思考からの解放

 このノートはエイドリアン・ウェルズ著「メタ認知療法〜うつと不安の新しいケースフォーミューレーション」の読書感想文です。通読したところ難易度が高かったため、雑に解釈してノート化しました。読書にあたり理解の助けとなれば幸いですが、正確性は保証しません。また、私は医者ではないため、もしご自身が健康問題をお持ちでしたら、医者に頼ってください🐙専門職はつよいぞ!
キーワードは本書の表現のまま記載します🌵

 結論を言うと、「思考をただのノイズとして捉え、過度に重要視せず、思考を操作しようともしない」ことで、私の調子は幾らか楽になりました。この本には、読者の思考の方法を弄るにあたって必要な理論が書かれています。いくつか思い出せる範囲で書いていきましょう。

「思考の内容ではなく、思考の方法を取り扱う」

 メタ認知療法全体に言えることですが、例えば「自らは底抜けのアホである」といった思考の内容は割とどうでもいい扱いです。
 ですが、その思考を四六時中、起きてから寝るまで、反芻心配めいてずっと考えているならばまずいです。もし患者さんが積極的に反芻や心配を行う理由を持つ場合、それはポジティブなメタ認知的信念となり、修正されます。
 また、往々にして、延々と反芻や心配を続けている患者さんの場合、思考を制御できないという思考――ネガティブなメタ認知的信念の一つ――を持っていることがあり、これはポジティブな信念に先立って修正されます。
 その他メタ認知療法において修正されるものとしては、「物質使用などの役に立たない行動」「存在するしないを問わず、脅威に注意を向け続ける姿勢(脅威モニタリング)」が挙げられます。

 ですが、真正面から思考と向き合って操作することは難しいため、いくつかのハックが用いられます。

思考方法のハック

 例えば、人間にとって「ある思考について考えないようにする」ことは難しいです。ですが、「思考の影響を正面から受けないようにする」「思考する時間を先延ばしにし、あわよくば忘れる」といった方法が使えます。

 前者については、「ディタッチト・マインドフルネス(DM)」という技法が使えます。これは雑に言えば「思考から己自身を切り離し、一歩引いた視点で傍観者として思考をそのままの形でただ認知する」技法です。思考(認知)について思考する状態ですから、まさにメタ認知ですね。DMを適用することで何が嬉しいかと言うと、それ自体が反芻や心配の代替的な処理方法となるためです。さっと流しましたが、最終的には反芻に至るようなトリガーめいた思考が侵入する度にこの技法を使い、思考のやり方を上手くコントロールすることになります。

 後者については「心配の先延ばし技法」が使われます。そのままですね。心配しそうであれば、寝る前を除いた任意の時間にそれを先延ばしすることで、事実上現在において心配せずに済みます。なんなら心配を予定したことを忘れ去っても良いです。こちらは簡単ですね。

 この他「注意訓練法(ATT)」という技法もあります。これはそのまま注意の制御を獲得するための訓練であり、反芻や心配から抜け出す助けになるようです。DMに至るための初期訓練としても用いられます。

所見および感想

 蛇足です。この項へ入る前に、二つ前提があります。まず、ここからは旧来の認知行動療法の観点も混ざることです。そして、ここからは完全に所見なので、エビデンスレベルもクソもないことです。

 8章では強迫性障害についてまとめられています。そこでは、思考と現実が混同する例について幾つか書かれています。例えば、「私は朝髭を剃らなかったのではないか?」という思考が、「実際に今朝私は髭を剃らなかった」という信念および(実際には架空の)出来事として認識されてしまう、というものです。より広範に言うと「思考方法によっては、人間は思考の方を現実として誤認してしまうバグがある」という解釈もありえます。

 実際、誤認して問題のない内容ならばことさら改めて言うこともないのですが、SNSなどにおける、所謂“極端な”クラスタの振る舞いを見ると、「彼らの目にはどのように現実が映っているのだろうな」だとか、「そこには行きたくないな」とかいった感想が生まれてきます。

 そして、“極端な”クラスタの保つ特性を、多くの人間は弱い形で持っているとも考えます。おそらく最もわかりやすい例ですと、財布の中に宗教的なお守りが入っていればそうです。私の財布の中にも黄楊のお守りが入っています。効果なんてないはずです。ですがジンクスがあり、買っちゃいます。

 極端に振れないために重要なのは現実と思考とのズレをどれだけ自覚しているかだと思っていますし、なんならいっそ思考の方はただの思考だと割り切り、どうでもいいものだと考えたほうが色々と“上手くいく”ような気がしています。

追補

初めての読書中の段階でOneNoteに書きなぐった資料です。一部追記しています。多分役に立たないと思いますが、100円くらいにしておきます。


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