高額商品を売る極意とは?
高額商品を売るのは難しいのでしょうか?
営業マネージャーや営業パーソンが陥りがちな「高額商品販売」の誤解
多くの営業マネージャーや営業パーソンは、「高額商品は売るのが難しい」という先入観を持っています。確かに、数十万円の商品と比べて、数百万円、あるいは数千万円の高額商品は敷居が高いと感じるのは自然です。
しかし、その思い込みが原因で、ビジネスチャンスを逃している可能性があります。
実際、高額商品を売る労力が、低額商品の10倍になることは稀です。
むしろ、場合によっては高額商品を売る方が、低額商品を売るよりもシンプルで効率的なプロセスで済むことがあります。そこで今日は、その理由と高額商品をスムーズに売るための考え方を解説します。
高額商品の販売は本当に難しいのか?
「高額商品は売りづらい」という思い込みは、営業マンが持つ典型的なバイアスの一つです。たとえば、100万円のサービスを売るのと、1,000万円のサービスを売る場合、販売プロセスの労力はどの程度違うのでしょうか?
意外にも、労力は比例しないことが多いのです。
なぜなら、1,000万円のサービスを購入する顧客は、意思決定の基準が明確で、必要性を感じたら迅速に決断する傾向があるからです。むしろ、曖昧なニーズや不安を抱えたまま、何度も商談を重ねることこそが成約率を下げる要因になります。
高額商品を売るための「正しい考え方」
1. 商談回数は必要最小限でいい
私の経験上、600~800万円の営業コンサルティング契約は、3回以内の商談で決まることがほとんどです。初訪でヒアリングを行い、ニーズが明確に確認できれば、次の商談で提案と見積もりを提示し、契約に至ります。
一方、商談回数が5回、7回と増えると、成約に至らないケースが多くなります。これは、商談を重ねることで、顧客の「必要性」が薄れていくからです。
2. 100%の納得を求めない
「お客様に100%納得してもらおう」という姿勢は一見正しいように思えますが、実は落とし穴です。特に、無形商材(コンサルティング、ソフトウェア、サービスなど)を扱う場合、多くのノウハウやスキルを提供してしまうと、顧客は「自社でやってみる」と言ってしまうことが多いのです。
たとえば、営業コンサルティングの全プロセスや手法を説明した結果、「自分たちで試してみます」という返事が返ってくるケースです。顧客が完全に理解しても、それが契約に繋がるとは限らないのです。
3. 顧客の「真のニーズ」にフォーカスする
高額商品を購入する顧客は、「価格」ではなく「価値」で判断しています。したがって、重要なのは「顧客が本当に求めている結果」を理解し、その結果を提供するための手段として商品を提案することです。
高額商品を効率的に売るための3つのステップ
1. 顧客の「緊急度」と「重要度」を見極めるヒアリングを行う
初回のヒアリングでは、顧客が抱える課題が「今すぐ解決すべきものか(緊急度)」、または「将来的に大きなリスクになるものか(重要度)」を明確に把握します。
顧客自身がその課題をどれほど深刻に捉えているかを理解することで、提案の優先順位やアプローチを的確に調整できます。特に高額商品は「高いから後回し」にされやすいため、「今、解決しないとどうなるのか?」という視点で問いかけることが重要です。
たとえば、このような質問です。
「この問題を解決しないと、半年後にはどうなりますか?」
「今取り組まない場合、競合との差はどのくらい広がると思いますか?」
2. 価値に基づいた「オーダーメイド提案」を行う
高額商品を売る場合、顧客の状況に合わせたカスタマイズされた提案が必須です。画一的な提案書ではなく、顧客の課題と未来像に合わせた「オーダーメイド提案」を作成しましょう。提案には、次の3つのポイントを盛り込みます。
■ビフォー/アフター
導入前の現状と、導入後の理想の姿を明確に示す。
■投資対効果(ROI)
具体的な数字で「これだけの投資で、これだけの効果が得られる」と伝える。
■成功事例
他社の成功事例を示し、導入後の安心感を提供する。
3. 決断を後押しする「クロージングの技術」
提案後、クロージングで顧客の決断を促すことが最も重要です。
決断を後押しするためのクロージング技術を駆使しましょう。特に有効なのは、以下の3つの方法です。
■期限付きのオファー
「今月中のご契約なら、サポート期間を3ヶ月延長します。」
■損失回避の心理
「このタイミングを逃すと、機会損失が大きくなります。」
■小さなYesの積み重ね
「提案内容にご納得いただけたら、次のステップとして契約書をお持ちしますね。」
●重要ポイント
決断を促す際は、過度な圧迫感を避けつつ、顧客に「今決める理由」を与えることが大切です。
高額商品の販売における「NG行動」
1. 顧客が迷う余地を与える「過剰な情報提供」
高額商品だからといって、詳細な機能や仕様をすべて説明する必要はありません。情報過多は顧客を迷わせ、決断を遅らせる原因になります。顧客が本当に知りたいのは「その商品が自分にとってどんな価値をもたらすか」です。
■NG例
・30ページ以上に及ぶ提案書
・機能の細かな説明や業界専門用語の羅列
■正解例
・「要点をまとめた3ページの提案書」で価値を伝える。
2. 「価格」に焦点を当てすぎる交渉
高額商品を提案する際、価格交渉にばかり時間を割くと、商品の価値が薄れます。特に値引き提案は避けるべきです。値引きは、「この商品にはその程度の価値しかない」と顧客に誤解させる危険性があります。
■NG例
「特別に50万円引きます!」
「この値段なら即決いただけますか?」
■正解例
・価格の正当性を、価値やリターン(ROI)と結びつけて伝えます。
3. 長引く商談と曖昧なフォローアップ
商談回数が増え、フォローアップが曖昧だと、顧客は興味を失います。
商談は最小限で、次のステップを明確にすることが重要です。長引く商談は、決断を遅らせるだけでなく、顧客の温度感を下げるリスクもあります。
■NG例
・「また来週、詳細をお話しします。」
・「次回までにご検討ください。」
■正解例
・「次回は契約書をお持ちしますので、調整をお願いします。」
・「今の内容で進めてよろしければ、正式な手続きに入りましょう。」
高額商品を売る秘訣は「価値の伝達」と「迅速な決断」
高額商品を売るためには、シンプルなプロセス、価値に基づいた提案、そして決断を後押しするクロージングが重要です。「高いから売れない」という思い込みを捨て、顧客のニーズに合った解決策を提案することで、効率的に高額商品を販売できるようになります。