから測ってやろかぁ~」
巻き尺で八神の胸を図ろうとする。
「あー! もー! やめろって! そういうのセクハラって言うの前に教えたろう!」
「にひひっ」と言った感じの顔で止めようとしない。
「どれ! 古都梨はヒップでも測ってやろかぁ~」
今度は日野のお尻を測ろうとしたところで、剥げた頭を日野がペシペシ叩いて収まった。
「わたしのお尻、測ろうなんて、10年早い」
べっと舌を出して店長?も残念そうな顔をする。
「よしっ! じゃぁ、あと10年生きたらワシが古都梨の尻を測るぞぃ」
「ナーハッハッ」と大声で笑いだした。
(大丈夫か。このスケベじじぃ……)
光は苦笑い、私と相馬と四日市は、その場でドン引きしていた。
続く