M-1王者・令和ロマンが語る漫才の真髄『漫才過剰考察』
M-1グランプリ2023で王者に輝いたのは、芸歴5年8ヶ月の令和ロマンだった。番組のラストに「来年も出ます」と宣言した通りM-1グランプリ2024もしっかりと準決勝まで勝ち上がってきている。そんな令和ロマンのボケである高比良くるまの書籍を紹介する。
本の紹介
Webマガジン「コレカラ」にて2023年7月にスタートした「令和ロマン髙比良くるまの漫才過剰考察」が出発点である。この内容をさらに展開しボリュームが増え、さらには霜降り明星の粗品との対談を収録している。芸歴最年少にしてM-1グランプリで優勝した彼の考えの片鱗に触れることができる。
少しでも気になる人は無料で読めるのでまずはWebマガジンの方を読んでみてほしい。
髙比良くるまという人物像
絶賛令和ロマンどハマり期間中で、彼らが出ているあらゆるコンテンツを漁っている。彼らのラジオ「令和ロマンのご様子」の過去のエピソードも全て聞いてようやく追いついた。くるまは、FORBES JAPAN 30 UNDER 30 2024に選出されており、彼がMCを務める『3003 -サンゼロゼロサン-』というPodcastが面白い。最新のエピソード(#14)で、テレビプロデューサーの大森時生さんが「くるまさんが狂わないか心配。(狂ってしまったら)ほとんどの人がついていっちゃう。」というようなことを話していて、それだけの力を持つ可能性もあるし、そうさせるほどの求心力があるのだ。
読後感想
お笑いに対する見方が変わる
ぼくは以前までは漫才を見て、一元的な面白いか面白くないかというパラメータを受け取るだけだった。競技漫才における最終的な評価は「面白さ」であるが、出番の流れ(前後のコンビとの比較)、観客の層、M-1であれば審査しているという環境など数えきれないほどの変数によってウケ方が変わることに唖然とした。改めて考えるとそれはそうだ。何千組の中から決勝に勝ち上がってくる10組が面白くない訳はない。しかし、その中でウケない組もいれば、会場を飲み込んでしまうほどの笑いが起きる場合もある。
漫才師の戦略
芸人はその状況下で、自分達の「面白さ」を磨き上げ、運も含めて"流れ"をつかむ。だからこそM-1グランプリは盛り上がるのだと理解した。そんな、"流れ"すらも攻略してしまったのがまさに令和ロマンだった。
令和ロマンが優勝した後、出順も考えてネタを選んだというエピソードが話題になったが、優勝後なら後付けできるとも難癖つけられるのだが、この本が序盤からまっすぐ否定してくれる。
お笑いはこれからが面白い、らしいぞ
漫才に関する技術の高まり、そして地域性によるお笑いの性質の違い、などについての考察が展開され、なるほどと思わせられた。何が正解か手札が出揃い、さあこれからどうお笑いの時代が動くのかという段階らしい。
またしても令和ロマンが場を掌握しきって2連覇なんてしてしまえば歴史的な瞬間になるだろう。はたまた当日に予想できないほどの流れによって想定外のコンビが優勝しても面白い。令和ロマンがどんな手札で挑んでくるのはまず、注視したいところだ。(個人的にはトム・ブラウンで爆笑したい)
今年のM-1グランプリがすでに盛り上がりつつあるので、一人でも多くの人と一緒に楽しみたい。別にお笑いを高尚なものとして見る必要は全くない。頭を空っぽにして楽しむことが本来の受け取り方だろう。ただ、少しでも漫才師の頭の中を知ってみたい、とかより深く楽しみたいという人にはこの本を胸を張っておすすめしたい。