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『批評の教室―チョウのように読み、ハチのように書く 』北村紗衣著:鑑賞の楽しみをシェアするためのレビューの書き方
批評家を目指す人にも役立つが、本や映画やドラマや演劇が好きな一般の人、特に、鑑賞した後に感想を書き、それをほかの人と共有したい人向けに書かれている。著者はシェイクスピア研究者で、広くエンタメの批評も多く手掛けている。
「自分に邪な性欲があることを自覚しよう」という見出しはいったいなんの話だ?!と思ったが、好きな俳優が出演していると作品までよく思えてしまう危険性を指摘する内容だった。逆に、(性欲とはちょっと違うが、いや、あまり違わないか?)生理的に苦手な俳優が演じているだけでその役柄が疎ましく思えたりもするから、もし批評をするなら気を付けなければ。
作品のタイムラインや図を作ってみるのは、試したい。
批評が膨大な調査に基づいていることも実感できる本。
第4章の「実践編」も刺激的だ。2つの作品についての、著者と著者の指導学生による「競演」とディスカッションが面白い。
すごくつまらなかった作品も、「なぜつまらないのか」を書けば批評になるし、書いたものを共有して、共感する人と盛り上がることもあり、そうすることで「楽しい」体験になる、という話も同感。