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人生に、甘いものがなくても
歯がしみるようになったのは、いつからだろう。
娘をまだ妊娠する前のことだから、5年前くらいか。
社内で「お土産です」とまわってきたマカダミアチョコレート。
「いただきます」と口にほおばり、バリっと噛んだ瞬間。
「痛っ!」となった。奥歯が、左の奥歯が痛い。
慌てて歯医者に予約し、すぐに診てもらったのだが「虫歯になっている様子はないけどね」と言われた。
絶対虫歯だと思ったのに。
*
現在通っている歯医者に初めて診てもらったとき、衝撃的なことを言われた。
「歯は、ダメになっていく一方ですから。これは止められません。どうすることもできません。痛くないようにだましだまし処置するしかないです。」
その歯医者さんはとても丁寧に歯について説明してくれた。
私の歯が痛いのは虫歯ではなく、「しみる」のが原因だろうと。
なぜしみるのかというと、おそらく歯ぎしりによって歯が削られているからだろうと。
結婚してすぐのこと、夫に「リコさん、めっちゃ歯ぎしりしとる」と言われたのだ。
思うところはあって、マウスピースを作ったのだが、寝苦しくてあまりつけていなかった。
けれど、先生の話を聞いてからは毎晩、マウスピースをつけて眠るようになった。
「削られた歯を元に戻すことはできません。これ以上進行しないように、予防するだけです」
*
歯医者へは定期的に通っているのだが、歯がしみるのはどうしても治らない。毎回”フッ素”を塗ってもらって、なるべくしみないようにと処置をしてもらっている。
それでもしみる。
これはもう…と思い、私は「甘いもの」「冷たいもの」を極力控えるようにした。
子どもたちの誕生日ケーキも私は食べない。
みんなのおやつタイムも、私は食べない。
外食のデザートも、私は食べない。他の人にあげる。
以前、習い事で「先生にケーキをプレゼント」したことがあり、みんなで分け合って食べたのだが、私は食べなかった。
先生に「リコちゃんも食べなよ」と言われたので、「すみません、甘いものは控えているんです」と告白した。
みんなのお祝いムードを壊してしまうようで申し訳なかったのだが、言っておくに越したことはないと思ったのだ。
「歯医者に定期的に通えば?」と言われたが「通っているんだけど、しみるのは治せなくて。予防的に甘いものは食べないようにしてるんです。冷たいものも控えてます」と答えた。
みんなは「えー、じゃあアイスも食べれんね」と同情するような表情になった。
そう。私も「甘いものを控えよう」と思った当初、「人生を損している」という気持ちになった。
*
今までは、何も考えず甘いものも冷たいものも、食べたいだけ食べることができたのに。急に不自由になった気分。
子どもたちが美味しそうにおやつをほおばっていると「いいなぁ」なんて思って見ていた。
でも、自分でそれらを「食べない」という選択を積極的にやっていると、それが「不自由」とか「損してる」と思わなくなってきたのだ。
自分で「選択している」というのが重要。
私は望んで食べていないだけだ。
思えば、そんなに甘いものが好きなタチでもなかった。
これからの私の人生に「甘いもの」が多少消えたとて、そんなに損傷はないのではないか。(料理に砂糖が入っていることはあるし、果物もたまに食べるし、まったくゼロになったわけでもない)
そう思ったら、「これもアリかも」と思えてきた。
「甘いものがない人生」これも、アリです。