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『百年の散歩』多和田葉子著:ベルリンの街の通りと歴史を巡る連作長編

ドイツ在住でドイツ語と日本語で小説を書く作家、多和田葉子氏。本作は、ベルリンに実在する通りの名前(人名から取られていることが多いようだ)の章ごとに、主人公が歩き回り一人称で語っていく物語。

「あの人」と呼ぶ待ち人を思いながら、街をさまよう。気になる店に立ち寄り、カフェで休む。歩き通しで何時間もたつ。

第1章では多和田氏十八番の言葉遊び(高度な思考を引き起こす)が顕著。また、後半になるにつれて、過去の時代、歴史上のベルリンにいつの間にか迷い込むようになる。

日本出身でドイツに住む者としての立場から感じる違和感。決して現れないらしい人を待ち、同時に待っていない。

最終章で「種明かし」があり、主人公は新たな人生の「散歩」へと踏み出したようだ。

イギリスの通りも、どの通りにも名前が付いていて、街の中の各通りを歩く物語を書きたいと思ったことがあったが、この本を知ったときに、同じ発想だ!と勝手に思った(笑)。もちろんこんなふうには書けないが、勝手になんとなくよくわかるような気がする、この感覚。


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