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業種ごとの特定技能活用③【介護業】

国外からの入国制限緩和を受け、日本への入国を心待ちにしていた待機者が入国し就業開始をしたというニュースが日々報じられています。
介護業界では、ベトナムやインドネシアはもちろん、モンゴルやカンボジアなどからも採用が進んでいるケースがあります。今後さらなる活発化が見込まれる【特定技能 介護】について、今回は触れていきたいと思います。

介護業界の現状

日本国内においては、高齢化が急速に進行しています。それに伴い、介護を担う人材の需要も大きくなっていますが、十分に確保できているとは言い難い状況があります。令和元年度に公益財団法人介護労働安定センターが行った調査では、全体の半数以上、約65%の事業所が人手不足を感じていると回答しています。
加えて、2025年にはいわゆる「団塊の世代」が後期高齢者となります。介護の必要な人口は今後もさらに増えていくと考えられ、比例して介護人材需要も増加傾向で進むと見られています。同調査では採用が困難のため人材不足であると回答した事業所のうち、約58%が「同業他社との人材獲得競争が厳しい」、約52%が「他産業に比べて、労働条件等が良くない」と答えています(複数回答)。つまり、国内の求職者の意向が介護業界へ向きにくく、人材需要に十分な供給が得られていないことがわかります。このような要因から、【特定技能 介護】に対する期待が大きくなっている現状があります。

【特定技能 介護】の資格取得の要件

【特定技能 介護】の在留資格を取得するためには、介護技能と日本語能力について、業務遂行に必要なレベルを有していることを証明する必要があります。具体的には、次のうちいずれかに該当する必要があります。((詳しくは「介護分野における海外人材の採用やステップアップについて」をご覧ください。))

(1)介護技能と日本語能力(介護日本語)それぞれについて所定の試験に合格している

誰でも挑戦できる方法として、求められる技能を証明する試験を受験するというものがあります。試験は日本国内だけでなく、国外でも実施されています。まだ日本の在留資格を有していない人でも、自国で試験を受けることができます。また、介護技能の試験は現地語で受験することも可能です。日本語能力試験は、国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験のN4以上に合格する必要があります。

(2)介護福祉士養成施設を修了している

日本国内において介護福祉士の養成施設において所定の課程を修了することでも、資格要件を満たすことができます。介護福祉士の養成課程を修了しているということは、現場の介護において必要な技能を有していると判断されます。また、所定の課程を日本語で修了したということは、業務遂行に必要なレベルの日本語能力を有しているという証明にもなるという考え方です。

(3)EPA介護福祉士候補者として、4年間の在留期間を満了していること

EPA介護福祉士候補者とは、EPA(Economic Partnership Agreement)を結んでいる国の出身者が、日本国内で介護福祉士となるための教育を受けるための制度です。この制度を利用し所定の課程を修了することで、日本の介護福祉士を目指すことができます。この制度を利用し所定の在留期間を満了したうえで、介護福祉士国家試験にて合格基準点の5割以上の得点をし、すべての科目で得点を挙げると、(2)と同様に介護の現場で必要な技能と日本語能力を有していると判断されます。

(4)【技能実習 介護】の2号を修了している

技能実習とは、海外の人材が働きながら現場において必要な技能やスキルを身につけるための、職業訓練的な在留資格です。この資格において、「介護職種・介護作業」の技能実習2号を修了しているということは、介護の現場において十分な実務経験があり、必要な技能・日本語能力を有しているということが証明されていると考えることができます。

【特定技能 介護】の申請書類

【特定技能 介護】の在留資格で日本の介護現場で活躍するためには、所定の書類を準備する必要があります。必要な書類には、働く外国人本人が用意するものと、その外国人労働者を雇用する施設が用意するものがあります。また、本人の有する資格や経歴、施設の種別や特定技能外国人の受け入れ歴などの条件によって、必要な書類の内容や対象期間が異なることがあります。申請にあたっては、該当のケースにおいて必要な書類がどれに当たるのか、改めてきちんと調べる必要があります。

提出書類一覧表

  1. 返信用封筒

  2. 証明写真

  3. 在留資格認定証明書交付申請書

  4. 報酬に関する説明書

  5. 雇用契約書の写し

  6. 雇用条件書の写し

  7. 雇用の経緯に係る説明書

  8. 徴収費用の説明書

  9. 健康診断個人票

  10. 特定技能外国人支援計画書

  11. 登録支援機関との支援委託契約に関する説明書

  12. 介護技能を証明する書類…介護福祉士養成施設の卒業証明書の写し、介護福祉士国家試験結果通知書の写し、介護技能実習評価試験の合格証明書の写しなど

  13. 日本語能力を証明する書類…日本語能力試験(N4以上)の合格証明書の写しあるいは日本語基礎テストの合格証明書の写し

  14. 特定技能所属機関概要書

  15. 登記事項証明書

  16. 関係する役員の住民票の写し

  17. 役員に関する誓約書

  18. 次のいずれかの書類…(初めての受け入れの場合)労働保険料等納付証明書、(受け入れ中の場合で労働保険事務組合に事務委託していない場合)労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書の写しと領収書の写し、(受け入れ中の場合で労働保険事務組合に事務委託している場合)直近2年分の労働保険料納入通知書の写しと領収書の写し

  19. 社会保険料納入状況回答票あるいは健康保険・厚生年金保険料領収書の写し

  20. 税務署発行の納税証明書

  21. 法人住民税の市町村発行の納税証明書

  22. 公的義務履行に関する説明書

  23. 介護分野における特定技能外国人の受け入れに関する誓約書

  24. 介護分野における業務を行わせる事業所の概要書

  25. 協議会の構成員であることの証明書

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【特定技能 介護】の対象職種・雇用形態・任せられる業務・報酬について

【特定技能 介護】で従事することのできる業務は、「身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入 浴、食事、排せつの介助等)の業務をいう。あわせて、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:お 知らせ等の掲示物の管理、物品の補充等)に付随的に従事することは差し支えない。」としています。

つまり、介護施設などにおいて、直接的に利用者の介護に関わること、生活の補助をすることに加え、施設運営において必要な業務に広く携わることができます。その職域については、同等の業務に従事する日本人労働者と同様と考えることができます。

注意する必要があるのは、特定技能で働く外国人労働者の雇用形態です。特定技能で働く外国人労働者は、原則直接雇用である必要があります。一部派遣社員が認められている業種もありますが、「介護」においては、事業所との直接雇用が必要です。また、当該外国人労働者に対する報酬は、同様の業務に従事する日本人労働者と同水準もしくはそれ以上である必要があります。

◆特定技能外国人の雇用契約書・条件書に関する記事はこちら>>

特定所属機関(受入れ企業)の注意点

【特定技能 介護】で滞在する外国人を雇用するためには、受入れ企業側にも満たすべき要件があります。例えば、当該の外国人労働者が不自由なく業務に従事することができるよう、「特定技能外国人支援計画」を作成する・計画に基づいて支援を実施するなどです。また、特定技能で滞在する海外人材を活用する事業所は、公的機関等の行う「分野別特定技能協議会」に参加する必要があります。

日本国内における介護人材の不足の度合いは、その事業所の立地などによっても大きく異なります。そのため、【特定技能 介護】で働く海外人材を受け入れる人数上限については、事業所ごとに個別に設定されています。この条件に違反することがないよう、自らの事業所の要件について理解し、遵守することが大切です。

◆特定技能所属機関に関する詳しい記事はこちら>>

さいごに

日本における高齢化の流れは止まることを知らず、今後もその傾向は続いていくと考えられます。これに伴い、国内の介護人員需要も伸びを続け、人材不足が深刻化していく可能性は大いに考えられます。このような状況を打破する方法のひとつとして、2019年に新設された【特定技能 介護】の在留資格には大きな期待が寄せられています。国内の人材需要の増大・人材供給の不十分というアンバランスを是正し、安定した介護サービスの提供、ひいては国民の安心を担保するためには、海外人材の活用は不可欠となっていくでしょう。

少子高齢化の進む日本国内において、介護サービスは今後、国民生活にとってなくてはならない重要なサービスとなっていくことは想像に難くありません。すべての国民がその健康状態や年齢に関わらず安心して生活をするためには、介護サービスは社会的インフラとして認識され、その安定的な運営を保障されて然るべきです。

外国人介護士が「日本に来てよかった」「ずっと働き続けたい」と思う環境を目指し支援の輪を広げていく。そのためには、各介護事業者の皆様が【特定技能 介護】の制度内容を正しく理解し、自らの事業所の現状とニーズに合わせ、適切な形で活用していく必要があります。事業所の安定的なサービス提供基盤を築くためには、国内の人材だけでなく、この制度を活用し、広く世界から人材を受け入れていくことがひとつの近道と言えそうです。

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