
業務用(プロフェッショナル向け)機器の技術を核に民生用機器にも別格の性能持たせている会社 その5.131 私の推したい会社 当たり前過ぎて意識しなくなっていること
私の推したい会社は、業務用(プロフェッショナル向け)機器の技術を核に民生用機器にも別格の性能持たせている会社です。
その理由を一言で言えば、業務で使われる程最先端で信頼性が高い技術を民生用に昇華して日々の暮らしの中に活かせるからです。
今までの経緯
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具体的には例えばソニーさん。
その1.0では民生用の製品は皆さんの染みの少ない放送業務用制作機材に絞ってご紹介し、今後の期待感まで吐露させて頂きました。その辺りはこちらをお楽しみ下さい。
如何でしょうか。街で見かけるソニーさんの製品とは全くの異なるプロフェッショナル向けの機能美を感じる製品群って素敵ですよね。
このとんでもない高価な業務用製品向けの技術が民生用にもフィードバックされていると思うと、何かお得感を感じませんか?
というオチでした。
その1.1はソニー・インタラクティブエンタテインメントグループさん。研究所が手掛けた際物(きわもの)を民生用、しかもゲーム機という最も大衆ウケするプラットフォームにというお話でした。
その1.2は、ソニーさんとCBSソニー(ソニー・ミュージックスタジオ)さんの話です。ソニーさんの民生用製品を元に、ソニーさんとCBSソニーさん(ソニー・ミュージックスタジオ)さんが業務用製品を共同開発され、余りの好評のためにその業務用製品は、今ではまるで民生用製品の様に販売されているという珍しいお話でした。
その1.3は、業務用の可搬型テープレコーダーが、私的な演奏会や鉄道·自然等の生録音のニースに応える形で民生用製品に仕立てられ大ヒットしたというお話でした。その名はカセットデンスケ。
その2は、鉄道や機械等に用いられる業務用の電気モーターが、家電として掃除機、冷蔵庫、洗濯機、エアコンなどの民生品の心臓部として転用されるというお話でした。
その3は、流体力学と誘導機技術(誘導電動機(モーター)・誘導発電機(発電機)ともに成り立つ技術)から始まり電力インフラやエレベーター等の業務用機器をしつつ、扇風機から始まりエアコン等の民生用機器へその技術を展開されているというお話でした。
その4は、造船業から始まり鉄道車両、航空宇宙、エネルギー・環境、精密機械・ロボット分野等でプロフェッショナル向けのソリューションを提供されていて、その技術を二輪車、ATV(四輪バギー車)、多用途四輪車、パーソナルウォータークラフト「JET SKI®」といった民生品に生かされいる会社のお話でした。
その5.00から連作で時計メーカーさんを推したく、その前フリとして時計の歴史をご紹介しました。
その5.01は、時間軸は明治少し前辺り以降、地理的には日本に絞り今日的な時計の価値についてその背景を共有させて頂きました。
その5.02は、鉄道網の発達と時計について振り返ってみました。
その5.03は、義務教育の普及と時計について振り返ってみました。当たり前過ぎて意識しなくなっている程陳腐な内容ですが、網羅性という意味で抑えて執筆しました。赤面する程基本的な内容も恣意的に含まさせて頂きました。
その5.11は商社として輸入時計の販売と時計修理を開業し、業務用製品と民生用製品をしたたかに糾(あざな)いながら時計の分野で世界的な地位を築いたセイコーグループさんにまつわる私的なエピソードのご紹介でした。
その5.12は、セイコーグループさんの業務用製品と民生用製品を逆境をも成長の機会としてしたたかに糾(あざな)ってきた歴史を第二次世界大戦直後頃まで振り返ってみました。
その5.130も、その5.12に引き続きセイコーグループさんの業務用製品と民生用製品を逆境をも成長の機会としてしたたかに糾(あざな)ってきた歴史を1960年代後半頃まで振り返ってみました。
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今回は、その5.130でご紹介したグランドセイコーというある意味で日本の時計産業のフラッグシップの製品とも言えるラインナップについてのエピソードをご紹介したいと思います。
そもそも1960(昭和35)年はセイコーさんにとっては記念すべき年の一つだと思います。当時のセイコーさんの部品精度・組立技術・調整技術等持てる技術全てを注ぎ込んだ「初代グランドセイコー」が発売されたのです。当時の世界最高の精度基準(国際クロノメータ検査基準(B.O)優秀級規格)より一段と厳しいグランドセイコー規格を作って造り込んだ世界最高峰の腕時計だったそうです。
この辺りまで前編たるその5.130でご紹介しました。
以下に物理屋の私がセイコーさんの技術の真髄の一つに触れたと感じたエピソードをご紹介しますね。
それはセイコーエプソンさんからのお仕事絡みで塩尻の工房を見学させて頂く機会が有ったところから始まります。グランドセイコーの担い手の一社である諏訪精工舎は現在ではセイコーエプソンさんとなり、長野県塩尻市にてクオーツモデルとスプリングドライブモデルを製造されています。たまたまセイコーエプソンさんの幹部の方に当時勤めていたIT会社の幹部をご紹介する機会がありました。そのタイミングで塩尻にある工房を見学させて頂いたのです。
整然とした静かで清潔な工房。建物内は言うに及ばず、工房のある敷地一帯絡み良く管理されていて、一時が万事という感じでした。一種の緊張感が漂っていました。
その工房の中で、選ばれた職人さん達が作業工程に真摯に向き合われている姿は、感動の連続でした。
同じクリーンな環境でも、エンジニア時代に働いた半導体製造用のクリーンルームとは大違い。半導体工場は、所詮工場。大きな空調からの騒音やパトライトの音、勿論製造装置からも騒音が出ていて何とも喧(やかま)しい。確かに最先端の工場で鉄鋼会社の持つフルオートメーションの技術を業界で初めて、つまり世界で初めて導入はしていましたが、
ここは真逆。
だからこそ強いインパクトが残っているのだと思います。
工房とはよく言ったものです。名は体を表すそのもの。半導体製造レベルのクリーンルームではないものの、埃の管理は良く出来ていました。
整然と並んだ職人さん達。勿論ですが、女性の職人さんもいらっしゃいました。流石セイコーさん。思ったよりはコンパクトな静かで落ち着いた信州の工房で、直向(ひたむ)きに最高の芸術品が作られている…
美しい
見学後に製品ラインナップの紹介と特別価格での提供の提示が有りました。本当に欲しかったのですが、当時の私には即買いできる価格ではありませんでした。残念。
このその場で買えなかった体験はコンプレックスとして残って、その後多数のセイコーさんの時計、特に腕時計、クロノグラフを買うことに。未だに意味もなく美術品としての美しさに惹かれて欲しくなる(笑)
ある意味で私の美的感覚に合ったセイコーさんの製品を身に着けていて、人生に2回だけそれを他人に譲ってしまった経験も…
1回目は新入社員に単刀直入その時計を欲しいと乞われ
2回目はお粗相の穴埋めに(笑)
その辺りはその5.11の後半かな、に詳しくご紹介しました。一応以下に再掲しますね。
因みに第二精工舎はセイコーインスツルさんとなり、岩手県雫石町にて機械式モデルを製造されているそうです。
ということで、グランドセイコーは服部時計店以来の時計国産化への思いの結晶だと思っています。業務用の技術と民生用の技術を上手くつむぎながら世界最高まで上り詰めた…
つづく